父の四十九日が終わったあと、実家の仏壇の引き出しから茶色く変色した除籍謄本が出てきた。曾祖父の名前、明治生まれの生年月日、そして知らない兄弟の記録。それを見た母が「うちの家系、ちゃんと残しておきたい」とぽつりと呟いた。葬儀の現場でこういう場面によく立ち会う。人を見送ったあとに、遺族はふと自分たちのルーツを知りたくなる。
ただ、いざ家系図を作ろうとして戸籍を集めはじめると、多くの人が3日で挫折する。本籍地の役所に何度も足を運び、旧字体の手書き戸籍を判読し、転籍を追いかける作業は想像以上に消耗する。そこで需要が伸びているのが、戸籍収集からまるごと引き受けてくれる家系図作成サービスだ。その代表格が「家樹(かじゅ)」である。
この記事では、家樹の料金プラン、実際の評判、他社との違い、依頼前に確認すべき点を、葬祭ディレクターとして年間100件以上の遺族と接している立場から具体的に整理する。自分で作るのか、家樹に頼むのか、他社にするのか。判断材料として使ってほしい。
家樹(かじゅ)とはどんなサービスか
家樹は、株式会社家樹が運営する家系図作成の専門サービス。行政書士が戸籍収集を代行し、その戸籍情報をもとに家系図を製作して納品する、いわばワンストップ型のサービスだ。2013年頃から本格展開しており、業界の中では比較的老舗にあたる。
特徴を一言でいえば「戸籍のプロと製作のプロを一社で抱えている」こと。家系図製作会社の多くは、戸籍収集を提携行政書士に外注するか、または収集は依頼者本人にやってもらうケースが多い。家樹は自社内で完結するため、進行が早く、責任の所在も明確になる。
実際に葬儀後の相続手続きで戸籍を集めた経験がある人ならわかると思うが、明治・大正の除籍謄本は本当に読めない。くずし字と旧字体、そして「壬申戸籍」以降の書式変遷を理解しないと、家族関係の解釈すら間違える。この解読作業まで含めて依頼できるのが家樹の強みである。家系図の自作手順と無料ツール・専門家依頼の費用相場を全体像として把握したうえで比較すると、家樹の位置づけがはっきり見えてくる。
運営会社と行政書士の関与
家樹の戸籍収集は「行政書士事務所家樹」が担当する。行政書士は職務上請求という制度を使えるため、本人以外の戸籍でも正当な業務範囲内であれば請求可能だ。これは一般人が委任状なしでは絶対にできない業務で、依頼者本人が全国の役所に散らばった戸籍を追う手間から解放される。
ちなみに、家系図製作を名乗る業者の中には、戸籍収集を「代行」と称しながら実態は依頼者に自分で取ってもらっているケースもある。家樹はそこが明確に違う。契約後は戸籍取得の委任状を郵送し、あとは待つだけで進んでいく。
対応できる家系の深さ
戸籍を遡れる限界は、日本の戸籍制度上おおむね江戸末期から明治初期の生まれまで。家樹はその「限界まで遡る」を基本方針としている。プランによっては父方だけ、母方も含める、といった範囲設定が可能。私が過去に依頼した遺族のケースでは、天保生まれのご先祖まで確認できた例があった。
家樹の料金プランを詳細に解剖する
料金体系は複数プランに分かれている。公式サイトの表記をベースに、2024年時点で確認できる代表的なプランを整理する(価格は税込・改定されている可能性があるので依頼前に必ず公式で確認してほしい)。
| プラン名 | 収集する家系 | 納品物 | 料金目安 |
|---|---|---|---|
| ライトプラン | 父方のみ | 家系図1本+戸籍原本 | 約8万円台〜 |
| スタンダードプラン | 父方+母方 | 家系図2本+戸籍原本+現代語訳 | 約15万円台〜 |
| 4大祖父母プラン | 父方・母方の祖父母ライン計4系統 | 家系図4本+家系譜+装丁 | 約22〜30万円台 |
| プレミアム(家系譜つき) | 4系統+和綴じ家系譜 | 桐箱・掛軸・和綴じ本など豪華装丁 | 約40万円〜 |
