先月、80代のお父様を一人暮らしのまま亡くされたご遺族の打ち合わせがありました。倒れているのが発見されたのは、亡くなって4日後。新聞配達員さんが郵便受けの溜まりに気づいて、警察が踏み込んだそうです。娘さんは「週に1回は電話してたんです。それでも気づけなかった」と泣いておられました。
私の仕事は葬祭ディレクターなので、こういう「もう少し早く気づけていたら」という現場に毎月のように立ち会います。年間100件以上の葬儀を担当して、ここ数年で本当に増えたのが独居高齢者の孤独死です。65歳以上のひとり暮らし世帯は2024年時点で約900万世帯。10年前の1.4倍に膨らんでいます。
この記事では、見守りサービスや行政支援を18個まとめました。値段の安いセンサー型から、保健師さんが訪ねてくれる行政の制度まで全部入れてます。「親に何かあってからでは遅い」と思ったときに、どこに電話すればいいかが分かる構成にしました。
なぜ今、独居高齢者の見守りが必要なのか
厚生労働省の人口動態調査によると、2023年に自宅で亡くなった65歳以上のひとり暮らしの方は約4万人。このうち発見まで4日以上かかったケースが3割を超えてます。死後1週間以上経ってから見つかると、ご遺体の状態によっては直葬しか選べなくなることもあります。お顔を見てお別れができない、というのは遺族にとって本当に辛い記憶として残ります。
ただ、見守りが必要な理由は孤独死を防ぐためだけじゃないと感じてます。私が担当した中でも、転倒して動けず2日間床で過ごしたあと脱水で重症化したケース、認知症が進んで冷蔵庫の中身が全部腐っていたケース、そういう「亡くなる前の異変」のほうが実は多い。早期発見できれば命が助かるし、入院も短くて済みます。
以前まとめた孤独死と直葬の現実でも書きましたが、見守りの仕組みを早めに整えておくと、亡くなった後の手続きや葬儀の段取りまで含めて遺族の負担が全然違ってきます。お父様が認知症を発症する前に、地域包括支援センターと繋がっておくこと。これだけで未来が変わります。
遠距離介護の家族が抱える「3つの不安」
子どもが遠方に住んでいるケース、本当に多いです。私が打ち合わせで聞く不安は、だいたい3つに集約されます。1つ目は「倒れていたら気づけない」、2つ目は「詐欺や訪問販売に引っかかってないか」、3つ目は「火の不始末や徘徊が怖い」。この3つそれぞれに合うサービスがあります。
1つのサービスで全部カバーするのは難しいので、「センサー型+電話型+行政の訪問」みたいに組み合わせるのが現実解です。月額1万円以内で組める組み合わせを後半で紹介します。
行政が提供する見守り支援6選(無料〜低額)
まず最初に押さえてほしいのが行政の支援です。「うちの親は要介護じゃないから関係ない」と思っている方が多いですが、要支援・要介護がなくても使える制度がたくさんあります。しかも無料か数百円程度。民間のサービスを契約する前に、まずここを全部チェックしてください。
①地域包括支援センター(最重要)
独居高齢者の見守りで「まずここに電話して」と私が必ず案内するのが地域包括支援センターです。市区町村が設置している無料の総合相談窓口で、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーが常駐しています。各中学校区に1つくらいの割合で配置されていて、全国に約5400か所あります。
電話一本で職員さんが自宅訪問してくれることもあります。「離れて暮らす親が心配で」と相談すれば、その地域で使える見守りサービスを全部教えてくれます。私の経験上、ここを通すと民間サービスを単独で契約するより、自治体の補助が出るケースが多くて結果的に安くなります。
②緊急通報システム(自治体貸与)
首から下げるペンダント型ボタンを押すと、消防署や民間警備会社に通報されるシステムです。多くの自治体で65歳以上のひとり暮らしには無料か月数百円で貸与されます。私が担当した中野区在住のお母様の例だと、お風呂で転倒したときにペンダントを押して、10分で救急隊が到着。命が助かりました。
③配食サービスと安否確認
自治体が補助している配食サービスは、お弁当を手渡しすることで安否確認も兼ねています。1食300〜500円。返事がなければ事業者から自治体や家族に連絡が入ります。「食事の心配」と「見守り」を同時に解決できるので、私が遺族にもよく勧める方法です。
④民生委員の定期訪問
