先月、深夜2時に呼ばれた総合病院の霊安室。ご主人を看取ったばかりの60代の奥様が、震える手でスマホを握りしめて「家の車で連れて帰ってもいいですか」と看護師さんに聞いていた。看護師さんは困った顔で「それはちょっと…」と言葉を濁す。私が到着したのは、その30分後。
こういう場面、20年やってきて数え切れない。年間100件以上のご葬儀を担当してきた中で、病院からの搬送は全体の8割以上を占める。そして遺族の9割以上が「自分の車で連れて帰れるのか」を最初に聞いてくる。
結論から言うと、法律上は自家用車での搬送は禁止されていない。ただ、現実的にはほぼ不可能に近い。理由は3つあって、どれも遺族の負担につながる話。この記事では、病院で家族を看取った直後、何をどの順番でやればいいのか、業界の中の人間として本音で書きます。
この記事の要点
- 遺体搬送は法律上、自家用車でも可能だが、死亡診断書の携行・遺体固定・時間制限などの制約で現実的には寝台車利用がほぼ必須
- 病院指定の葬儀社に搬送を頼むと、そのまま葬儀契約まで流れやすい。搬送だけ依頼して、葬儀社は別で選ぶことは可能
- 寝台車の相場は10kmまで1万5千円〜2万円、深夜早朝は5割増し。距離加算は1kmあたり500〜800円が目安
- 病院を出るまでの平均滞在時間は逝去後2〜3時間。この間に安置先の決定・搬送手配・エンゼルケアが並行して進む
- 搬送業者は「一般貨物自動車運送事業」または「霊柩運送」の認可が必要。認可なしの業者に頼むと違法搬送になる
自家用車で遺体を運ぶのは違法ではない、でも現実的じゃない
まず結論。自家用車で家族の遺体を搬送するのは、日本の法律では違法ではありません。「墓地、埋葬等に関する法律」でも、道路運送法でも、家族が自分の車で運ぶこと自体を禁じる条文はない。営業として遺体を運ぶ場合は霊柩運送の認可が必要だが、家族が無償で運ぶ分には制限がない。
ただ、20年この仕事をやってきて、実際に自家用車搬送を選んだご家族は50件もない。それだけ現実の壁が高い。
壁1:遺体を寝かせられる車がほとんどない
成人男性の身長は平均170センチ前後。棺なしで運ぶとしても、遺体は完全に水平にしないと関節が曲がってしまう。座らせて運ぶのは絶対にダメ。硬直が始まると元に戻せなくなる。
普通のミニバンでも、後部座席を全部倒しても長さが足りないケースが多い。ハイエースやキャラバンのようなワンボックスなら物理的には可能だが、それでも遺体を固定するベルトや、体液漏れを防ぐ処置がないと途中で大惨事になる。3年前、軽ワゴンで奥様を運ぼうとして途中で警察に止められたご主人がいて、結局私たちが呼ばれて対応した。
壁2:死亡診断書を必ず携帯する必要がある
遺体を運ぶ時、死亡診断書(または死体検案書)を必ず一緒に持たないといけない。これがないまま搬送していて職務質問を受けると、事件性を疑われて長時間拘束される可能性がある。
実際、令和2年の秋、深夜に軽トラで祖父を運んでいた40代のご遺族が、パトカーに止められて2時間ほど事情聴取された事例が同業から聞こえてきた。書類はあったが、遺体を毛布だけで覆っていたため、事件性を疑われたそう。書類の準備と、遺体を隠さず堂々と運ぶことの両方が必要になる。
壁3:体液漏れとドライアイスの問題
遺体は逝去後30分から1時間で、口や鼻から体液が出てくることがある。これは自然な現象で、病院で処置(エンゼルケア)をしてもらっても完全には防げない。寝台車には防水シートと吸水パッドが常備されているが、自家用車にはない。シートに染み込むと、匂いや衛生面で長期的な問題が残る。
それでも「どうしても自分の車で」という方には、私は正直にリスクを伝えたうえで、以下の準備をお願いしている。防水シート2枚重ね・大判のペット用おむつ数枚・タオル10本以上・ドライアイス5kg分。これでも夏場の長距離(1時間以上)は避けたほうがいい。
病院で亡くなってから搬送までの時間軸
臨終から病院を出るまで、平均で2〜3時間かかります。この時間、遺族は「何をすればいいのか分からない」と感じることがほとんど。実際の流れを時系列で書きます。
逝去直後の30分:医師の死亡確認とご家族の時間
医師が死亡を確認し、死亡診断書を書き始めるまでの間、ご家族はご遺体のそばで最後の時間を過ごせる。ここは急かされない。私が現場に到着するまでの間も、この時間はできるだけ大切にしてほしいと看護師さんにお願いしている。
