先週末、担当しているお客様から「母のお墓参りに行くんだけど、菊以外って本当にダメなの?」という電話をいただきました。お母様が生前バラが大好きで、命日くらいはバラを供えてあげたい、と。私はその場で「全然大丈夫ですよ、お母様の好きだった花が一番喜ばれます」とお答えしました。
葬祭の現場で20年仕事をしていると、こういう質問は本当に多いんです。お墓参り=白い菊、というイメージが強すぎて、皆さん花選びで固まってしまう。でも実際の現場では、もっと自由で、もっと故人らしい花が選ばれています。今日は、私が普段お客様にお伝えしている「お墓参りの花の選び方」を、現場の本音と一緒にまとめます。
結論から言うと、菊以外の花でも全く問題ありません。大事なのは「故人を思う気持ちが伝わる花」を選ぶこと、そして「迷惑にならない花」を避けること。この2つだけ押さえれば、季節の花でもバラでもユリでも、安心して供えられます。
そもそも、なぜお墓参りといえば菊なのか
菊がお供えの定番になった理由は、はっきりしています。日持ちが良いから。これに尽きます。葬儀社の現場でも、祭壇の生花は8割が菊系で組まれます。理由はシンプルで、5日経っても見た目が崩れないんです。お墓に供えた花は誰も水替えしてくれないので、長持ちする花が選ばれてきた、というだけの話。
もう一つは香り。菊は香りが強すぎず、虫を寄せにくい性質があります。墓地は屋外ですから、甘い香りの花は虫が集まってしまう。これも実用的な理由です。
そして仏教的な意味合い。菊は古くから邪気を払う花とされてきて、平安時代から仏前花として使われてきました。皇室の紋章にもなっているくらい、日本人にとっては「格のある花」です。ただ、これは「菊じゃないとダメ」という意味ではなくて、「菊なら間違いない」という安心感の話。
うちのお客様で90代のおばあちゃんがいて、毎月ご主人のお墓に行くんですけど、いつもご主人が好きだったコスモスを摘んで持っていくそうです。「お父さん、菊より野の花が好きだったから」と。これが本当の供養だと、私は思ってます。
菊以外でも安心して供えられる花
では具体的に、菊以外でどんな花が選ばれているか。現場で実際によく見る花を挙げます。まず通年で人気なのがカーネーション。花持ちが良くて、色のバリエーションも豊富。母の日のイメージが強いですが、お墓参りでも全く問題ありません。私自身、母のお墓には必ずピンクのカーネーションを入れています。
リンドウも夏から秋にかけて定番です。青紫の落ち着いた色合いが墓前によく合います。トルコキキョウも同様で、フリルのある花びらが上品で、最近の若い方のご家族にも人気。スターチスは紫やピンクの小花が密集していて、ドライフラワーのように長持ちするので、夏場のお墓参りには特におすすめです。
季節の花を取り入れたい方には、春なら菜の花やストック、夏ならヒマワリやケイトウ、秋はリンドウやコスモス、冬は水仙やストック。故人が好きだった花を季節に合わせて選ぶと、お墓参りの時間そのものが豊かになります。
バラやユリは本当にダメ?
