「父が亡くなる前に、家系図を残しておきたかった」。先月、四十九日の打ち合わせに来られた60代の喪主さんが、ぽつりとそうこぼしました。お父様は生前、自分のルーツを子や孫に伝えたいと話されていたそうです。でも戸籍を取り寄せる時間も気力もないまま、入院、そして逝去。残されたご家族は、お父様の祖父母の名前すら正確には知らないと言いました。
葬祭ディレクターとして20年、こういう「もっと早く動いておけば」という後悔をたくさん見てきました。家系図作成は、本来なら本人が元気なうちに着手しておくのが理想です。とはいえ、戸籍の取り寄せは想像以上に手間がかかる。本籍地が全国に散らばっていれば、役所を1つずつ巡るか、郵送で1通ずつ請求していくことになります。
そこで最近、相談者から名前を聞く機会が増えたのが「家樹(かじゅ)」という家系図作成サービスです。戸籍収集から系図デザインまでを丸ごと請け負ってくれる代行業者で、終活セミナーでも紹介されることがある。今日は実際の料金、評判、依頼するメリットとデメリットを、葬儀の現場でご遺族と接してきた立場から正直にまとめます。
家系図作成サービス「家樹」とは?運営会社と特徴
家樹は、株式会社家樹(旧名称:家系図作成本舗)が運営する家系図制作サービスです。公式サイトによれば、年間1000件以上の制作実績があり、行政書士が戸籍収集を代行する体制を整えています。創業は2014年、本社は東京都内。全国の依頼に郵送で対応しており、依頼者が地方在住でも問題なく利用できます。
このサービスの特徴は、家系図作成に欠かせない「戸籍謄本の取り寄せ」を専門家が代行してくれる点にあります。戸籍を自分で集めようとすると、明治初期まで遡るために除籍謄本・改製原戸籍を本籍地のある市区町村に1つずつ請求していくことになります。一家族で平均10〜30通、本籍地が転々としていれば50通を超えることも珍しくありません。
家樹では行政書士が職務上請求という権限を使って戸籍を集めるため、依頼者が役所に出向く必要がありません。集めた戸籍をもとに家系図を清書し、最終的には和紙や額装の状態で納品されます。終活サービスとして、また相続準備の一環として利用する人が増えているのが現状です。
代表的なプランと納品物
家樹のプランは大きく分けて、戸籍収集のみのプラン、戸籍収集と家系図作成のセットプラン、家系図に加えて家系調査報告書まで含むプレミアムプランの3層構造になっています。納品物は和紙の巻物タイプ、額装タイプ、製本タイプから選べる仕様です。系図は手書き調の毛筆フォントで作られ、仏間や床の間に飾ってもなじむデザインに仕上がります。
ちなみに家系図の作り方を全体像から知りたい方には、以前まとめた家系図の作り方と無料ツール・専門家依頼の比較も参考になると思います。自作と依頼、どちらが自分に合うかを判断する材料になります。
家樹の料金プランを徹底解説
気になる料金です。家樹の価格設定は2024年現在、おおむね以下のレンジで公開されています。正確な金額は申し込み時の見積もりで確定するので、ここでは目安として記載します。
| プラン名 | 料金目安(税込) | 含まれる内容 | 納期目安 |
|---|---|---|---|
| 戸籍収集プラン | 33,000円〜 | 父方または母方の直系戸籍収集(最大10通程度) | 1〜2ヶ月 |
| 家系図スタンダード | 88,000円〜 | 戸籍収集+家系図作成(父方or母方)+巻物納品 | 2〜3ヶ月 |
| 家系図プレミアム | 165,000円〜 | 父方・母方両系+家系図+額装+家系調査報告書 | 3〜4ヶ月 |
| 戸籍追加(1通あたり) | 2,200円〜 | 規定通数を超えた分の戸籍取得 | 個別対応 |
料金を見て「思ったより高い」と感じる人もいれば「これなら頼みたい」と思う人もいるはずです。判断基準は、自分でやった場合の手間と時間をどう評価するかにあります。自分で戸籍を集めると、1通あたりの手数料は450円〜750円ですが、本籍地が10ヶ所に分散していれば往復郵送料・定額小為替の手数料・封筒代もかさみ、トータルで2〜3万円かかることもあります。そこに自分の作業時間が3ヶ月単位で乗ってくる。
つまり戸籍収集プランの33,000円は「自分でやっても同じくらいかかる金額を、専門家に全部任せられる」という設定です。家系図の清書まで含めたスタンダードプランは、デザイン代と毛筆の手間賃を考えれば妥当な範囲だと感じます。
追加料金が発生するケース
