先週、40代の女性から一本の電話を受けた。「父が今朝亡くなって、遠方の親戚から『枕花を今日中に送りたい』と連絡があったんですが、私、枕花って何なのかも分からなくて」。声が震えていた。ご遺族にとっては当然だ。私自身、この仕事を始めた22歳のとき、先輩に「枕花と供花の違い、説明できる?」と聞かれて答えられなかった。20年経った今でも、電話口で同じ質問を受ける頻度は年に30回を下らない。
枕花(まくらばな)とは、ご遺体を安置している枕元に供える花のこと。訃報を受けた側が、通夜が始まる前の段階で、ご自宅や安置施設に届ける弔意の花だ。相場は5,000円から2万円。カサブランカや白菊を中心にした落ち着いた籠花が主流で、家族葬が全体の6割を超えた令和の今、枕花の需要はむしろ増えている。
この記事では、私が現場で20年見てきた枕花の実務、供花との明確な違い、宗派別の花選び、そして手配で失敗しないための具体的な手順を、実際の失敗談を交えながらまとめる。訃報を受けた直後の慌ただしい時間に、この記事だけで判断できるように書いた。
この記事の要点
- 枕花は「訃報を受けた当日〜通夜前日まで」に届くよう手配する花で、ご遺体の枕元に供えるもの
- 相場は5,000円〜2万円。籠花(アレンジメント)で1基のみ贈るのが基本(1対にしない)
- 供花は「通夜・葬儀の祭壇脇に飾る花」で、1万5,000円〜3万円が中心。枕花より遅いタイミングで贈る
- 白い花(カサブランカ、白菊、白いユリ、胡蝶蘭)が基本。仏教なら樒(しきみ)、神道なら榊(さかき)を混ぜない
- 手配は葬儀社に直接依頼するのが最も確実。街の花屋に頼むと安置場所の把握や宗派配慮で失敗しやすい
枕花とは何か、ご遺体の枕元に供える弔意の花
結論から言えば、枕花は「ご遺体が自宅または安置施設に戻った直後から、通夜が始まるまでの間、枕元に供える花」だ。他の弔意の花との決定的な違いは、供える場所とタイミングの2点にある。
ご遺体が病院から自宅に戻ると、私たち葬祭スタッフは布団を敷き、白い枕カバーをかけ、頭を北向きに整える。この枕元に、逆さ屏風、枕飾りの小机、香炉、燭台、そして枕花を配置する。枕花はご遺体のすぐ横、故人が最初に受け取る弔意の花だ。だからこそ、送る側の「一刻も早く駆けつけたい」という気持ちを形にする花でもある。
誰が枕花を送るのか
基本的には、ご遺族と非常に近しい間柄の人が送る。故人の兄弟姉妹、甥姪、親しかった従兄弟、故人と生前深く交流していた友人。仕事関係でも、故人が長年勤めた会社の代表や、特に懇意にしていた取引先が送るケースがある。私が担当した昨年の一日葬では、故人(78歳・元中学校教頭)の教え子だった60代の男性が「先生に真っ先に届けたい」と、逝去当日の夕方に枕花を持って自宅を訪ねてきた。
逆に、面識の薄い遠縁や、会社関係でも直接の付き合いがない人は、枕花ではなく後日の供花または香典で弔意を示すのが自然だ。枕花はご自宅の狭いスペースに置くため、あまりに多くの花が届くと遺族が困る。配慮のひとつとして「自分は枕花か供花か、どちらが適切か」を判断する目安がある。
家族葬でも枕花は送ってよいのか
ここは慎重に。家族葬の場合、遺族が「香典・供花・弔問すべて辞退」と明言していれば、枕花も控えるのが礼儀だ。ただし、訃報の連絡の中で辞退の意思が明示されていない場合や、故人と非常に深い関係にあった場合は、事前に遺族に「枕花を一基だけお送りしてもよろしいですか」と確認する。
私の経験だと、家族葬でも枕花だけは受け入れる遺族が多い。理由は明確で、通夜・告別式の会場に置く供花と違って、枕花は自宅の一室に静かに置かれるだけだから、参列者への対応が発生しない。「花だけは受け取りたい、でも人は来てほしくない」というご遺族の気持ちに、枕花はちょうど収まる。