地域の民生委員さんは厚生労働大臣から委嘱された無償ボランティアで、独居高齢者の定期訪問が大きな役割の一つです。月1〜2回お茶を飲みに来てくれる感覚で、地域の情報も持ってきてくれます。担当の民生委員さんが誰かは、市役所の福祉課で教えてもらえます。
⑤介護予防・日常生活支援総合事業
要支援1・2の認定があれば、ホームヘルパーが週1回掃除や買い物支援に入る制度が使えます。費用は1割負担で月数千円。要支援は申請からだいたい1か月で認定が出ます。ヘルパーが来る日が「見守りの日」にもなります。
⑥認知症高齢者見守りSOSネットワーク
徘徊の心配がある方向けの自治体ネットワークです。事前に顔写真や特徴を登録しておくと、行方不明時に地域の協力機関(タクシー会社、コンビニ、銀行など)に一斉連絡が行きます。GPS端末を無料貸与している自治体も増えてます。
民間の見守りサービス12選|タイプ別比較
行政だけでカバーしきれない部分は民間サービスで補います。タイプは大きく分けて「センサー型」「カメラ型」「電話型」「訪問型」「IoT家電型」の5つ。それぞれの特徴と相場を比較表にまとめました。
| タイプ | 月額費用 | 初期費用 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| センサー型 | 1,000〜3,000円 | 0〜2万円 | プライバシー重視・自立した親 |
| カメラ型 | 2,000〜5,000円 | 1〜3万円 | 認知症の兆候・転倒不安 |
| 電話型 | 1,500〜3,500円 | 0円 | 会話で安心したい親 |
| 訪問型 | 2,500〜5,000円 | 0円 | 機械が苦手・地方在住 |
| IoT家電型 | 500〜2,000円 | 家電代 | すでにスマホに慣れた親 |
⑦セコム「ホームセキュリティ シニアプラン」
非常時にボタンを押すと警備員が駆けつけます。月額4,700円〜(買取の場合)。火災・ガス漏れセンサーも込みで、健康相談も24時間できます。値段は張りますが、「とにかく安心したい」というご家族からの評価が高いです。
⑧ALSOK「みまもりサポート」
セコムと同様の警備会社サービス。月額2,900円〜と若干安め。コントローラーに健康相談ボタンと緊急ボタンが付いていて、加齢で文字が読みにくくなった方でも分かりやすい設計です。
⑨象印「みまもりほっとライン」
無線通信機を内蔵した電気ポットで、お湯を沸かしたタイミングがメールで家族に届きます。月額3,300円。「ポットを毎日使うのは習慣だから、本人にストレスがない」というのが最大の利点。私の知り合いの娘さんが導入して「朝7時にポットの使用通知が来ると、その日の安心が違う」と言ってました。
⑩東京ガス「みまもりほっとサポート」
ガス使用量の変化を機械学習で分析して、いつもと違う使い方があると家族にアラート通知。月額1,078円とかなり安いです。新たに機器を置く必要がないので、本人に「見張られてる」感を与えないのが良いところ。
⑪パナソニック「みまもりサービス」
人感センサーを冷蔵庫やトイレに設置して、一定時間動きがないと家族のスマホに通知。月額980円。カメラじゃないのでプライバシーが守られます。導入のハードルが低く、まず試したい人に向いてます。
⑫みまもりCUBE(ラムロック)
SIM内蔵カメラで、Wi-Fi環境がない実家でも使えるのが特徴。月額2,178円。認知症の進行が心配な親に。離れていてもスマホで様子を確認できます。「親の家にWi-Fiを引くのが難しい」という地方在住の親御さんに合います。
⑬日本郵便「みまもりでんわサービス」
毎日決まった時間に自動音声で電話がかかってきて、健康状態を「1〜4」のボタンで答える仕組み。結果は家族にメール送信。月額990円。電話だけで完結するので、機械が極端に苦手な親でも使えます。
⑭ヤマト運輸「クロネコ見守りサービス ハローライト」
トイレや廊下の電球を専用のLED電球に変えるだけ。24時間点灯/消灯がないと異変として家族に通知。月額1,078円。電球を交換するだけなので工事不要で、本人は何も操作しなくていい。これが本当に画期的だと思ってます。
⑮ヤクルトレディ訪問
自治体と契約しているヤクルトレディが、週3回ヤクルトを届けながら声かけする「愛の訪問活動」。自治体経由なら無料、個人契約でも商品代のみ。会話が生まれるのが大きい。私の祖母も30年お世話になりました。
⑯郵便局「みまもり訪問サービス」
郵便局員が月1回訪問して、生活状況を10項目チェックし家族に報告。月額2,500円。全国どこでも対応できるのが強み。地方の実家に申し込めるのが他社にない優位性です。