注意したいのは、戸籍の通数が想定を超えた場合の追加料金です。明治期まで遡ると、養子縁組・分家・改名・本籍地移転などで戸籍が枝分かれし、規定通数の10通では収まらないケースが半数以上あります。先祖が士族や旧家の場合、20〜30通になることも普通にある。1通あたり2,200円の追加で見ておけば、トータル予算が想定の1.5倍になることはある程度覚悟しておいたほうがいい。
また、明治19年以前に作られた壬申戸籍は法的に閲覧禁止のため取得できません。家樹に依頼しても、それ以前の家系は寺院の過去帳調査などに別途費用が発生します。「江戸時代まで遡りたい」という希望がある人は、最初の問い合わせ段階で必ず確認したほうがいい。
戸籍収集を専門家に依頼する3つのメリット
家系図作成の最大の壁は、家系図そのものを描くことではなく「戸籍を集めること」です。ここをプロに任せられるのが、家樹のようなサービスを利用する最大の価値だと思っています。
メリット1:役所巡りと郵送請求の手間がゼロになる
戸籍を自分で取り寄せる場合、まず本籍地の市区町村役場に請求します。窓口に行くなら平日の昼間に半休を取る必要があるし、郵送請求なら申請書・本人確認書類のコピー・定額小為替・返信用封筒を1セット作って送る作業が、本籍地の数だけ繰り返されます。私の知り合いで自分でやり切った人は、平日に有給を3日使い、休日も丸潰しで2ヶ月かかったと言ってました。仕事や育児で時間が取れない人にとって、この作業を全部代行してもらえる価値は大きい。
特に高齢のご両親が「自分のルーツを知りたい」と希望されている場合、本人が動くのは現実的ではありません。子世代が代理で家樹に依頼すれば、親が元気なうちに完成品を渡せます。これは終活の文脈でも大きな意味を持つ。
メリット2:行政書士の職務権限で広範囲の戸籍が取れる
個人が戸籍を請求できる範囲は、原則として自分の直系尊属(父母・祖父母)と直系卑属(子・孫)に限られます。傍系(おじ・おば・いとこ)の戸籍は、相続などの正当な理由がない限り取得が難しい。一方、行政書士には「職務上請求書」という権限があり、家系図作成という目的で広範囲の戸籍を集められます。
これによって、家系図の枝葉部分(先祖の兄弟姉妹、その子孫)まで含めた立体的な系図が作れる。自分でやろうとすると突き当たる壁を、専門家ならスムーズに乗り越えられるのが強みです。
メリット3:古い戸籍の解読をプロに任せられる
明治・大正期の戸籍は、毛筆の崩し字で書かれていることが多いです。私も葬儀の打ち合わせで除籍謄本を見る機会がありますが、人名の漢字すら読めないことが普通にある。「これは『嘉助』なのか『喜助』なのか」と何度も悩む。家樹では戸籍の読み取りを専門スタッフが行うため、誤読のリスクが下がります。
家系図は一度作ったら何十年も家に残るものです。先祖の名前を間違えたまま額装してしまったら、後で訂正するのは大変。専門家の目を通すことの安心感は、料金以上の価値があると感じます。
利用者の口コミ・評判を集めてみた
葬儀の現場で家樹を利用したご家族から聞いた話、終活セミナーでの質疑応答、SNSの口コミなどを総合して、リアルな評判をまとめます。良い評判だけでなく、気になる点も正直に書きます。
良い口コミの傾向
- 「戸籍を全部集めてくれて、本当に楽だった。役所と何度もやり取りしなくて済んだ」(60代女性)
- 「父の80歳の誕生日に渡したら、涙ぐんで喜んでくれた。間に合ってよかった」(50代男性)
- 「巻物の仕上がりが上品で、仏間に飾っても違和感がない。法事のときに親戚に見せたら好評だった」(70代男性)
- 「担当者の対応が丁寧で、質問にもすぐ返信が来た。安心して任せられた」(40代女性)
- 「自分の名字のルーツが甲府の郷士だったと判明して、家族でルーツ巡りの旅をした」(50代女性)
共通しているのは「親が元気なうちに渡せた」「家族の話題が増えた」というポイントです。家系図は単なる紙ではなく、家族のコミュニケーションを生むツールとして機能している。これは葬儀の現場で家族の絆を見続けてきた立場としても、深く納得できる声です。
気になる口コミ・低評価の傾向
- 「納期が予定より1ヶ月遅れた。戸籍の取り寄せに時間がかかったとのことだった」(60代男性)
- 「想定より戸籍が多くて、追加料金で2万円かかった。最初の見積もりに幅を持たせて欲しかった」(50代女性)
- 「江戸時代まで遡れると思って依頼したが、明治の最古の戸籍までしか取れず期待外れだった」(70代男性)
- 「家系図の文字が読みにくい部分があった。フォントの選択肢を増やしてほしい」(40代男性)
