先月、名古屋市内のアパートで70代の男性が亡くなっているのが見つかった。発見までに8日。冷蔵庫の中には賞味期限切れのカット野菜と、封を切っていない缶ビールが3本。壁のカレンダーには「甥っ子 誕生日」と赤ペンで書かれた9月の日付だけが、ぽつんと残っていた。
連絡先を辿ろうにも、実の兄弟はすでに他界。甥っ子とも十数年前から音信不通。大家さんが警察と自治体に連絡し、そこから先の流れは全部、行政と私たち葬祭業者の手に委ねられた。こういう「身寄りのない方のお見送り」は、令和になってから明らかに増えている。私が20年前に業界に入った頃、うちの葬儀場で年間3〜4件だったのが、いまは月に2件ペースだ。
「もし自分が誰にも看取られずに亡くなったら、葬儀費用は誰が払うのか」、この記事を開いた方の多くが、そういう不安を抱えているはず。あるいは、遠い親戚が亡くなって突然役所から連絡が来て、面食らっている方もいるかもしれない。20年現場に立ってきた葬祭ディレクターとして、法律の建前ではなく、実際に何が起きるのかをお伝えします。
この記事の要点
- 身寄りがない人の葬儀費用は、①相続財産があれば故人の財産から、②なければ自治体が墓地埋葬法9条に基づいて負担する
- 自治体が行うのは「火葬のみ」で、通夜・告別式はない。費用は火葬料+棺+搬送で18万〜25万円程度
- 身元不明・引き取り手なしの遺体は「行旅死亡人」として扱われ、官報に公告される
- 遺骨は自治体の無縁納骨堂に一定期間(多くは5年)保管された後、合祀墓へ移される
- 疎遠でも法定相続人が判明すれば、後日「葬祭費用の求償」が届く可能性がある
身寄りがない人が亡くなった時、まず起きること
結論から言うと、身寄りのない方の遺体は、発見された場所と状況によって「誰が最初に動くか」が変わる。自宅なら大家さんか近隣住民、病院なら医師、路上なら警察。ここで最初に動く人が、その後の流れを決める起点になる。
先ほどのアパートのケースだと、家賃の引き落としが2ヶ月止まって、大家さんが訪問して発見した。警察に通報して、検視。事件性がないと判断されると、遺体は警察署の霊安室か、市が契約している安置施設に運ばれる。ここまでは、私たち葬儀屋が呼ばれる前の段階。
次に警察と自治体が、戸籍を辿って親族を探す。実務でよく聞く話だと、戸籍を遡って三親等以内の親族に連絡が行く。甥・姪、いとこあたりまでは対象になる。ここで「引き取ります」と答える方がいれば、通常の葬儀の流れに戻る。誰も引き取らない、あるいはそもそも親族が見つからない場合に、初めて自治体が動き出す。
発見から自治体対応までの平均日数
私が担当してきた事例の実感値だと、発見から火葬までの平均は12日前後。内訳はこう。警察の検視と身元確認で3〜5日、親族への連絡と引き取り意思の確認で5〜7日、自治体の予算執行の決裁で2〜3日。夏場だと遺体の傷みが早いので、安置施設の冷蔵設備の使用料が別途3〜5万円かかることもある。この費用も最終的には行政が負担するが、後から親族に請求が回るケースがある。
ちなみに親族への連絡は、住民票と戸籍附票を辿った上で書面で来る。「◯月◯日に◯◯氏がお亡くなりになりました。引き取りの意思をお聞かせください」という文面。返答期限は自治体によって違うが、7〜14日が多い。無視すると自動的に「引き取り拒否」扱いになる。以前まとめた疎遠な親族の遺体引き取り拒否と葬祭扶助のすべてでも詳しく触れてるので、突然役所から連絡が来た方は目を通しておくといい。
葬儀費用は誰が払う?優先順位を実務ベースで解説
身寄りがない人の葬儀費用の負担順位は、法律と実務でだいたい3段階に分かれている。順を追って説明する。
①故人の遺留金・遺留品から支払う
亡くなった方の財布・預金通帳・自宅にあった現金がまず充てられる。これを「遺留金」と呼ぶ。私が立ち会ったケースで一番多いのは、部屋のタンスや仏壇の引き出しから出てきた現金5万〜30万円程度。銀行口座は死亡が確認されると凍結されるが、遺留金として発見された現金は、警察と自治体の管理下で葬儀費用に充当される。