この30分の間に、ご家族の中で1人だけ動ける方を決めておくと後がスムーズ。喪主になる方が動くのが理想だけど、悲しみで動けないことも多い。その場合、少し離れた立場の甥や姪、婿など、心の余裕がある方が電話係を担当することが多い。
30分〜1時間:エンゼルケアと搬送先の決定
病院の看護師さんがエンゼルケア(死後処置)を始める。体を清め、着替えをさせて、鼻や口に脱脂綿を詰める。この間、家族は待合室や個室に移動する。所要時間は40分〜1時間ほど。
この間に、搬送先を決める必要がある。自宅に安置するのか、葬儀場の安置室に運ぶのか。マンションでエレベーターが小さくて棺が入らない、近所への配慮で自宅は避けたい、といった理由から、8割以上のご家族は葬儀場の安置室を選ぶ。私が担当した中でも、令和5年の1年間で自宅安置は13件、施設安置は78件だった。
この時、[初めて喪主を務める方向けの葬儀の基礎ガイド](https://sougi-shigoto.info/first-time-moshu-manual-funeral-basics/)を事前に読んでおくと、選択肢の全体像が見えて判断が早くなる。
1時間〜2時間:搬送業者への連絡と到着待ち
搬送業者に電話してから、到着まで平均40分〜1時間。都市部だと30分で来ることもあるし、地方の深夜だと1時間半かかることもある。この時間、ご家族はまた待合室で待つことになる。
この時間帯、みんな不思議と喉が渇く。看護師さんが気を利かせて、お茶を出してくれることが多い。深夜だと自販機のペットボトルを買いに行くことも。ふとした瞬間に、涙が出たり、逆に笑い話が出たりする。そういう時間だと思ってほしい。
寝台車の相場と料金の内訳
寝台車の料金は、業者によってバラつきがあるけど、20年見てきた中での相場感を書きます。ここは事前に知っておくと、法外な料金を請求された時に気づける。
| 項目 | 相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 基本料金(10kmまで) | 1万5千円〜2万円 | 寝台車の出動費込み |
| 距離加算(10km超) | 1kmあたり500〜800円 | 片道分のみ |
| 深夜早朝割増(22時〜翌6時) | 基本料金の30〜50%増 | 業者により差あり |
| ドライアイス | 1回8千円〜1万2千円 | 10kg分。3日程度もつ |
| 付き添い(1名) | 0円〜3千円 | 助手席に家族1名まで無料が多い |
| 階段運搬費(2階以上) | 3千円〜5千円/階 | エレベーターなしの場合 |
病院から自宅または葬儀場まで10km以内なら、深夜割増込みで2万5千円〜3万円が目安。これに数日分のドライアイスとエンゼルケア代を足すと、初期費用は5万円前後になる。
気をつけたいのは、この搬送費が葬儀費用に含まれるのか、別請求なのか。「一式10万円」といった格安プランの場合、搬送費が別途請求になっているケースが多い。契約前に必ず内訳を確認する必要がある。[格安葬儀のからくりを詳しく解説した記事](https://sougi-shigoto.info/cheap-funeral-mechanism-truth/)も参考にしてほしい。
深夜料金の落とし穴
深夜早朝の割増は業者ごとに差が大きい。良心的な業者は基本料金の30%程度、良くない業者は基本料金を2倍以上にしてくる。しかも、遺族は疲れ切っていて、その場では気づかない。請求書を後日見て「え、こんなに?」となる。
私が担当した2022年の事例で、A社に頼んだご遺族が、8kmの搬送で7万8千円請求されたケースがあった。相場の3倍以上。深夜だったのと、階段運搬の追加、ドライアイス2回分などが積み重なった結果だと後で分かった。契約書はサインしていたので支払わざるを得なかった。
病院指定の葬儀社は断っていい
ここが一番大事。多くの病院には、提携している葬儀社(いわゆる指定業者)がある。逝去後、看護師さんが「うちで提携している業者さんがいますので、ご連絡しましょうか」と聞いてくることがほとんど。
これは断っていい。断ったからといって、病院での対応が悪くなることはない。看護師さんは業務としてお伝えしているだけで、どこを選ぶかはご家族の権利。
なぜ指定業者を選ばないほうがいいのか
指定業者が悪いわけじゃない。ただ、以下の3つの理由で、慎重に判断してほしい。