枕花を送るタイミング、訃報を受けたその日のうちが原則
結論を先に。枕花は訃報を受けたその日、遅くとも翌日午前中までに届くよう手配する。通夜が始まるまでに間に合わなければ、それはもう枕花ではなく供花になってしまう。この時間感覚が、他の弔意の花との一番の違いだ。
訃報の連絡は、深夜や早朝に入ることが多い。私が受けた最短の事例だと、朝5時半に息を引き取った方のご親戚から、7時20分に「枕花を送りたい」と葬儀社に電話が入った。花屋の営業開始を待って9時に発注し、11時には安置先の自宅に届いた。この速さが枕花の本来の姿だ。
遠方の場合の判断基準
訃報を受けた自分が遠方にいて、当日中の配送が物理的に無理な場合はどうするか。私が遺族から相談を受けたときの答えは決まっている。「無理して枕花にせず、通夜に間に合う供花に切り替えましょう」。
枕花の意味は「一刻も早い弔意」にある。深夜便で翌日届いても、それが通夜前日ならまだ枕花として通用するが、通夜当日の朝に届いた花は、もう祭壇脇の供花として扱ったほうが座りがいい。無理にラベルを枕花にすると、遺族側で置き場所に困る。
深夜・早朝の訃報にどう対応するか
訃報が深夜2時に入って、朝までどうしたらいいか分からない。そういう電話も年に何度か受ける。私からのアドバイスはシンプルで、「葬儀社の24時間受付に朝一で電話を入れる」。ほぼすべての葬儀社が24時間対応の連絡窓口を持っているので、深夜のうちに希望を伝えておけば、営業開始と同時に花屋に発注してもらえる。
直接花屋のインターネット注文を使う手もあるが、私は勧めない。ネット花屋は「安置場所の詳細」「宗派」「他の花との重複」を把握していないため、届いてみたら仏教家庭に洋花だらけのスタンド花が来た、というトラブルを何度も見てきた。葬儀社経由なら、その葬儀社が受注している他の枕花・供花との調整もしてくれる。
枕花の相場、5,000円から2万円が中心
結論から。枕花の相場は5,000円から2万円で、最も選ばれるのは1万円のアレンジメント(籠花)だ。私が担当している東京郊外の葬儀場で、令和6年に受注した枕花約200基の内訳は、5,000円が23%、8,000円が18%、1万円が41%、1万5,000円が11%、2万円が7%だった。1万円前後が中心層。
| 関係性 | 相場 | 花のボリューム目安 |
|---|---|---|
| 故人の兄弟姉妹・従兄弟 | 1万〜2万円 | 直径40〜50cm籠花 |
| 親しかった友人・恩師の家族 | 8,000〜1万5,000円 | 直径35〜45cm籠花 |
| 故人の元同僚・元部下 | 5,000〜1万円 | 直径30〜40cm籠花 |
| 会社(代表者名で送る) | 1万5,000〜3万円 | 直径45〜55cm籠花 |
| 連名(3〜5名でまとめる) | 1万〜1万5,000円 | 直径40〜50cm籠花 |
なぜ1万円が中心になるのか
5,000円だと、正直、見劣りする。私が現場で見てきた5,000円クラスの籠花は、直径30cmほどで、花の種類も3〜4種類に留まる。悪くはないが、枕元に置くとやや寂しい印象になる。一方で2万円を超えると、ご自宅の枕元スペース(多くの場合、6畳の和室)に対して大きすぎる。1万円クラスなら、白菊5〜6本、カサブランカ2〜3本、スプレー菊、カーネーション、グリーンで、直径40cm程度のバランスの良い籠花になる。これがちょうどいい。
会社名義で送る場合は1万5,000〜3万円と少し上げる。企業の弔意は形として大きめに示すのが慣例で、名札には「株式会社◯◯ 代表取締役 △△」と明記する。個人と会社では相場の桁が違う、と覚えておくといい。
連名で送るときの計算
