「家族葬って50万円くらいでできるって聞いたんですが、本当ですか?」打ち合わせ室で、息子さんを亡くされたばかりのお母さまにそう聞かれたのは、ついこの前のこと。広告で見た「29万円プラン」を信じてうちに来てくださったのですが、実際にお見積りを作ると総額は87万円になりました。差額の58万円は、決して葬儀社の悪意ではありません。プランに含まれていない「必ずかかるもの」が、表に出てこないだけなんです。
業界20年、年間100件以上の家族葬を担当してきて、費用のことで揉めるご遺族を何度も見てきました。「思ったより高くなった」「追加料金の説明がなかった」。こうした不満のほぼ全ては、最初の見積もり段階で防げる話です。この記事では、家族葬の費用相場を全国の実データで示しながら、100万円以下に抑えるための内訳と、見落とされがちな追加料金の正体を、現場目線で全部お伝えします。
読み終わる頃には、葬儀社の見積書を一行ずつ読み解けるようになっているはず。大切な人を見送る時に、お金のことで悩む時間を1分でも減らせたら嬉しいです。
家族葬の費用相場は全国平均99万円。でも実態は二極化している
鎌倉新書が2024年に実施した「第6回お葬式に関する全国調査」によると、家族葬の費用総額の平均は約99.5万円。これは葬儀社に払う基本費用に、飲食費・返礼品・お布施まで含めた数字です。一般葬の平均が約161万円なので、家族葬で約60万円の差があるという計算になります。
ただ、現場の体感として「平均99万円」という数字はあまり当てになりません。実際には40万円台で収まるご家庭と、150万円を超えるご家庭にはっきり分かれているからです。何が差を生むかと言うと、参列人数・式場のグレード・お布施の有無、この3つがほぼ全てです。
うちで先月担当した家族葬の例を3件挙げると、お一人は43万円(参列5名・直葬+一日葬・お坊さんなし)、もうお一人は98万円(参列15名・二日間の家族葬・お布施25万円)、最後のお一人は156万円(参列30名・公営斎場の上位ホール・お布施40万円)でした。同じ「家族葬」でも、選び方で3倍以上の差が出るんです。
なぜ広告の「29万円」では収まらないのか
「家族葬29万円」「39万円」といったテレビCMを見たことがある方は多いはず。これは嘘ではないけれど、本当でもありません。格安葬儀のからくりを業界目線で解説した記事でも詳しく触れていますが、広告価格に含まれているのは「祭壇・棺・骨壺・搬送(一定距離)・式場使用料の一部」だけ。火葬料金・ドライアイス追加分・遺影写真・飲食・返礼品・お布施は別請求です。
この「別請求」の合計が、だいたい30〜70万円。だから広告価格39万円のプランでも、最終的に80万〜100万円になるのが業界の通り相場なんです。最初から「これ以外にいくらかかりますか?」と聞ける人が、結果的に納得のいくお見送りができています。
家族葬の費用内訳を4つに分解する
葬儀費用は、大きく4つのブロックに分かれます。この4ブロックを頭に入れておくと、どの葬儀社の見積書を見ても「ここが安い」「ここが盛られてる」が判別できるようになります。
| 費用ブロック | 含まれるもの | 家族葬での目安金額 |
|---|---|---|
| ①葬儀本体費用 | 祭壇・棺・骨壺・遺影・式場使用料・スタッフ人件費 | 40〜70万円 |
| ②実費(変動費) | 火葬料金・ドライアイス・搬送距離超過・安置料 | 5〜15万円 |
| ③飲食・返礼品費 | 通夜振る舞い・精進落とし・会葬御礼・香典返し | 5〜20万円 |
| ④宗教者へのお礼 | お布施・戒名料・お車代・御膳料 | 0〜50万円 |
このうち、葬儀社のプラン料金に含まれているのは原則として①だけ。②③④は別建てで加算されます。広告に出ている価格と最終請求額が違うのは、ここに理由があります。
①葬儀本体費用は祭壇のグレードで20万円動く
葬儀本体費用の中で一番大きく動くのが祭壇です。家族葬向けの花祭壇だと、シンプルな白基調で15万円、季節の花を加えた中グレードで25万円、故人の好きだった花でアレンジした上位プランだと35万円といったところ。20万円の差が、ここでつきます。
正直な話、参列者が10名以下なら祭壇は中グレード以下で十分です。家族葬の主役は祭壇ではなく、ご家族が故人とゆっくり過ごす時間。豪華にしすぎても、感想を言ってくれる人がそもそも少ない。それより、棺の中に入れる愛用品や、思い出の写真を多めに飾る方が、ご家族の心は満たされます。
②実費は意外と見落とされる