納期遅延と追加料金は、戸籍収集を伴うサービスの宿命でもあります。役所の繁忙期や年末年始は2〜3週間単位で遅れることがあるし、戸籍の枚数は実際に集めてみないとわかりません。とはいえ、依頼時に「最大でどのくらい追加費用がかかる可能性があるか」を確認しておけば、心の準備はできます。
「江戸時代まで遡りたい」という期待値のズレは、申し込み前のヒアリングで防げる問題です。家樹を含むほとんどの戸籍ベースの家系図サービスは、明治5年の壬申戸籍以降しか扱えません。それ以前を調べるには、寺院の過去帳閲覧や郷土史調査が別途必要で、これは家系図サービスではなく家系研究の専門家領域になります。
家樹に依頼する流れと必要な書類
実際に申し込みから納品までの流れを整理します。初めて利用する人がイメージしやすいよう、各ステップで必要なものと所要時間も併記します。
ステップ1:公式サイトから問い合わせ・見積もり
公式サイトのフォームから問い合わせると、数日以内に担当者からメールか電話で連絡が来ます。希望するプラン、調べたい範囲(父方のみ、両系、傍系まで含むか)、納品形態を相談したうえで、見積もりが提示されます。この段階で疑問点は全部ぶつけておくのが大事です。「江戸時代まで知りたい」「養子縁組の経緯も調べてほしい」など、具体的な要望があれば伝える。
ステップ2:契約・委任状の提出
契約後、行政書士が戸籍を代理請求するための委任状を提出します。委任状の用紙は家樹側が用意してくれるので、依頼者は署名・捺印して返送するだけ。同時に、依頼者の本人確認書類(運転免許証コピーなど)と、わかっている範囲の家族情報(祖父母の名前・生年月日・本籍地)を提供します。この情報が正確だと、戸籍収集がスムーズに進みます。
ステップ3:戸籍収集(1〜2ヶ月)
家樹の行政書士が、全国の役所に戸籍を郵送請求していきます。請求してから戸籍が届くまで、役所によっては2〜3週間かかることもある。明治・大正の古い戸籍は本籍地の移動を追いかけて1通ずつ遡るため、玉ねぎの皮を剥くように時間がかかります。この期間、依頼者は基本的に待つだけです。
ステップ4:系図作成と最終確認
戸籍が揃ったら、家樹のデザイナーが家系図に清書します。完成前に校正用のPDFがメールで送られてくるので、人名・続柄・生没年月日を依頼者がチェック。誤字や疑問点があればこの段階で修正します。最終確認が済んだら、和紙への印刷・額装・製本などの最終工程に進みます。
ステップ5:納品
完成した家系図と、集めた戸籍謄本の原本一式が宅配便で届きます。戸籍原本は相続手続きでも使えるため、大切に保管しておくのがおすすめ。生前整理の一環として家系図と一緒にエンディングノートに添付する方も多いです。エンディングノートの書き方を参考に、家族へのメッセージと一緒に残しておくと、より気持ちが伝わります。
家樹と他の家系図サービス・自作との比較
家系図を作る方法は、家樹のような専門業者に依頼する以外にもいくつかあります。それぞれの選択肢を比較して、自分に合うやり方を見つけてもらうのが一番だと思います。
| 方法 | 費用目安 | 所要期間 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 自分で作成 | 2〜3万円(戸籍手数料・郵送費) | 3〜6ヶ月 | 費用が安い、自分のペースで進められる | 役所巡り・古文書解読の負担が大きい |
| 家樹(戸籍収集+作成) | 88,000円〜 | 2〜3ヶ月 | 戸籍解読も任せられる、和紙の仕上がりが上品 | 追加料金で予算オーバーの可能性 |
| 他社サービス(行政書士事務所) | 50,000〜200,000円 | 2〜4ヶ月 | 事務所によっては傍系も詳細に調査 | 価格幅が大きく、品質にばらつき |
| 無料アプリ・テンプレート | 0円 | 1〜2週間 | 気軽に始められる | 戸籍を自分で集める必要あり、デザインは簡素 |
判断のポイントは「自分の時間をどう使いたいか」だと思います。退職して時間に余裕があり、戸籍を1通ずつ取り寄せる作業自体を楽しめる人なら、自作でも問題ありません。逆に仕事や育児で時間が取れない、でも親が元気なうちに家系図を完成させたい、という人は専門サービスを使う価値が高い。
家系図作成を検討すべきタイミング
家系図は「いつかやろう」と思っているうちに、両親が亡くなって作るチャンスを失うケースが多い。葬祭ディレクターとして痛感しているのは、戸籍だけ揃っていても、その背景にある「人となり」を伝えられる人がいなくなった瞬間、家系図の意味が半分以下になってしまうという事実です。
親が60代〜70代に入ったとき