⑰LINEみまもり
親がLINEを使えるなら、毎日のスタンプや既読を見守りツールにできます。無料。ただし「返信しなきゃ」というプレッシャーが本人の負担になることもあるので、家族間の合意形成が必要です。
⑱スマートスピーカー連携型
Amazon EchoやGoogle Nestを置いて、声かけや天気予報を流すと同時に、家族との通話ができます。本体5,000〜2万円、通話無料。「機械が話しかけてくれる」のが意外に高齢の親には新鮮で、孤独感の緩和にもつながると感じてます。
予算別・組み合わせモデルプラン
「結局どれを選べばいいか分からない」という方のために、月額予算別のモデルプランを3つ作りました。私が実際にご遺族にアドバイスしている組み合わせです。
月3,000円以下プラン(最低限)
地域包括支援センターへの登録(無料)+ 民生委員の月1訪問(無料)+ 東京ガスみまもり(1,078円)+ ハローライト電球1個(1,078円)。合計月2,156円で、ガス使用とトイレの電気使用という「絶対に毎日やること」を2系統で見守れます。
月5,000円プラン(標準)
上記に加えて、配食サービスを週3回(自治体補助で1食400円×12回=4,800円)。食事の心配と見守りを同時に解決できる「コスパ最強」の組み合わせです。多くのご家族にお勧めしてます。
月1万円プラン(手厚い)
セコムまたはALSOK(4,700円)+ 配食週5回(自治体補助で約8,000円)+ 郵便局訪問月1回(2,500円)。緊急ボタン、毎日の食事確認、対面訪問の3層で守る形です。認知症の心配が出始めた親に。
見守りサービスと並行してやるべき「もしもの備え」
正直に言うと、どれだけ見守っても、人はいつか亡くなります。私の現場感覚としては、見守りサービスは「孤独死を防ぐ」というより「異変に早く気づいて、適切な看取りに繋げる」ためのものだと思ってます。だから、見守りと同時に「亡くなった時の備え」も少しずつ進めておくのがベストです。
エンディングノートの共有
親が元気なうちにエンディングノートを書いてもらって、保管場所だけ家族に伝えておく。預金口座、保険、お葬式の希望、誰に連絡してほしいか。これがあるかないかで、亡くなった後の家族の負担が10倍違います。
葬儀社の事前相談
地元の葬儀社に1社、事前相談だけしておく。費用がいくらかかるか、深夜でもどう連絡すればいいか、これを聞いておくだけで本当に楽になります。葬儀の準備チェックリストに、生前にやっておくべき項目を全部まとめてあります。
死後事務委任契約(特におひとりさま)
子どもがいない、頼れる親族もいない、というおひとりさまの場合は、行政書士や司法書士に死後事務委任契約を結んでおくのが必須です。葬儀・納骨・各種手続きを代行してくれます。費用は50〜100万円ですが、生前にお金を預けておけば確実に実行されます。
緊急時連絡先のステッカー
冷蔵庫や玄関に「緊急時連絡先」と書いたメモを貼っておく。救急隊員が来たとき、家族の電話番号がすぐ分かることで初動が早くなります。自治体によっては「救急医療情報キット」を無料配布していて、冷蔵庫に入れておくと救急隊が見つけてくれます。
親に「見守りを受け入れてもらう」ための話し方
サービスを選ぶより難しいのが、親本人に「見守りを使う」と納得してもらうことです。「自分はまだ大丈夫」「監視されたくない」と拒否されるケース、本当に多いです。私が遺族や知人から相談されたとき、いつも伝えているコツを書きます。
「親のため」ではなく「自分のため」と伝える
「お母さんが心配だから」と言うと、親は「子ども扱いするな」と反発します。代わりに「私が安心したいから、お願いだから付き合って」と頼む。これだけで受け入れ率が全然違います。親は子どもに迷惑をかけたくない、という気持ちが強いんです。
最初は1つだけ、ハードル低いものから
いきなりカメラを置こうとすると拒否されます。最初はガスのみまもりとか、ハローライト電球とか、親が「何も変わらない」と感じるものから。半年使って「便利だね」と思ってもらってから、次のサービスを足していく。
地域包括の保健師さんから話してもらう
家族が言うと反発する話も、第三者の専門職から言われると素直に聞く、というのが親世代の特徴です。地域包括支援センターの保健師さんに「最近ご近所でこういう制度を使い始めた方が増えてますよ」と話してもらうと、すんなり受け入れることが多いです。
よくある質問
Q1. 親が要介護認定を受けていません。見守りサービスは使えますか?