火葬料金は自治体によって全く違います。公営の火葬場なら市民料金で1万〜3万円ですが、東京23区の民営斎場(桐ヶ谷・代々幡など)だと9万〜17万円。同じ家族葬でも、お住まいの地域でここだけで10万円以上差が出ます。
ドライアイスは1日あたり5,000〜10,000円。友引や火葬場の混雑で安置期間が伸びると、ここがじわじわ効いてきます。実際、コロナ禍で火葬場が1週間待ちになった時期は、ドライアイス代だけで7万円という請求が珍しくありませんでした。死亡から通夜までの日数と費用の関係を事前に知っておくと、ここの予算ブレを抑えられます。
③飲食・返礼品は人数で素直に増える
通夜振る舞いの料理は一人3,000〜5,000円、精進落としは一人4,000〜6,000円が相場。家族葬で10名なら、二回の食事で合計8〜10万円といったところ。会葬御礼品はお一人1,000〜1,500円、香典返しは頂いた香典の3分の1〜半額が目安です。
ここで節約したいなら、通夜振る舞いを省略するか、お弁当形式に切り替える方法があります。最近の家族葬では「親族だけだから精進落としもなしで」というご家庭も増えてきました。コロナ以降、食事を出さない家族葬が体感で3割は増えた印象です。
④お布施は寺院との関係で0円にも50万円にもなる
4ブロックの中で一番ばらつくのがここ。菩提寺がある場合、戒名料を含めたお布施の相場は20〜50万円。葬儀のお布施相場をまとめた2025年版データでは、通夜・告別式・戒名込みで全国平均31.8万円という調査結果が出ています。
一方、無宗教葬や直葬を選べばお布施は0円。創価学会の友人葬もお布施不要が原則です。「お布施は故人と仏様への気持ちだから」と言いつつ、実際には金額のレンジは結構はっきりしているのが現実。檀家でないご家庭なら、葬儀社経由でお坊さんを手配(5〜18万円程度)する選択肢もあります。
100万円以下に抑える具体的な5つの方法
ここからが本題。総額100万円以下で家族葬を行うために、現場のディレクターとして実際にお客様に提案してきた方法を5つ紹介します。すべて、故人と遺族の尊厳を損なわない範囲での話です。
方法1:公営斎場を使う(節約効果 約10〜20万円)
市町村が運営する公営斎場は、民営の葬儀会館より使用料が圧倒的に安いです。例えば横浜市の戸塚斎場なら、市民料金で火葬12,000円+式場使用料50,000円。同じ規模を民営葬儀会館で借りると、式場使用料だけで20万円というのも珍しくありません。
注意点は、人気の公営斎場は予約が取りにくいこと。特に都市部では1週間待ちもざらです。それと、葬儀社の見積書には「公営斎場対応プラン」を別立てで持っていない会社もあるので、最初の問い合わせ時点で「公営斎場を使いたい」と伝えてください。
方法2:一日葬か直葬に切り替える(節約効果 20〜40万円)
通夜を省略して告別式と火葬だけで1日で済ませる「一日葬」、式自体をやらない「直葬」を選ぶと、二日間分の式場使用料・ドライアイス・人件費がまるごと浮きます。一日葬の相場は50〜70万円、直葬なら20〜40万円。
ただ、これは親族への根回しが必須。「通夜もやらないなんて」と後で揉めるケースを何度も見てきました。事前に「故人の希望」「経済的事情」のどちらかを明確に伝えておくのが鉄則です。
方法3:祭壇を中グレード以下にする(節約効果 10〜20万円)
家族葬で上位グレードの祭壇を選んでも、見てくれる人は10人前後。SNSにアップする式でもないので、見栄を張る必要は本当にありません。中グレードの花祭壇に、故人の写真を多めに飾るスタイルにすると、温かみがあって家族葬らしい雰囲気になります。
方法4:通夜振る舞いを省略または弁当形式に(節約効果 5〜10万円)
会食形式の通夜振る舞いを、お持ち帰り弁当に切り替えるだけで一人あたり2,000円ほど節約できます。10名なら2万円、20名なら4万円。コロナ以降は弁当配布も自然な選択肢になったので、抵抗感は薄れています。
方法5:菩提寺がない場合は寺院手配サービスを使う(節約効果 10〜30万円)
菩提寺がない、または付き合いが薄いご家庭なら、葬儀社経由でお坊さんを手配するサービスを使うと費用が明朗です。よりそう・小さなお葬式などの大手だと、通夜から葬儀・戒名授与までセットで5.5万〜18万円程度。菩提寺に直接お布施30万円を渡すのと比べて、明らかに安く済みます。
ただ、すでに菩提寺があるなら必ずそちらに先に連絡してください。後から納骨を断られたり、離檀料を巡るトラブルに発展するケースが現場では本当に多いんです。
追加料金になりやすい「8つの落とし穴」