ライトプランは「まず父方だけ知りたい」層に人気で、家樹の入口商品になっている。ただ、後から母方を追加しようとすると別料金になるケースがあるので、最初から両家系を検討している場合はスタンダード以上を選んだ方が結果的に安く済む。
4大祖父母プランは終活層に一番選ばれている印象だ。父の父方、父の母方、母の父方、母の母方の4系統を追うと、家族のルーツがぐっと立体的になる。私が担当した70代女性は「自分が死ぬ前に、孫に渡せるものを残したかった」と、このプランを選んでいた。
追加料金が発生する場合
戸籍収集は請求先の役所が多いほど手数料がかさむ。基本プラン内で吸収される役所数を超えた場合、1通あたり数百円の実費が別途請求される。転籍を繰り返している家系ほど戸籍数が増えるので、依頼時点で概算を確認しておきたい。
また、家系図の装丁変更(掛軸→巻物、A3→大判など)、家系譜の追加、複数部数の作成なども別途料金が発生する。私の経験上、「兄弟にもそれぞれ渡したい」と後から追加依頼する人が多いので、部数は最初から見積もっておくのがいい。
支払い方法と分割の可否
銀行振込、クレジットカード決済に対応している。プレミアムプランのような高額商品でも一括払いが基本だが、時期によって分割相談が可能なこともある。相続手続きで一時的にお金が動く時期と重なる場合、銀行口座凍結の解除手続きのタイミングも合わせて資金計画を立てておくと安心だ。
家樹の評判・口コミを本音で分析する
ネット上のレビュー、Googleの口コミ、そして私自身が担当した遺族から聞いた声を総合して整理する。評判は概ね好意的だが、注意点もある。
良い評判に多い傾向
- 戸籍収集を全部やってくれるので、平日に役所に行けない自分でも進められた
- 担当者の説明が丁寧で、家系図の見方まで解説してくれた
- 装丁が想像以上に美しく、仏壇の前に飾ってもしっくりくる
- 祖父母の名前しか知らなかったが、江戸末期の先祖まで判明して驚いた
- 認知症の父に見せたら、驚くほど記憶が呼び起こされて会話が弾んだ
特に最後の「認知症の親と一緒に見た」というエピソードは、家樹の口コミで繰り返し出てくる。過去の名前を見ると当時の記憶が蘇るという現象は、回想法という心理療法とも重なる部分があって、副次的な効果として評価されている。
気になる評判・低評価の中身
- 納期が想定より遅れた(繁忙期は3〜6ヶ月かかることも)
- 戸籍が破棄されていて予定より情報が少なかった
- 母方の情報を追加したら想定より高額になった
- 営業の連絡がやや積極的で戸惑った
納期の遅延は家樹に限らず、家系図業界全体の課題だ。役所の対応スピードは家樹側でコントロールできないうえ、コロナ禍以降は特に自治体の窓口業務が滞りがちだった。急ぎたい人は、依頼前に「いつまでに欲しいか」を明確に伝えて、間に合うかを確認するべき。私が知る限り、贈答用の記念日に間に合わせたい場合は最低半年前に動くのが安全だ。
「戸籍が破棄されていた」というのは家樹の落ち度ではない。戸籍の保存期間は法改正で150年に延長されたが、それ以前に廃棄処分されている自治体も多い。特に戦災・震災で焼失した地域は情報が途切れる。この点は依頼前の説明で必ず触れられているはずだが、期待値管理を意識しておきたい。
戸籍収集から依頼するメリット
自分で家系図を作ろうとして途中で家樹に切り替える人が、実は多い。理由はほぼひとつ、戸籍収集の壁が高すぎるからだ。この壁の中身を具体的に見てみる。
職務上請求権の存在
行政書士や司法書士は「職務上請求書」を使って戸籍を請求できる。これは一般人が直系尊属以外の戸籍を取るときに必要な委任状の代わりになる制度で、大幅にプロセスを短縮できる。家樹はこの制度を活用しているので、依頼者は委任状に署名するだけで、あとは行政書士が全国の役所を回してくれる。
自分でやるとどうなるか。まず本籍地の市区町村役場に出向くか郵送請求する。郵送の場合、定額小為替、返信用封筒、身分証コピー、請求書を揃える必要がある。1通で終わればいいが、転籍していたら次の役所へまた同じ手続き。5世代遡ると、平均10〜20通の戸籍を追うことになる。土日祝日は役所が閉まっている。有給を何日消費するか、想像すれば家樹の料金は割安に見えてくる。