職場の同僚数名で連名にする場合、一人あたり2,000〜3,000円を出し合って、合計1万〜1万5,000円にまとめるのが一般的だ。名札には「◯◯部一同」または全員の氏名を列記する。5名を超える場合は「◯◯部有志」でまとめたほうが、名札のスペース的にも見た目がすっきりする。
枕花と供花の違い、場所・タイミング・形状の3点で見分ける
結論を最初に置く。枕花と供花は、①供える場所、②届けるタイミング、③花の形状、この3点が違う。同じ「弔意の花」でも役割が明確に分かれている。
| 比較項目 | 枕花(まくらばな) | 供花(きょうか・くげ) |
|---|---|---|
| 供える場所 | ご遺体の枕元(自宅または安置室) | 通夜・葬儀会場の祭壇脇 |
| 届けるタイミング | 訃報当日〜通夜前日まで | 通夜当日の午前中まで |
| 形状 | 籠花(アレンジメント)1基 | スタンド花または籠花、1基または1対 |
| 相場 | 5,000〜2万円 | 1万5,000〜3万円 |
| 贈る側 | 特に近しい親族・友人 | 親族全般・会社関係・友人知人 |
| 設置期間 | 通夜前まで(半日〜1日半) | 通夜・告別式の2日間 |
枕花を送ったら供花は不要か
よく聞かれる質問だ。答えは「両方送ってもいいし、枕花だけでもいい」。故人と非常に近しい関係の場合、枕花と供花を両方送るケースはある。ただし予算的な負担も大きくなるので、無理に両方揃える必要はない。
私の実感だと、枕花を送る人の6割ほどは、それとは別に香典も持参している。花と香典で気持ちを分けて表す形だ。両方送るか片方かは、故人との関係の深さと、自分の予算で決めていい。
枕花は1基のみ、供花は1対でも可
枕花は基本的に1基のみ贈る。ご遺体の枕元は狭いスペースなので、1対(2基)にすると置き場所に困る。対して供花は祭壇脇の左右に飾るため、1対で贈る文化が残っている(最近は1基のみも増えている)。
私が過去に一度だけ、枕花を1対で贈ったご親戚を見たことがある。ご遺族から「置き場所がない」と相談を受け、1基を枕元、もう1基を仏壇の前に移動させた。悪意はないのだが、送る側は「1基のみ」を覚えておいてほしい。
花選びの実務、白い花を中心に、宗派で微調整する
結論。枕花の花選びは「白い花を中心に、宗派に応じて樒や榊を加減する」がすべてだ。難しく考える必要はない。
枕花の基本構成
私が花屋と長年組んで作ってきた1万円クラスの枕花の標準構成はこうだ。白菊5〜6本、カサブランカ2〜3本、白のトルコキキョウ3本、白のスプレー菊5本、白のカーネーション3本、グリーン(レザーファンやドラセナ)を適量。全体で白と緑のみ、直径40cmの籠に生ける。
白一色が基本だが、故人が生前に好きだった色を少し混ぜるのは今は許容範囲だ。淡いピンクや薄紫は、遺族が事前に希望した場合に限って加える。ただし赤・オレンジ・黄色などの原色は避ける。派手さは弔意と噛み合わない。
避けたほうがいい花
- 棘のある花(バラ、アザミなど)、「痛み」を連想させる
- 毒のある花(彼岸花、スズラン、水仙)、縁起が悪いとされる
- 香りの強すぎる花(ストック、フリージア)、狭い和室では圧迫感になる
- 花粉が多い花(ユリの一部品種)、衣服や畳を汚す。花屋には「花粉処理済み」を指定
- ドライフラワー・プリザーブドフラワー、枯れた花のイメージがある
バラについては、私が20年前に現場に入ったころは絶対NGだった。今は白バラを故人の好みで加えるケースも増えているが、それでも枕花では避けるのが無難だ。棘を取ってあっても、伝統的なマナーに敏感な高齢の親族から「なぜバラを」と言われることがある。
宗派別の注意点
宗教ごとに、枕花に加える植物のルールがある。ここを間違えると、届いた花を遺族が飾れないことがある。