1つ目。指定業者は病院に月10万円〜30万円程度の紹介料を払っていることが多い。この費用は最終的にご遺族の葬儀費用に上乗せされる。同じ内容の葬儀でも、指定業者経由だと総額で15〜20%高くなる傾向がある。私が業界に入って3年目、上司から「指定業者ルートは利益率が良い」と教わった時、正直複雑な気持ちだった。
2つ目。搬送だけを依頼したつもりが、そのまま葬儀契約まで話が進んでしまうケースが本当に多い。搬送車に同乗した営業担当が、深夜の疲れ切ったご家族に見積書を出して「今決めていただければ」と迫る。判断力が落ちている時に大きな契約をするのは危険。
3つ目。他社との比較検討ができなくなる。搬送してもらった業者に「やっぱり別の葬儀社にします」と言うのは、心理的にすごくハードルが高い。人情としても「運んでもらったし」と義理を感じてしまう。だから、搬送と葬儀は最初から分けて考えるほうがいい。
断り方の実際の言葉
看護師さんに「指定の業者さんをお呼びしますか」と聞かれた時の断り方。難しく考えなくていい。
「ありがとうございます。以前から相談していた葬儀社があるので、そちらに連絡します」。これで十分。「相談していた葬儀社」は、その場で決めてもらってOK。ネットで「地域名+葬儀社」で検索して、口コミの良さそうなところに電話すればいい。24時間対応の会社がほとんど。
もし葬儀社が全く決まっていない場合は、搬送だけを別業者に依頼するのも手。「搬送だけお願いしたい」と最初に電話口で伝える。まともな業者なら、搬送のみでも快く受けてくれる。搬送料金は先ほどの表の相場通りで、葬儀契約は別途ゆっくり考えられる。詳しくは[葬儀社の手配手順と選び方の記事](https://sougi-shigoto.info/funeral-company-tehai-hospital-shitei-kotowari/)で書いています。
搬送業者の認可を確認する方法
営業として遺体を搬送するには、国土交通省の「一般貨物自動車運送事業」の認可が必要。これがない業者は違法営業で、事故があっても補償されない。
ちゃんとした業者かどうかを見分ける方法は3つ。1つ目、寝台車のナンバープレートが「緑ナンバー(事業用ナンバー)」であること。白ナンバーは自家用扱いで、営業搬送に使うと違法。2つ目、車体に会社名と電話番号が明記されていること。3つ目、電話で「認可番号を教えてください」と聞いた時にすぐ答えられること。
2019年頃から、SNSで低価格を謳って白ナンバーで搬送する違法業者が問題になっている。特に地方都市で見かける。基本料金5千円とか、破格の設定に注意してほしい。事故時に保険が効かず、遺体に傷がついても補償ゼロというリスクがある。
遠方搬送(自宅が県外の場合)
単身赴任先で亡くなった父親を故郷に運びたい、旅行先で亡くなった祖母を自宅に戻したい。こういう遠方搬送の相談も、年に10件以上受けます。
目安として、片道300km以上の距離は「陸送」か「空輸」の選択になる。陸送(寝台車)なら1kmあたり600〜800円の距離加算で計算するので、東京から名古屋(約350km)だと料金は25〜30万円ほど。深夜割増を含むと35万円になることも。
空輸は棺に納棺した状態で貨物として飛行機に載せる。羽田-福岡で25〜35万円ほどが相場。ただし、飛行機会社ごとに手続きと時間帯の制約があり、実際に飛ばせる便が1日1〜2便に限られる。故郷の空港からさらに寝台車で移動する費用も別途かかる。
去年の12月、静岡の病院で亡くなった70代の男性を、ご遺族の故郷である青森まで陸送したケースがあった。距離約900km、深夜割増込みで68万円だった。ドライアイスは途中で1回追加補充。運転手2名が交代で運転し、途中で3回休憩を挟んで約15時間かけて到着。ご遺族には「金額は覚悟していたけど、故郷で送り出せて本当に良かった」と言っていただいた。
自宅安置か施設安置か、判断のポイント
搬送先を決める際、多くのご家族が迷うのが自宅安置か葬儀場の安置室か。これは家の間取り・宗教・近所付き合い・ご家族の希望が絡む話。
自宅安置を選ぶメリット
故人が最後に慣れ親しんだ空間で過ごせる。これが一番大きい。ご家族も好きな時にそばに寄れる。孫たちが自由に「じいちゃん、ばあちゃん」と話しかけられる時間は、施設ではなかなか作れない。
費用面でも、施設の安置室利用料(1日1万円〜2万円)がかからない。3日間安置するだけで3〜6万円の差が出る。