見積書を渡された後、「これって本当に全部?」と不安になる方は多いはず。実際、最終請求で「思ったより20万円高い」となる原因は、ほぼ以下の8項目に集約されます。
- 搬送距離超過料金(病院から安置所までの距離が想定を超えた時、1kmあたり数百円〜)
- 安置日数の延長(友引・火葬場混雑で1日伸びるごとにドライアイス代+室料)
- 会葬人数の増加(想定10名が実際20名になると飲食・返礼品が倍)
- 湯灌・エンバーミングの追加(基本プランには含まれない、5〜25万円)
- 遺影写真の修正・拡大(基本プランは決まったサイズのみ)
- 役所手続きの代行費(死亡届・火葬許可申請、3,000〜10,000円)
- マイクロバス・タクシーの手配(火葬場までの移動費、1台2〜5万円)
- 心付け(火葬場職員・霊柩車運転手への現金、地域差大)
このうち、湯灌(ゆかん:故人の体を清める儀式)とエンバーミング(遺体衛生保全処置)は、葬儀社から強く勧められるケースが多いです。確かに故人を綺麗に整える素晴らしい処置ですが、必須ではありません。短期間の安置で、お顔の状態も問題ないなら、エンゼルケア(看護師による基本処置)だけで十分なこともあります。
心付けは地域差が大きい
関西や九州の一部では、火葬場職員や運転手への心付けが慣習として残っています。一人3,000〜5,000円程度。最近は受け取り禁止の公営火葬場も増えてきたので、葬儀社の担当に確認するのが確実です。「気持ち」と言いつつ実態は地域ルールなので、ここは恥ずかしがらずに聞いてください。
見積書をもらった時に絶対チェックすべき5項目
葬儀社から見積書を受け取ったら、感情で判断する前に必ず以下の5項目を確認してください。これだけで、最終請求の「想定外」がほぼなくなります。
- 「総額」と書かれた金額に、飲食・返礼品・お布施が含まれているか
- 火葬料金は実費としてプラン外か、込みか
- 安置日数は何日想定か、超過した場合の1日あたり追加金額
- 会葬者の人数想定は何名か、増えた場合の追加単価
- キャンセル時の費用(病院搬送後にキャンセルになった場合の請求額)
特に重要なのは2項目めの「火葬料金が込みか別か」。これを確認するだけで、東京なら10万円前後の認識ズレを防げます。葬儀社の担当が口を濁したら、その会社は要注意です。
最低でも2社から見積もりを取る
「もう病院から搬送先を決めてくれと言われている」という焦りで、最初に紹介された葬儀社にそのまま依頼してしまう人が本当に多いです。でも、搬送と葬儀契約は別もの。病院指定の葬儀社を断る方法を知っておくと、落ち着いて2〜3社から相見積もりが取れます。
急いでいる時こそ「一旦搬送だけお願いして、葬儀の打ち合わせは別途」というスタンスを取れる人が、結果的に20〜30万円安く、しかも納得のいくお見送りができています。
香典で実質負担はどれだけ下がるか
家族葬は「香典辞退」を選ぶご家庭が増えていますが、受け取る場合は実質負担が大きく下がります。家族葬で参列者15名の場合、香典の平均総額は約15〜20万円。香典返しに半額を使うとしても、手元に7〜10万円残る計算です。
つまり総額98万円の家族葬でも、香典収入を引いた実質負担は88〜91万円程度。「100万円が用意できない」と悩むご家庭でも、香典を受け取る形にすれば手取りの自己負担はかなり下がります。
ただし、香典を受け取るならお返し(香典返し)も必要になるので、純粋な節約というより「キャッシュフローの安定化」という意味合いに近いです。喪主の現金が一時的に厳しい時には、銀行口座の凍結解除前でも葬儀費用を仮払いできる制度もあります。
葬儀費用の支払い方法と補助制度
葬儀代は基本的に1〜2週間以内に現金または銀行振込で支払う必要があります。クレジットカード払いに対応している葬儀社も増えてきましたが、限度額の関係で全額カードは難しいことも多いです。分割払い・ローン対応の会社もあるので、資金面が心配なら最初に確認してください。
知っておきたい補助制度として、国民健康保険加入者なら「葬祭費」として5〜7万円(自治体により異なる)が支給されます。会社員(健保組合)の場合は「埋葬料」として5万円。これは申請しないともらえないので、葬儀後2年以内に必ず手続きしてください。
生活保護受給世帯の場合は、自己負担0円で葬儀ができる「葬祭扶助制度」があります。これも事前申請が必須で、すでに葬儀を行ってしまった後では使えません。経済的に厳しい状況なら、迷わず福祉課に相談してください。
よくある質問
Q1. 家族葬と一般葬の費用差はどれくらいですか?