| 宗教・宗派 | 推奨 | 避けるもの |
|---|---|---|
| 仏教全般 | 白菊、カサブランカ、白いユリ、樒(しきみ)を混ぜても可 | 特になし(樒はOK) |
| 浄土真宗 | 白菊、白いユリ、洋花可 | 樒は基本使わない |
| 日蓮宗・法華宗 | 樒を強く重視、白菊も可 | 洋花は控えめに |
| 神道 | 榊(さかき)を必ず入れる、白菊、白いユリ | 樒は絶対NG(樒は仏教) |
| キリスト教 | 白いユリ、カーネーション、洋花中心の籠花 | 菊は避ける、樒・榊は入れない |
| 創価学会 | 樒(しきみ)を中心にした樒祭壇 | 一般的な仏花は使わない場合あり |
宗派が事前に分からない場合、白菊とカサブランカを基本にした「無難な仏花構成」を選べば、ほぼどの宗教でも致命的な失礼にはならない。ただし神道とキリスト教は花の選び方がはっきり違うので、遺族に一言確認するのが確実だ。キリスト教の葬儀では献花や花選びの作法が独特で、菊を避けて洋花中心にする文化がある。
創価学会の場合、樒祭壇(しきみさいだん)といって、樒のみで祭壇を構成する独自の形式を取ることが多い。この場合、外部から一般的な仏花を送ると受け取ってもらえないことがあるので、必ず事前確認が必要だ。
手配の実際、葬儀社に直接依頼するのが最も確実
結論を先に書く。枕花の手配は、故人の葬儀を担当している葬儀社に直接電話するのが一番早く、一番失敗しない。街の花屋やインターネット花屋でも注文は可能だが、私は現場から見ていて、葬儀社経由を強く勧める。
葬儀社に依頼する手順
- 訃報の連絡の中で、担当葬儀社の名前と連絡先を確認する(分からなければ遺族に聞く)
- 葬儀社に電話し、「◯◯家の枕花を送りたい」と伝える
- 予算、送り主の名前、届け先、宗派を確認される
- 名札の記載内容を確認(個人名か会社名か、連名か)
- 支払いは葬儀社経由で振込またはクレジット、代金引換など選択できる
私が受注する電話だと、実質5分で完了する。花のデザインも「1万円のアレンジメントでお願いします」と言ってもらえれば、その葬儀社が提携している花屋で最適な籠花を組んで届ける。宗派・他の花との重複・安置場所の広さも把握しているので、失敗がない。
街の花屋やネット花屋を使う場合の注意
知り合いの花屋にお願いしたい、という気持ちも分かる。その場合は、以下を必ず伝えてほしい。
- 「枕花」であること(供花ではない)、サイズと形状が変わる
- 宗派(分からなければ「一般的な仏花で」)
- 安置場所の住所と、届ける日時(できれば「◯月◯日の午前中まで」と明確に)
- 名札の内容(送り主の氏名・肩書き)
- 送り主の連絡先(花屋から確認が入る場合がある)
特にネット花屋を使う場合、注文時に「枕花」の指定ができないシステムもある。その場合は備考欄に「枕花としてお使いください。仏教家庭・◯◯家」と書き添える。私が去年見た失敗例では、ネット注文の花が届いたものの、送り主の名札に「お誕生日おめでとうございます」の定型メッセージがついたままだった。花屋のミスだが、注文者側の確認不足でもある。
名札(立て札)の書き方、送り主が誰か明確に
結論。枕花の名札は「送り主の氏名(または会社名+代表者名)」を明確に、シンプルに書く。凝った文言は不要。
個人で送る場合の基本形
名札の縦書き、右から順に。表書きは「供」または「奉献」。個人名は氏名のみ(フルネーム)。故人との関係を書き添えるのは通常しない。名札のサイズは幅約8cm、高さ約30cmが標準。
- 個人:「供 鈴木一郎」
- 夫婦連名:「供 鈴木一郎・花子」
- 兄弟連名:「供 鈴木一郎・鈴木二郎」
- 友人一同:「供 ◯◯高校同期一同」