自宅安置のハードル
マンションだとエレベーターに棺が入るか要確認。ストレッチャーの状態で運び込むとしても、廊下の幅や玄関の間口によっては物理的に無理なケースがある。実際、私が担当した中でも「エレベーターに入らず、階段で6階まで運んだ」ケースが1件だけあった。あれは搬送担当者2人がかりで大変だった。
あとは、ドライアイスの補充。1日1回、寝台車業者が来て交換する。この時、部屋のスペースと出入りの動線が確保されている必要がある。夏場は特に、エアコンをつけっぱなしにする電気代も気になる。
詳しくは[自宅で遺体を安置する時の準備手順](https://sougi-shigoto.info/itai-jitaku-anchi-junbi-hoireizai-koukan/)にまとめました。保冷剤の交換頻度や部屋の温度管理まで具体的に書いています。
搬送前後で必ずやっておくこと
搬送の前後で、遺族側でやっておくべき実務的なことをまとめます。
- 死亡診断書のコピーを2〜3枚取っておく(役所提出・保険手続きで複数枚必要)
- 故人の身の回り品を整理し、貴金属や現金は必ず家族が持ち帰る
- 入院費の精算(病院によっては当日精算を求められる)
- ペースメーカーや義歯の有無を搬送業者と葬儀社に伝える(火葬時に必要な情報)
- 喪主候補と近しい親族に第一報の連絡(詳細は後日でOK)
死亡診断書は本当に大事。役所への死亡届提出、生命保険請求、年金手続き、銀行口座手続きなど、あちこちで原本またはコピーを求められる。原本は死亡届提出時に役所に取られてしまうので、事前にコピーを取っておかないと後で困る。3年前、原本を提出してしまってからコピーを取り忘れたことに気づき、病院に再発行を依頼した(1通5千円)ご遺族がいた。この手間は避けたい。
死亡後の手続き全般については[親が亡くなった後の手続きチェックリスト](https://sougi-shigoto.info/parent-death-procedures-checklist-deadline/)にまとめてあります。7日以内・14日以内といった期限順に整理してあるので、動きやすいはず。
検視・検案が必要になるケース
病院で亡くなった場合、通常は主治医が死亡診断書を書く。ただし、以下のケースでは警察による検視や検案が必要になり、搬送のタイミングが遅れる。
- 入院期間が24時間以内で、担当医が死因を特定できない
- 持病があっても、直接の死因が明らかでない
- 事件性の疑いがある(転倒による頭部外傷など)
- 薬物・アルコールの関与が疑われる
この場合、検視・検案が終わるまで(平均4〜8時間)、遺体は病院に留め置かれる。搬送は検案書が出てから。ご遺族としては待つしかないが、この時間を使って安置先の準備や親族への連絡を進めるといい。
自宅で亡くなった場合の警察対応については[自宅で家族が亡くなった時の対応](https://sougi-shigoto.info/home-death-police-ambulance-kenshi-flow/)に詳しく書いてあります。病院内で亡くなったケースとは対応が違うので、念のため知っておくと安心。
搬送業者を選ぶ時のチェック項目
電話一本で来てくれる業者だからこそ、事前の選び方が大事。以下、私が同業として推奨するチェック項目です。
| チェック項目 | 確認方法 | ダメな例 |
|---|---|---|
| 認可の有無 | 電話で認可番号を聞く | 「番号は分からない」と濁す |
| ナンバープレートの色 | 到着時に緑ナンバーか確認 | 白ナンバーで来る |
| 料金の内訳明示 | 電話口で総額と内訳を聞く | 「後で説明します」で明示なし |
| 搬送のみ対応可か | 「搬送だけで契約できるか」を確認 | 「葬儀契約とセット」を強要 |
| 営業車両の状態 | 到着時の車両を目視 | 汚れ・へこみ・寝台の劣化が目立つ |
| スタッフの服装と挨拶 | 到着時の第一印象 | 私服・無言・雑な運搬 |
特にスタッフの服装と挨拶は、その会社の教育レベルがそのまま出る。きちんとした会社は、深夜でも黒スーツで来て、ご家族に深々と一礼する。以前、うちの会社の新人研修で「深夜3時でも眠そうな顔をするな。それがご遺族への最低限の礼儀だ」と繰り返し教えた。
よくある質問
現場でよく聞かれる質問をまとめます。
Q1. 病院から搬送するタイミングは自分で決めていい?