全国平均で見ると、家族葬約99万円に対して一般葬は約161万円。差額は60万円ほどです。差が出る主な要因は、参列人数の違いによる飲食費・返礼品費・式場規模の差。一般葬は会葬者50〜100名規模を想定するのに対し、家族葬は10〜30名想定なので、ここで素直に費用が下がります。
ただし、家族葬は香典収入も少なくなるため、実質負担の差は思ったほど大きくないケースもあります。会社関係や近所付き合いが広いご家庭だと、一般葬の方が香典収入で結果的に安くなることもあるので、参列予定者の数で総合判断するのが現実的です。
Q2. 葬儀社の見積書で「一式」と書かれている項目は何が含まれていますか?
「祭壇一式」「運営一式」のような表記は、葬儀社によって含まれる内容がバラバラです。同じ「祭壇一式30万円」でも、A社は祭壇のみ、B社は祭壇+遺影+骨壺込みということが普通にあります。必ず「この一式に何が含まれていますか」と紙で内訳を出してもらってください。
口頭で「全部入ってますよ」と言われても、後で「これは別料金でした」となるケースが多いです。書面に残すのが鉄則。誠実な葬儀社なら必ず書面で出してくれます。
Q3. お布施を払えない場合、どうすればいいですか?
菩提寺がある場合は、まず正直にご住職に経済状況を伝えてください。お寺さんも人間ですから、事情が分かれば金額を相談に乗ってくれることがあります。一方的に「払えません」と切り出すのではなく、「精一杯で〇万円しか用意できないのですが」という形で相談するのがコツです。
菩提寺がない場合は、無宗教葬や直葬を選ぶか、葬儀社の寺院手配サービス(5〜10万円程度)を使う選択肢があります。戒名なしでも納骨は可能ですが、納骨先のお寺によっては戒名が必須なところもあるので、納骨予定の場所と事前にすり合わせてください。
Q4. 互助会の積立金は家族葬に使えますか?
互助会の積立金は使えますが、そのまま家族葬の全費用をカバーできることは少ないです。多くの互助会は「祭壇・棺・式場使用料の一部」をカバーする内容で、火葬料金・飲食・お布施は別請求になります。積立金30万円分があっても、最終的に追加で50〜70万円かかるのが普通です。
互助会のもう一つの注意点は、解約時に手数料が引かれること。「葬儀をしないことになった」「他社にお願いしたい」となった場合、積立金の全額が戻ってこないケースが多いので、契約内容を必ず確認してください。
Q5. 家族葬でも喪主の挨拶は必要ですか?
家族葬は親族のみの参列なので、形式的な喪主挨拶は省略しても問題ないご家庭が多いです。ただ、火葬後の精進落としの席で「今日はありがとうございました」と一言だけ伝えるのが一般的。1分程度の短い挨拶で十分です。
気心知れた家族だけの場でも、喪主が何も言わずに終わると親族間で「あれ?」となることがあります。「故人が皆さんに見送ってもらえて喜んでいると思います」程度のシンプルな言葉で、場が締まります。
Q6. 葬儀費用は相続税の控除対象になりますか?
はい、葬儀費用は相続財産から控除できます。具体的には、通夜・告別式の費用、火葬料金、お布施、戒名料、遺体搬送費などが対象。香典返しと初七日以降の法要費用は控除対象外なので注意してください。
領収書や記録が残るものは必ず保管しておくこと。お布施は領収書が出ないことが多いので、支払った日付・金額・宛先(〇〇寺)をメモに残しておくと、税理士さんに確認された時にスムーズです。




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