これも本当によく聞かれます。結論、ダメではありません。ただ、注意点があります。バラはトゲがあるので、そのまま供えると掃除のときにケガをする恐れがあります。トゲを取ってから供えれば全く問題なし。私のところでは「トゲを取って、短めに切って供えてくださいね」とお伝えしています。
ユリは香りが強いので、隣のお墓のことを考えると大輪のカサブランカは少し気を使うところ。スカシユリのような香りの控えめな種類なら、墓前にもしっくり馴染みます。色は白やピンクが無難。真っ赤なバラやユリは、お祝い事のイメージが強いので避ける方が多いです。
供えてはいけない花・避けたい花
逆に、これは避けた方がいい、という花もあります。一番気をつけてほしいのは毒性のある花。代表的なのが彼岸花、スイセン、スズラン、アジサイです。これらは花や球根に毒があって、子どもや動物が触れると危険。墓地は誰でも入れる場所なので、毒性のある花は供えない、というのが基本マナーです。
同じく避けたいのが、トゲのある花をそのまま供えること。バラはトゲを取れば大丈夫ですが、アザミなどは扱いにくいので避けるのが無難。ツル性の植物(アサガオ、クレマチスなど)も、墓石に絡んだり倒れたりするので向きません。
香りが強すぎる花も避けたほうがいい。ジャスミンやクチナシ、フリージアなどは、自宅の仏壇なら良くても、屋外の墓地では虫を呼び寄せます。隣の区画にも影響するので、配慮が必要です。なお、仏壇のお供えで定番の樒(シキミ)も、葉に毒性があります。樒の扱いについては、樒(シキミ)の意味と供え方で詳しく解説しています。
そしてもう一つ、散りやすい花。椿は花首からポトッと落ちるので、縁起が悪いとされてきました。最近はあまり気にしない方も増えていますが、年配のご親族がいる場合は避けたほうが無難です。
花の組み合わせ方と本数の基本
お墓参りの花は、左右一対で供えるのが基本です。お墓には花立てが左右に2つあるので、同じ内容の花束を2束用意します。これは見た目のバランスもありますが、仏教の「対」の考え方からきています。
本数は奇数が基本。3本、5本、7本のいずれかで一束を組みます。偶数は「割り切れる=縁が切れる」を連想させるため、慶弔の場では避けられてきました。ただし、これも厳格なルールではなく、花屋さんで「お墓参り用に」とお願いすれば、自然と奇数で組んでくれます。
色の組み合わせ
四十九日までは白を基調にした花が一般的です。白の菊、白のカーネーション、白のトルコキキョウなど。グリーンを少し入れると寂しくならない仕上がりになります。
四十九日を過ぎたら、色のある花を入れても問題ありません。仏花の伝統的な「五色(白・黄・赤・紫・ピンク)」を意識して組むと、見た目も華やかで仏教的にも整います。私のお客様には「故人の好きだった色を中心に、白を1〜2本添える」という組み方をおすすめしています。
| 時期 | 色の目安 | おすすめの花 |
|---|---|---|
| 四十九日まで | 白基調+グリーン | 白菊、白カーネーション、トルコキキョウ |
| 一周忌頃まで | 白+淡い色 | ピンクカーネーション、淡紫リンドウ |
| 三回忌以降 | 五色を意識 | 季節の花、故人の好きだった花 |
| お盆・お彼岸 | 華やかでOK | リンドウ、ケイトウ、トルコキキョウ |
| 命日 | 故人の好み優先 | 生前好きだった花 |
夏場でも花を長持ちさせる5つのコツ
夏のお墓参りで一番悲しいのは、翌週見に行ったら花がカラカラに枯れていたとき。お盆に供えた花が、お盆明けには茶色くなっている。これを少しでも防ぐコツを、現場の知恵としてお伝えします。
1つ目、花を買ったらすぐに「水切り」をする。茎の先を斜めに切ることで、水を吸い上げる断面が広がります。お墓に行く直前に切ると効果的。包丁でもハサミでも構いません。切ってすぐに水に浸けることが大事です。
2つ目、花立てに「10円玉を1枚入れる」。銅イオンには雑菌の繁殖を抑える働きがあって、水が腐りにくくなります。これは祖母から教わった裏ワザですが、本当に効きます。100円ショップで売っている延命剤を入れるのも有効。