はい、使えます。地域包括支援センターの相談、緊急通報システム、民生委員の訪問、配食サービスは要介護認定がなくても利用できる自治体が多いです。民間サービスは全て要介護認定不要です。まずお住まいの市区町村の高齢者福祉課に電話して、「ひとり暮らしの親の見守りで使える制度を教えてください」と聞くのが早道です。
Q2. カメラを置くのは抵抗があります。プライバシーを守れるサービスはありますか?
あります。むしろカメラなし型のほうが種類が豊富です。ガス使用量モニター、電気ポット、トイレの電球、人感センサーなど、映像を一切撮らずに「生活してるかどうか」だけを検知するものを選べばいいです。私の経験上、カメラ型を入れたい家族と入れたくない親、で揉めるケースが本当に多いので、最初はカメラなしから始めることをお勧めします。
Q3. 親が亡くなった後、見守りサービスが異変を検知してから家族が駆けつけるまでに何時間かかりますか?
センサー型なら12〜24時間以内に検知、警備会社が駆けつける契約なら検知から30分以内に現地確認、という流れが標準です。家族が遠方の場合、警備会社の駆けつけサービスを付けておくのが現実的です。検知の後、警察立ち会いのもとで部屋を開けて確認するため、契約時に「合鍵を警備会社に預けるか、玄関のキーボックスを置くか」を決めておきます。
Q4. 見守りサービスを使っていて亡くなった場合、葬儀の手配はどうなりますか?
見守りサービスが異変を検知すると、警備会社や事業者から家族に連絡が入ります。家族が現地に向かう間に、必要なら救急車の手配もしてくれます。亡くなっていた場合は警察検視が入り、その後葬儀社に連絡する流れです。自宅で家族が亡くなった時の対応に詳しい手順を書いてあるので、見守りサービスを契約する前に一度読んでおいてください。
Q5. おひとりさまで、頼れる家族がいません。それでも見守りは使えますか?
使えます。通知先を家族ではなく、地域包括支援センターやケアマネジャー、契約した行政書士に設定できます。さらに死後事務委任契約とセットで備えておけば、亡くなった後の手続き・葬儀・納骨まで委ねられます。遺贈寄付のやり方と遺言書の書き方と合わせて、おひとりさまの終活パッケージとして検討するといいと思ってます。
Q6. サービスを契約してから、親が施設に入ることになりました。解約は簡単ですか?
ほとんどのサービスは1か月前の連絡で解約できます。ただしセコム・ALSOKなど機器買取型の場合、買い取った機器の返却は不要ですが、機器代の返金もありません。契約前に「最低契約期間」と「中途解約金」を必ず確認してください。3年縛りのプランは違約金が3〜5万円かかるケースがあります。
最後に:見守りは「愛情の形」のひとつ
葬祭ディレクターとして20年現場にいて、孤独死の現場を何度も見てきました。発見が遅れて、お顔がきれいに残らず、棺に納める前に閉じざるを得ないケース。そのたびに「もっと早く何かできたんじゃないか」と遺族が自分を責めるのを見てきました。
見守りサービスは、親を監視する道具じゃなくて、親を大切に思う気持ちを形にする手段だと思ってます。月1,000円の電球ひとつでも、それは「あなたが今日も生きていることが、私の安心です」というメッセージになる。そういう温度感で選んでもらえたら嬉しいです。
まずは明日、地域包括支援センターに電話してください。電話番号は「お住まいの市区町村名+地域包括支援センター」で検索すればすぐ出ます。1本の電話から始まる安心が、きっとあります。




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