去年、豊橋市で担当したケースでは、押入れの段ボール箱から仏具袋に包まれた現金82万円が出てきた。この方は生活保護受給者ではなかったので、この82万円がまず葬儀費用に使われ、余った63万円は「相続財産管理人」が選任されて国庫に納められた。生活保護受給者の場合は少し扱いが違う。身元引受人がいない生活保護受給者の葬祭扶助の記事に、ケースワーカーが動く場合の流れを整理してある。
②墓地埋葬法9条により自治体が負担
遺留金がない、あるいは足りない場合、根拠法は「墓地、埋葬等に関する法律」の第9条。条文はこう。「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない」。強制規定だ。だから自治体は逃げられない。
実務では、自治体が地元の葬儀社に「取り扱い依頼書」を出す形。うちの会社もこの依頼を受ける契約自治体が3市あって、月に2〜4件は対応している。プラン内容は自治体ごとに決まっていて、名古屋市だと火葬料+棺(合板の一番シンプルなもの)+寝台車1回+骨壺で、税抜き18万5000円という契約になっている。豊橋市はもう少し安くて16万円台。この金額は入札で決まるので、業者ごとに差はない。
③行旅病人及行旅死亡人取扱法による処理
路上や公園、駅など「移動中」に亡くなった方で、身元も引き取り手もわからない場合は、明治32年制定の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」が適用される。ちょっと聞き慣れないと思うが、この法律で「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」として扱われる。旅先で亡くなった、住所地が特定できない、ざっくりそういう人が対象になる。
この法律に基づく場合、身体的特徴や所持品が官報に公告される。「行旅死亡人公告」と呼ばれるやつで、いまでも毎週のように官報に載っている。年齢60歳前後、身長165cm、黒のジャンパー、右手薬指に金色の指輪、こういう具体的な記載で、遺族の申し出を待つ。公告から60日経っても申し出がなければ、遺骨は自治体が保管する流れになる。
自治体が行う「直葬」の実際の中身
自治体が墓地埋葬法9条で行う葬儀は、実質的に「直葬」だ。通夜も告別式もない。読経もない。祭壇も花もない。手順はごくシンプルで、安置施設から火葬場へ運ぶ、火葬する、骨を拾う、骨壺に納める、以上。所要時間は火葬炉の空き状況にもよるが、通常2〜3時間で完了する。
当日の流れをタイムラインで
朝9時、安置施設に迎えの寝台車が到着。棺に納棺するのはうちのスタッフ2名。この時点で死装束を着せる時間もないので、亡くなった時の服装のまま、白い布で包んで納める。副葬品は基本的に入れない(自治体費用なので最小限)。9時30分、火葬場へ出発。10時、火葬場到着、炉前で職員が短い黙祷。この黙祷は、うちの会社の判断で私たちがやってる。誰も見送りに来ないから、せめて業者だけでも手を合わせようという方針だ。
10時15分、火葬開始。所要時間は約70〜90分。11時45分頃、収骨。骨壺は5寸の一番シンプルな白い陶器製。骨は全部拾える限り拾って、余った骨は火葬場で残骨供養される。12時30分、自治体の担当課へ遺骨と埋葬許可証を引き渡し。ここまでが業者の仕事。
読経や戒名はつくのか
基本的につかない。自治体の予算にお布施は含まれていない。ただし、自治体によっては契約している宗教者が月1回まとめて合同法要を行うところもある。名古屋市の場合、市が管理する斎場で年に2回、無縁仏合同慰霊祭が開かれていて、そこで導師が読経する。戒名は付かない。俗名のまま。
「戒名がないと成仏できないのでは」と気にする方もいるが、そもそも仏教の中でも浄土真宗は戒名という考え方をせず「法名」を使うし、宗派によっては俗名のままでもいい。戒名を自分でつける方法とリスクの記事でも触れてる通り、戒名の要不要は宗派と本人の考え方次第だ。
遺骨のその後、無縁納骨堂と合祀墓
火葬後の遺骨は、自治体の無縁納骨堂で一定期間保管される。保管期間は自治体によって違うが、多くは5年。この間に親族が名乗り出れば返還される。返還時に、その間の管理費は請求されないところがほとんど。