- 会社(代表):「供 株式会社△△ 代表取締役 佐藤太郎」
- 会社(部署):「供 株式会社△△ 営業部一同」
名札での失敗例
私が過去に見た名札のトラブルは3つのパターンに集中している。①故人と同姓の親族が送る場合、名字だけだと誰か分からない。フルネームで書く。②連名で人数が多すぎると名札に収まらない。5名超は「◯◯一同」でまとめる。③会社名の略称は避ける。「◯◯商事」を「◯◯商」と略すと、遺族が誰から届いたか分からない。
3年前の告別式で、名札に「山田」とだけ書かれた枕花が届き、ご遺族から「山田さんが3人心当たりある。どの山田さんだろう」と聞かれたことがある。花屋に問い合わせて発注者が判明するまで2時間かかった。フルネームは必須だ。
枕花を受け取った遺族側の対応
結論。枕花を受け取ったら、枕元に飾り、送り主の名前と連絡先を記録し、後日お礼状または電話でお礼を伝える。香典返しのような品物でのお返しは基本的に不要だが、地域によって慣例が違う。
受け取ったときの記録
私が遺族にいつも勧めるのは、届いた花の写真を撮って、名札の内容もメモしておくことだ。通夜・告別式が終わって落ち着いた頃、四十九日を目安にお礼状を送る。この時点で名札の情報が曖昧だと、誰にお礼を伝えていいか分からなくなる。
葬儀社側でも、届いた花はすべて受付簿に記録している。遺族が忙しくて記録できなくても、後で葬儀社に問い合わせれば送り主のリストは受け取れる。会葬礼状や後日のお礼状には決まった文例があるので、忌明けを目安に整理していけばよい。
お返しはどうするか
枕花への品物でのお返しは、香典と違って基本的に不要。ただし、いくつかの地域(東海地方・関西の一部)では、供花・枕花への「花返し」の慣例が残っている。1,000円〜3,000円程度の品物(お茶、海苔、タオル)を、忌明けに送る。
私が担当する首都圏では、花返しの慣例はほぼない。お礼状の郵送だけで完結する。地域慣例が分からない場合は、葬儀社に「この地域で花返しの慣例はありますか」と聞けば教えてくれる。
現場で見てきた失敗事例と回避策
結論。枕花のトラブルは「タイミングのずれ」「宗派の勘違い」「名札の不備」「置き場所の食い違い」の4つに集中する。それぞれの回避策を、実例と一緒に書いておく。
失敗例1:通夜当日に届いてしまった
2年前、故人(63歳・男性)のご親戚が「枕花を送る」と連絡してきたが、実際に届いたのは通夜当日の午後3時。通夜開始は18時。枕花としては遅すぎるし、供花としては会場に飾るスペースがすでに埋まっていた。結局、告別式の翌日、火葬後の初七日法要の場に飾ることになった。送り主の意図とは違う使われ方になった。
回避策は簡単で、間に合わないと判断したら早めに供花に切り替える。または、無理に花を送らず、後日弔問時に持参する。「間に合わせる」ことにこだわると、かえって遺族に手間をかけることになる。
失敗例2:神道の家に樒を送ってしまった
これは去年の実例。故人の友人が「仏教だと思って」樒入りの枕花を発注したが、実際は神道の家だった。届いた花を見て、ご遺族の父親(80歳)が「なぜ樒がある」と困惑した。葬儀社側で樒を抜いて、榊を加えて調整したが、送り主にとっては不本意な事態。
回避策。宗派が分からないときは、無難な白菊・カサブランカ中心の構成にする。または遺族に一言「仏教でよろしいですか」と確認する。訃報の連絡の中で「◯◯家」としか聞いていない場合、宗派は分からないことが多い。神道の葬儀「神葬祭」は花や作法が仏式と大きく異なるので、事前確認が欠かせない。
失敗例3:家族葬なのに大きすぎる枕花が届いた
4年前、家族葬(参列者12名)の会場に、3万円クラスの枕花が届いた。送り主の善意は分かるが、ご自宅の6畳の和室にはスペースがなく、廊下に置かざるを得なかった。ご遺族から「気持ちはありがたいが、大きすぎて」と後日相談を受けた。