基本的にはご家族の意向で決められる。ただし、病院の霊安室に長時間留め置くのは病院側の都合で難しい。多くの病院は逝去後2〜3時間以内の搬送を求めてきます。エンゼルケア終了から1時間以内が現実的な目安。もし家族の到着を待ちたい場合は、看護師長さんに事情を説明して相談してみるといい。私の経験では、身内が飛行機で駆けつける場合など、事情があれば5〜6時間の延長を認めてくれる病院が多い。
Q2. 搬送中に遺族は同乗できる?
寝台車の助手席に、家族1名まで同乗できるのが一般的。ご主人を運ぶ時は奥様が、母親を運ぶ時は喪主となる長男が、といった形。それ以上の人数は、別の車で追いかけてもらう形になる。深夜の同乗は、ご家族にとって精神的にきつい時間だけど、故人を1人にしたくないという気持ちで乗られる方が7割以上。運転手さんも、その気持ちを察して静かに運転してくれる。
Q3. 搬送業者と葬儀社が違っても大丈夫?
全く問題ない。むしろ推奨したい。搬送業者に「まだ葬儀社は決まっていないので、搬送だけお願いします」と最初に伝えれば、搬送後の営業行為は控えてくれる業者がほとんど。安置先を葬儀場ではなく自宅にすれば、翌日以降にゆっくり葬儀社を選べる時間ができる。この「1日置く」余裕が、後悔しない葬儀選びにつながる。事前相談のコツについては[失敗しない葬儀社の選び方](https://sougi-shigoto.info/funeral-company-selection-consultation-estimate/)も参考にしてほしい。
Q4. ペースメーカーが入っている場合、搬送で何か違いがある?
搬送そのものには影響ない。ただし、火葬時にペースメーカーの電池が破裂する危険があるため、事前に必ず葬儀社と火葬場に伝える必要がある。搬送業者にも伝えておくと、後の連携がスムーズ。「ペースメーカーあり」と申告書に書く欄がある。他にも、義歯・人工関節・シリコン材質のものが体内にあると、火葬時に配慮が必要になる。逝去時に病院で確認しておくのが理想。
Q5. 深夜に亡くなった場合、朝まで待って搬送してもらえる?
病院との相談次第。総合病院で霊安室に空きがあれば、朝6時頃までは待ってもらえることが多い。ただし、朝の看護師交代のタイミング(6時半頃)までには出てほしいと言われる。深夜割増を避けたい気持ちは分かるけど、朝まで待つと病院の霊安室使用料(1時間5百円〜千円程度)がかかる場合もある。トータルでは深夜搬送のほうが安く済むケースもあるので、病院に霊安室の料金を確認したうえで判断するといい。
Q6. 搬送費が想定より高額請求された時の対処法は?
まず、事前の口頭見積もりと請求書の内訳を照らし合わせる。深夜割増・階段運搬費・ドライアイス追加分など、明細を1つずつ確認。納得できない項目は「これは事前に説明を受けていませんが」とはっきり伝える。良心的な業者なら、後から追加された項目については謝罪して減額してくれる。それでも折り合いがつかない場合は、国民生活センター(消費者ホットライン188)に相談する。搬送業界は認可事業なので、悪質な料金請求は行政指導の対象になる。
最後に:搬送は「最初の別れの儀式」
ここまで実務的な話ばかり書いてきたけど、最後に業界の中の人間として伝えたいことがある。
搬送って、法律や料金の話だけじゃない。故人が最後に病院を出て、次の場所へ移る、大切な移動なんです。私が現場で心がけているのは、この搬送の30分〜1時間の間、ご家族が「まだ一緒にいる」と感じられる時間にすること。急かさない、事務的にしない、そばで一緒にゆっくり歩く。
20年やってきて、たくさんのご家族を見送ってきた。中には「病院を出る時の車の中で、初めて涙が止まらなくなりました」という奥様がいた。ずっと気を張って看病されていた方だった。寝台車の助手席で、ご主人の名前を呼びながら、ずっと泣いていた。その時間があったから、次の日からの葬儀の打ち合わせに集中できたと後で仰っていた。
自家用車で運ぶか、寝台車を頼むか。指定業者にお願いするか、別の会社を選ぶか。どれが正解ということはない。ただ、判断する時に「金額」だけじゃなく、「故人と過ごす最後の時間」という視点も持ってほしいと思ってます。悲しみで動けなくなった時、遠慮なく葬儀の専門家を頼ってほしい。うちのような小さな葬儀場でも、24時間電話は必ず受けている。それがこの仕事の役目だと思ってやってます。




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