保管期間経過後は合祀される
5年経っても引き取り手が現れない場合、遺骨は自治体が管理する合祀墓(または委託先の寺院や霊園の合同墓)に納められる。合祀とは、複数の方の遺骨を一つの墓に一緒に納めること。一度合祀されると、個別の遺骨は取り出せない。
これが大事なポイントで、「もう少し早く事情を知っていれば取り出せたのに」という遺族の後悔をこの20年で何度も見てきた。合祀は不可逆。5年という時間は、あっという間だ。だから遠い親戚の訃報が届いた時は、たとえ「引き取れない」と判断しても、遺骨の保管場所と保管期限だけは自治体に確認しておくことをおすすめする。合祀墓の仕組み全体については合祀墓のメリット・デメリットにまとめてある。
供養は誰がするのか
合祀墓での供養は、自治体または委託先の寺院が行う。年に1回、春と秋の彼岸あたりに合同法要が行われるところが多い。個別のお参りはできないが、墓前で手を合わせることは自由。うちの近くの寺院が管理してる合祀墓には、私も年に何度か、担当したご遺体の方にお参りに行っている。名前も、生きてた頃の姿も知ってる。誰かが覚えてる限り、その人は無縁じゃないと思ってます。
費用の内訳、実額でいくらかかっているか
自治体が墓地埋葬法9条で対応する場合の費用を、名古屋市の契約金額ベースで具体的に書き出してみる。他の自治体でも大差はないので参考になるはず。
| 項目 | 金額(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| 寝台車搬送(安置所→火葬場) | 16,500円 | 1回のみ |
| 棺(合板・シンプル) | 22,000円 | 装飾なし |
| 火葬料(市民料金) | 5,000円 | 名古屋市在住扱いで市民料金適用 |
| 骨壺(5寸・白磁) | 3,300円 | 骨箱含む |
| ドライアイス(安置期間分) | 16,500円 | 3日分 |
| 安置施設使用料 | 33,000円 | 3日分 |
| その他事務手数料 | 110,000円 | 人件費・書類作成等 |
| 合計 | 206,300円 | 市外者だと火葬料+65,000円 |
このうち、遺留金があればまず遺留金から充当される。足りない分を自治体が公費で負担する。ちなみに一般の家族葬の全国平均が約99万円だから、自治体対応の直葬は5分の1程度で済んでる計算になる。家族葬の費用相場と比べると、その差は歴然としている。
親族に後から請求が来る可能性
ここも実務でよく聞かれる。自治体が立て替えた葬祭費用は、法定相続人が判明した場合、後から請求(求償)されることがある。根拠は民法の扶養義務や、行旅死亡人取扱法の規定。ただし実際に請求されるかは自治体の判断で、疎遠だった三親等の親族にわざわざ請求するケースは少ない。ゼロではない、というのが正確なところ。
過去に一度、大阪府の某市が疎遠だった甥に対して、叔父の葬祭費用約22万円を請求した事例を新聞で見た。甥は「20年会ってなかった」と反発したが、法的な扶養義務が消えるわけではないので、最終的に分割で支払ったと聞いている。生活保護受給者の親のケースについては生活保護受給者の親が亡くなった時、子どもが葬儀費用を払う義務はある?に詳しくまとめてある。
「行旅死亡人」として扱われるケース
行旅死亡人という言葉、初めて聞く方も多いはず。明治時代からある古い法律用語で、いま風に訳すと「旅先で亡くなり、身元も引き取り手もわからない人」を指す。自宅で亡くなった身寄りなしの方とは、扱いが少し違う。
官報公告の実物を見ると
官報のウェブサイトで「行旅死亡人」で検索すると、いまでも毎日のように公告が出ている。例を挙げると、こんな感じ。「年齢60歳位、身長160cm位、体格中肉、頭髪黒色に白毛混じり、着衣は紺色ジャケット、黒色ズボン、白色靴下、所持品は黒色ボストンバッグ、財布(現金1,246円)、キーホルダー2個。令和6年10月18日午前7時頃、◯◯県◯◯市◯◯町路上において発見、同日死亡確認。心当たりのある方はお申し出ください」。