親世代が60代以降に入ったら、家系図作成を検討する一つのタイミングです。この年代はまだ祖父母や曾祖父母の記憶が鮮明で、戸籍だけではわからない「どんな仕事をしていたか」「どんな性格だったか」を本人から直接聞ける貴重な時期。家系図と一緒に親の口述記録を残しておくと、価値が何倍にもなります。
自分自身の40〜50代の終活開始時期
40代から始めるプレ終活の一環としても、家系図作成は有効です。40代から始めるプレ終活でも触れた通り、この世代は親の介護や相続準備が現実味を帯びてくる時期。家系図を作る過程で親族の本籍地や続柄が整理され、いざというときの相続手続きにもスムーズに移行できます。
家族の節目や記念日に合わせて
親の傘寿(80歳)・米寿(88歳)・卒寿(90歳)など、長寿のお祝いに合わせて家系図を贈るケースも増えています。物ではなく「家族の歴史」を贈るというのは、子世代から親世代への深い感謝の表現です。葬儀の打ち合わせで「父の米寿に家系図を渡せたのが最後の親孝行になった」と話してくださったご遺族の顔が、今も忘れられません。
家系図は相続準備にも役立つ
家系図作成で集めた戸籍は、将来の相続手続きでもそのまま活用できます。これは意外と知られていないメリットです。
相続が発生すると、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍を全部揃える必要があります。これは銀行口座の凍結解除、不動産の名義変更、相続税申告のいずれにも必須の書類。家系図作成のために集めた戸籍がすでに手元にあれば、相続発生時に慌てて取り寄せる必要がなくなる。
特に銀行手続きは戸籍の準備で時間を取られることが多く、銀行口座凍結の解除手続きでも書いた通り、葬儀直後の喪主にとって大きな負担になります。家系図作成という形で前もって戸籍を整えておくのは、立派な「家族への贈り物」になる。
また、相続人が誰なのかを把握しておくこと自体が、相続トラブル予防につながります。「実は父に異母兄弟がいた」「養子縁組された叔父がいる」といった事実は、戸籍を辿らないと判明しないことが多い。家系図作成のプロセスで家族関係が明確になれば、いざというときの揉め事が大幅に減ります。
よくある質問
Q1. 家樹に依頼すると、どこまで先祖を遡れますか?
戸籍が保存されている範囲、つまり明治5年(1872年)の壬申戸籍以降になります。実際には明治19年式戸籍までしか閲覧できないため、おおむね江戸時代末期から明治初期に生まれた高祖父母(4代前)あたりまで遡れるのが一般的です。それ以前は寺院の過去帳調査が必要で、家樹の通常プランには含まれません。
Q2. 養子縁組や離婚があった家族でも、家系図は作れますか?
作れます。むしろ戸籍には養子縁組・離婚・分籍などが正確に記載されているので、それらの履歴を含めた立体的な家系図が完成します。家族の歴史をありのままに残したい場合は、最初の打ち合わせ段階で「どこまで詳しく記載するか」を相談しておくのがいい。プライバシーへの配慮で省略することも可能です。
Q3. 父方と母方、両方の家系図を作るといくらかかりますか?
家樹のプレミアムプランで両系まとめて作成する場合、165,000円〜が目安です。父方・母方を別々のスタンダードプランで依頼するより、まとめたほうが若干お得になる料金設定です。両家の戸籍数によっては追加料金が発生する点は、片系の場合と同じです。
Q4. 完成した家系図はどのように飾るのが良いですか?
巻物タイプは桐箱に収納して仏壇の引き出しや床の間に保管する方が多いです。額装タイプはリビングや仏間の壁に飾り、来客時に話題のきっかけにする家庭もあります。直射日光が当たる場所と湿気の多い場所は和紙が傷むので避けてください。法事の際に親戚に披露すると、共通の祖先を確認し合うきっかけになって場が和みます。
Q5. 申し込んでから完成まで、どのくらいかかりますか?
標準的なスタンダードプランで2〜3ヶ月、プレミアムプランで3〜4ヶ月が目安です。戸籍の本籍地が全国に散らばっていたり、役所の繁忙期と重なったりすると1〜2ヶ月延びることもあります。親の誕生日や記念日に間に合わせたい場合は、半年前には申し込んでおくと安心です。
Q6. 家系図を作ることに、家族や親戚の同意は必要ですか?
法律上は依頼者本人の判断で作成可能ですが、完成後に親戚へ公開する場合は事前に話を通しておくのがおすすめです。特に養子縁組や離婚・再婚の履歴が記載される場合、当事者やその子孫がプライバシーを気にすることがあります。完成後に親戚で揉めないためにも、依頼前に主要な親族に一言伝えておくと無難です。




コメント