旧字体・くずし字の解読
明治から大正にかけての戸籍は、行政官の手書き。文字はくずされているうえ、旧字体(渡邊、齋藤、廣岡など)が混在している。名前を1文字読み違えると家系図全体の信憑性が崩れる。家樹の製作担当は数千件の戸籍を読んできたプロなので、この解読ミスがまず起きない。
私も遺族から「祖父の名前が戸籍と位牌で違うんですが」と相談を受けたことがある。よく調べると、戸籍が旧字、位牌が新字だっただけで同一人物だった。こういう混乱を防いでくれる。
相続手続きと家系図調査の同時進行
相続手続きでは被相続人の出生から死亡までの戸籍が必ず必要になる。家樹に依頼するタイミングでこの戸籍がまとめて手に入るので、相続登記の必要書類を揃える作業と並行して進められる。相続で困っている遺族には、実務的なメリットとして大きい。
家樹と他社サービスとの比較
家系図作成会社は他にも複数存在する。代表的な業者と家樹を横並びで比べる。
| 比較項目 | 家樹 | A社(大手) | B社(低価格) |
|---|---|---|---|
| 戸籍収集代行 | ◎(行政書士社内) | ○(提携外注) | △(一部依頼者作業) |
| 4系統プラン料金 | 約22〜30万円 | 約28〜38万円 | 約15〜20万円 |
| 納期目安 | 3〜6ヶ月 | 4〜8ヶ月 | 2〜4ヶ月 |
| 装丁の選択肢 | 豊富(掛軸・和綴じ・巻物) | 豊富 | 限定的 |
| 現代語訳サービス | プランに含む | オプション | なし |
| 行政書士監修 | あり | あり | 要確認 |
家樹は真ん中の価格帯で、機能的には最上位クラスに近い、というポジション。とにかく安さを取るならB社系だが、戸籍取得の一部を自分でやる必要がある場合が多く、実質的な手間で見ると家樹の方がコスパはいい。逆に「代々続く旧家で、豪華な家系譜が欲しい」なら家樹のプレミアムか、A社の最上位プランで検討する形になる。
家系図と家系譜は似ているが目的が違う。家系図と家系譜の違いとルーツ調査を先に押さえておくと、自分がどちらを求めているのかが明確になる。
家樹に依頼する流れと必要なもの
依頼から納品までのステップを具体的に見ておく。
ステップ1:無料相談・見積もり
電話またはWebフォームから問い合わせ。家系のどこまで遡りたいか、父方だけか両家系か、装丁のイメージなどをヒアリングされる。この段階で概算料金と納期が提示される。
ステップ2:契約と委任状の郵送
契約書と職務上請求のための委任状に署名捺印。身分証明書のコピーも必要。ここで初回の支払い(着手金または一括)が発生する。
ステップ3:戸籍収集期間(1〜3ヶ月)
行政書士が全国の役所に請求。この間、依頼者は基本的に何もすることがない。時々進捗連絡が入る。地方の小さな役所や海外に本籍があった場合、時間がかかる。
ステップ4:家系図の製作(1〜2ヶ月)
収集した戸籍をもとに家系図を組み立てる。名前・生没年月日・続柄を配置し、家系譜プランなら現代語訳や家族史も併せて作成される。校正のやり取りが1〜2回。
ステップ5:納品
桐箱や掛軸に収められた家系図と、収集した戸籍原本一式が届く。戸籍原本は相続手続きにも使えるので、大切に保管しておきたい。
依頼する前に確認すべき5つの点
葬儀の現場でよくトラブルを見てきた立場から、契約前にこれだけは押さえてほしい点を挙げる。
- 納期の目安と、遅延した場合の対応(違約金や返金の有無)を書面で確認する
- 戸籍取得数が想定を超えた場合の追加料金の上限を確認する
- 戸籍が破棄・焼失で取得できなかった場合の減額規定があるか
- 親族への聞き取り調査が必要な範囲を明確にしておく(家樹は基本、戸籍ベース)
- 家系図の情報を第三者と共有する予定があるなら、著作権や複製の可否も確認