読んでるだけで胸が締めつけられる。ボストンバッグを持って、どこかへ行こうとしていた誰かの、最後の情報がこれだけ。旅の途中だったのか、家出だったのか、認知症で徘徊してたのか、その事情は誰もわからないまま、公告の期限が過ぎていく。
申し出があった場合の流れ
官報公告を見て遺族が名乗り出た場合、公告した自治体に連絡して身元確認をする。DNA鑑定が必要になることもある(所持品と本人の毛髪など)。身元が確認されれば、遺骨は返還される。ただし、それまでにかかった費用(検視・搬送・安置・火葬・公告掲載料など)は、原則として遺族が負担する。金額は自治体によるが、20〜35万円程度が相場だ。
生前にできる備え、おひとりさま終活の実務
ここからは、いま自分が身寄りがない、あるいは頼れる親族が少ないと感じている方への話。自治体対応で火葬されることを避けたい、あるいは自分の希望する形で送ってほしいと思うなら、いくつかできる備えがある。
死後事務委任契約を結ぶ
死後事務委任契約は、自分が亡くなった後の葬儀・納骨・遺品整理・行政手続きなどを、生前に第三者に委任しておく契約。相手は司法書士・行政書士・弁護士・信頼できる友人などが多い。契約時に葬儀費用相当額(30〜80万円程度)を預託金として預けるか、生命保険の受取人指定を活用する。
費用の目安は、契約時の書類作成費が10〜30万円、預託金が30〜100万円、報酬が20〜50万円といったところ。合計で60〜180万円くらいの初期費用がかかる。決して安くはないが、これで「自分の希望する形で見送られる」ことが確定する安心感は大きい。
互助会や生前契約の活用
もう少し手軽なのは、葬儀社との生前契約。うちの会社でも月に5〜7件、おひとりさまの生前契約を受けている。積立金額は50万〜150万円が中心で、契約時に葬儀内容(直葬か家族葬か、宗教者を呼ぶか、遺骨の納め先はどこか)を細かく決めておく。契約書を弁護士や信頼できる知人に預けて、亡くなった時に連絡してもらう仕組み。
ただし互助会は解約時のトラブルが多いので、契約前によく調べてほしい。互助会の仕組みとメリット・デメリットを読んでから判断してもらうと安心できると思う。
エンディングノートに情報を残す
お金がかからず、いますぐできるのがエンディングノート。私が実際に見て「これは助かる」と思う情報はこう。①緊急連絡先(遠くても、たまに連絡取ってる甥っ子など) ②かかりつけ医と持病 ③預金口座と保険の一覧 ④葬儀・納骨についての希望 ⑤大家さん・管理会社の連絡先。この5つが書いてあるだけで、発見から火葬までの日数が半分に短縮されるし、遺留金・遺留品の扱いもスムーズになる。
置き場所は玄関の下駄箱の上、または冷蔵庫のドアに貼っておく。この2ヶ所は警察と救急が最初に確認するので、見つけてもらいやすい。「そんなの見られたくない」と思う気持ちもわかるが、見られないと結局、行旅死亡人扱いで官報公告される。どっちがマシか、天秤にかけて決めるといい。
近隣・大家さんが遺体を発見した時にすべきこと
アパートの大家さんや近隣住民が、身寄りのない住人の死亡を発見した時にどうすればいいか。これも実務で聞かれることが多い。
まず絶対にやってほしいのは、遺体を動かさないこと。事件性の有無を判断するのは警察の仕事なので、素人が触ると余計な疑いをかけられる。すぐに110番。救急車ではなく警察を呼ぶ。到着まで15〜30分、その間はドアを閉めておく。窓を開けて換気したい気持ちはわかるが、警察が来るまではそのままがベスト。
警察が来ると、検視・現場検証・親族への連絡までを全部やってくれる。大家さんがやるべきことは、住人の緊急連絡先や賃貸契約書のコピーを警察に渡すこと。それ以降は、警察と自治体の判断で進む。大家さんが葬儀費用を負担する義務はない。ただし、遺品整理の費用は大家さんが立て替えるケースが多く、これは後から相続財産や連帯保証人に請求できる。生活保護受給者の遺品整理費用は誰が払う?で、大家さん側の対応もまとめている。
よくある質問
Q1. 疎遠だった親戚が亡くなって役所から連絡が来た。断ってもいい?