回避策。枕花は1万円前後にとどめ、大きな花を贈りたい気持ちは供花で表現する。家族葬の場合は特に、遺族の物理的な負担を考慮する。家族葬の場合は参列範囲だけでなく花や香典の受け取り方も配慮が必要で、送る側も控えめが基本だ。
失敗例4:名札の記載ミス
これは花屋側のミスだが、注文者の確認不足も含む。「◯◯商事 代表取締役 田中一郎」と発注したのに、名札は「◯◯商事 田中一郎」と省略されて届いた。ご遺族は「代表取締役の田中さんからいただいた」と認識せず、後日のお礼状で肩書きを間違えた。
回避策。名札の内容は発注時に確認し、可能なら葬儀社経由でチェックを入れる。ネット注文の場合は、備考欄に「名札:株式会社◯◯ 代表取締役 田中一郎(省略不可)」と明記する。
よくある質問
Q1. 枕花を送るとき、電話で「お悔やみの言葉」も一緒に伝えるべきですか
枕花を発注する電話は花屋または葬儀社にかけるので、そこで直接お悔やみの言葉を伝える必要はない。別途、遺族に電話またはメールでお悔やみを伝えるのが自然な流れ。ただし、遺族が心身ともに疲弊している時期なので、長電話は避ける。「このたびはご愁傷様です。枕花をお送りしましたので、お使いください」と1分以内にまとめる。
Q2. 「枕花」と「後飾り花」は違いますか
違う。後飾り花は、火葬後にご遺骨を自宅に持ち帰った後、四十九日までの間、後飾り祭壇(中陰壇)に供える花のこと。枕花は通夜前の花、後飾り花は火葬後の花で、時期が完全に別。ただし後飾り花も基本的には白い花中心で、選び方は枕花に近い。
Q3. キリスト教の家に枕花を送ってもよいのですか
送っても構わないが、花の内容は変える。キリスト教では白菊よりも白いユリ、カーネーション、洋花中心の籠花が好まれる。「枕花」という呼び方はキリスト教では使わないが、実質同じ用途で贈れる。カトリックとプロテスタントで細かい違いはあるが、白い洋花中心のアレンジメントなら、どちらでも失礼にはならない。
Q4. 予算が5,000円しかないのですが、失礼になりませんか
失礼にはならない。予算より、送るタイミングと気持ちが大切だ。5,000円のアレンジメントでも、白菊とカサブランカを中心にした落ち着いた籠花になる。金額の大小より、故人を悼む気持ちが伝わるかどうか。私が現場で見てきた限り、5,000円の枕花で「安すぎる」と不満を漏らしたご遺族は一人もいない。
Q5. 枕花を送った後、通夜や告別式にも参列すべきですか
関係性による。故人と非常に近い関係なら、枕花を送った上で通夜・告別式にも参列するのが自然。遠方や仕事の都合で参列できない場合、枕花だけで弔意を示すのは失礼ではない。家族葬で「参列辞退」の場合は、枕花だけを送って参列は控える。
Q6. 枕花にメッセージカードは添えられますか
添えられる。ただし、長文は避けて短くまとめる。「ご冥福を心よりお祈り申し上げます ◯◯」程度で十分。仏教徒には「ご冥福」は使えるが、浄土真宗では「ご冥福」を使わない慣習もあるので、宗派が浄土真宗と分かっている場合は「安らかにお眠りください」に変える。「ご冥福をお祈りします」の使い分けは宗派で違うので、迷ったら「哀悼の意を表します」が最も安全。
Q7. 枕花を辞退された場合、代わりに何を送ればいいですか
花・香典・供物すべて辞退の家族葬なら、何も送らないのが遺族の希望。ただ、どうしても弔意を示したい場合は、忌明け(四十九日以降)に「お線香」または「弔電」を送る手がある。線香なら1,500〜3,000円程度で、遺族が使いたい時に使える。




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