特に3番目の「戸籍が取れなかった時」の扱いは、契約時にきちんと聞いておきたい。家系図の情報量は戸籍の残り具合に大きく左右されるので、期待していた深さまで遡れないケースは実際にある。
家系図が持つ「終活資料」としての価値
家系図を、単なる系譜表として見るのは少しもったいない。私は葬儀の現場で、家系図が持つ意味を何度も目にしてきた。
ある80代の男性の葬儀で、遺族が家系図を祭壇の脇に飾った。参列した親戚たちが「この人が私のおじいちゃんの兄なんだ」「知らなかった、こんな親戚がいたんだ」と話し始め、通夜の席が家族史を語り合う時間に変わった。故人を知らない孫世代が、家系図を通じて曾祖父の存在を初めてリアルに感じている場面もあった。
エンディングノートと一緒に家系図を残しておくと、遺族が相続や法要の場面で本当に助かる。エンディングノートの書き方を参考にしながら、自分のルーツをどう次世代に伝えるか考えるのも、終活の大切な一歩だと思ってます。
先祖供養の意味でも家系図は意義がある。誰を、どんな縁でお参りしているのか。名前を知って手を合わせるのと、知らないまま手を合わせるのとでは、供養の重みが違ってくる。少なくとも、私はそう感じてます。
よくある質問
Q1. 家樹の家系図は、相続手続きに使えますか?
家系図そのものは相続手続きの公的書類として使えません。ただし、家樹が収集する戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の原本は相続手続きにそのまま使えます。相続登記や遺産分割協議で必要になる被相続人の出生から死亡までの戸籍がひとまとめで手に入るので、実務的にはかなり助かります。
Q2. どこまで遡れますか?江戸時代までいける?
戸籍制度は明治5年に始まったので、それより古い記録は戸籍からは追えません。ただ、明治初期の戸籍には江戸末期生まれの人が記載されているので、天保・弘化・嘉永あたりの生まれの先祖まで判明することが多いです。それより古い先祖を調べたい場合は、菩提寺の過去帳や旧土地台帳など別の資料調査が必要になり、これは家樹の標準プランでは対応していません。
Q3. 養子縁組や離婚歴が家系図に出るのは困るのですが
デリケートな部分は、事前に相談すれば表記を調整してもらえます。ただし、戸籍事実そのものを消すことはできません。家系図をどこまで詳細に載せるかは依頼者の希望を反映してもらえるので、契約前に「この情報は表に出したくない」と明確に伝えておくことが大切です。私も遺族から相談を受けたときは、まず全員で情報の扱いを話し合ってから発注することをすすめています。
Q4. 家系図は完成後にアップデートできますか?
新しく生まれた子どもや、後から判明した親族の情報を追記する更新サービスは家樹でも用意されています。ただし追加料金がかかり、装丁によっては書き足しが難しいものもあるので、将来の追記を想定しているなら最初から「更新しやすい装丁」を選んでおくと良いです。担当者に相談すれば具体的なプランを提案してくれます。
Q5. 自分で作るのと比べて、家樹に頼む最大のメリットは?
時間と精度、この2つに尽きます。戸籍を全国の役所から集める作業は、平日に休みを取れる人でも数ヶ月かかりますし、旧字体の解読ミスで家系図の信頼性が損なわれるリスクもあります。家樹に頼めば、書類のやり取り数回で数世代前までさかのぼった家系図が届く。時間コストと専門性を買っていると考えれば、20〜30万円という金額は十分に合理的だと思ってます。
Q6. 家樹以外に、どんな選択肢がありますか?
行政書士事務所が個別に家系図作成を受けている場合もありますし、司法書士に相続と合わせて依頼する方法もあります。また、家系図ソフト(無料・有料)を使って自作する道もあります。予算・時間・完成度のどこを重視するかで選択が分かれるので、まずは複数社の見積もりを取って比較することをおすすめします。




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