断ることは可能です。遺体の引き取りは義務ではないので、「引き取れません」と回答すれば、自治体が墓地埋葬法9条に基づいて対応します。ただし、法定相続人にあたる場合(子・親・兄弟姉妹)は、後から葬祭費用の求償が来る可能性があります。また、故人に借金があった場合、相続放棄をしないと借金も相続することになるので、3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを検討してください。引き取り拒否と相続放棄は別の手続きです。
Q2. 遺骨だけでも引き取りたい。可能?
可能です。「葬儀費用は負担できないが、遺骨は引き取りたい」という選択肢は、多くの自治体で受け入れられます。この場合、火葬までは自治体が行い、火葬後の骨壺だけ遺族が受け取る形になります。ただし、火葬費用の一部が請求されることがあります(2〜5万円程度)。5年経って合祀される前なら、いつでも申し出できるので、迷ったらまず自治体の担当課(福祉課・市民課など)に電話で相談してください。
Q3. おひとりさまで、自分の希望する葬儀にしたい。何から始めればいい?
最初にやるべきは、エンディングノートに希望を書くこと。ここまでは無料でできます。次に、葬儀社の事前相談を受けて、自分の希望に近いプランと費用の目安を掴む。多くの葬儀社は無料で事前相談を受け付けています。予算が確保できるなら、生前契約か死後事務委任契約に進む。身寄りがない人の葬儀費用の生前準備で、費用感と手順をまとめてあります。
Q4. 自治体対応の火葬の場合、参列できる?
原則として、自治体対応の火葬は「引き取り手がいない」という前提で行われるので、遺族の参列は想定されていません。ただし、火葬当日までに親族が名乗り出た場合、火葬場での面会・立ち会いは認められることが多いです。事前に自治体の担当課に「立ち会いたい」と申し出てください。読経を希望する場合は、自分で僧侶を手配して同行することも可能ですが、お布施は自己負担になります。
Q5. 遺留金があった場合、余った分はどうなる?
遺留金が葬祭費用を上回った場合、余剰分は「相続財産」として扱われます。相続人がいる場合は、家庭裁判所を通じた相続手続きで相続人に渡ります。相続人が誰もいない場合は、家庭裁判所が「相続財産管理人(令和5年から相続財産清算人に名称変更)」を選任し、債権者への支払いなどを経て、最終的に残ったお金は国庫に納められます。この手続きには半年〜1年かかることも珍しくありません。
Q6. 「行旅死亡人」として官報公告された場合、どうやって気づける?
官報のウェブサイト(kanpou.npb.go.jp)で「行旅死亡人」を検索すると、過去の公告が閲覧できます。無料です。長年連絡が取れない親族がいる方は、月に一度くらいのペースでチェックすると気づけるかもしれません。また、「行旅死亡人データベース」という民間サイトも複数あり、身体的特徴や所持品から検索できる仕組みになっています。心当たりがあれば、公告した自治体に連絡してください。
まとめ、「無縁」という言葉を疑ってみる
この記事を書きながら、20年間で担当してきた身寄りなしの方たちの顔が何人か浮かんでます。最初に紹介したアパートの70代男性、実は火葬から2ヶ月後、甥っ子さんが遺骨を引き取りに来た。「叔父が亡くなったと、母(甥っ子さんのお母さん、故人の妹)の遺品整理をしてて古い年賀状を見つけて、辿ったら分かった」という。もう合祀される前でよかった、と甥っ子さんは泣いていた。
身寄りがないと役所に判断されても、誰かが必ず探してる。あるいは、後から気づく。「無縁仏」って言葉は、行政の便宜上のラベルであって、その人が本当に無縁だったかは別の話だと思ってます。
自分が身寄りなしと感じている方は、エンディングノートを書くところから始めてほしい。遠い親戚から連絡が来て困っている方は、遺骨だけでも引き取る選択肢があることを覚えておいてほしい。近隣で誰かが亡くなっているのを見つけた方は、まず110番。それぞれの立場でできることが、必ずある。誰かの人生の最後を、少しでも「無縁」から遠ざけることができるはずだと感じてます。
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