3つ目、水に浸かる部分の葉は全部取る。葉が水に浸かると一気に水が腐ります。茎の下3分の1の葉は、買ったらすぐに全部むしり取ってください。これだけで花の持ちが2〜3日違います。
4つ目、花立ての水を満タンにする。夏場は蒸発も早いので、ギリギリまで水を入れておく。最近は、墓地に行く前に2リットルのペットボトルに水を入れて持参される方も多いです。蛇口が遠いお墓では本当に重宝します。
5つ目、暑さに強い花を選ぶ。スターチス、ケイトウ、菊、カーネーション、リンドウは夏場でも比較的長持ちします。逆にバラ、ユリ、ガーベラは夏場は持ちません。お盆のお墓参りには、迷わず菊系を選ぶのが無難です。
宗派や地域による花の違い
仏教の宗派による厳密な決まりはほぼありません。ただし神道や創価学会では、お墓参りの花の考え方が少し違います。
神道では、お墓に「榊(さかき)」を供えます。仏式のように花を供えてもいいのですが、伝統的には榊。神式の方は地域の神官さんに確認してから決めるのが安心です。仏式と神式の見分け方や供え方の違いは、以前まとめた樒と榊の見分け方の記事も参考にしてください。
創価学会は、伝統的にお樒(シキミ)を供えます。仏花は使わないのが一般的。これは創価学会独特の考え方で、創価学会の葬儀マナー(友人葬)の記事でも詳しく書いていますが、もし学会員のお墓に参る場合は、事前に花の確認をしておくとトラブルになりません。
地域差もあります。関西地方ではしきびを使う家庭が多く、北海道や東北では雪の時期はお参り自体が難しいので、造花を使う墓地も普通にあります。沖縄では「ウチカビ」という独特の供物文化があって、本州の感覚とは全く違います。お嫁ぎ先のしきたりが違って戸惑う方も多いので、年配のご親族に一度聞いておくと安心です。
造花や仏花セットを使うのはアリか
「遠方でなかなかお参りに行けないので、造花を供えたい」という相談を最近よく受けます。私の答えは「全然アリです」。
枯れた花が放置されているより、きれいな造花がずっと供えてある方が、ご先祖様も喜ばれると思います。実際、最近の造花は本物そっくりで、すぐには造花とわからないクオリティのものも多い。100円ショップでも墓前用の造花セットが売られていて、500円もあれば一対揃います。
ただし墓地によっては「造花禁止」の規約があるところもあります。寺院墓地に多いです。事前に確認してから供えてください。あと、造花は劣化すると一気にみすぼらしくなるので、半年に一度は新しいものに替える。これだけ守ればOK。
スーパーやホームセンターで売っている「仏花セット」も賢い選択肢です。500〜800円程度で、墓前用に組まれた花束が左右一対で買えます。お盆・お彼岸時期は花の値段が倍になることもあるので、こうした既製品をうまく使うのも現場の知恵。
お墓参りでよくある花にまつわるトラブル
現場でよく耳にするのが、「お盆に行ったら、自分が供えた花が誰かに撤去されていた」というお話。これは管理者が枯れた花を片付けたケースがほとんど。寺院墓地や霊園では、定期的に枯花を撤去するのが普通です。気を悪くしないでくださいね。
もう一つは、隣のお墓の方から「香りが強すぎる」と苦情が来るケース。これは特にユリやクチナシで起きやすい。屋外とはいえ、墓地はみんなで使う場所なので、香りには配慮が必要です。
そして、「家族葬で香典も供花も辞退したのに、お墓には何を供えていいか分からない」という相談。これは別の話で、ご家族のお墓参りで供える花は、お葬式の供花とは違って、いつ・どんな花を供えてもOK。線香のマナーと併せてお墓参りの線香マナーの記事もチェックしておくと、お参り全体の流れがスッキリ整理できます。
よくある質問
Q1. 故人が生前好きだった花がバラだったら、お墓に供えても本当に大丈夫ですか?
はい、全く問題ありません。バラを供えるときはトゲを取ってから、長さを短めに切って供えてください。色は白やピンク、淡い黄色が落ち着いた印象になります。真っ赤なバラはお祝い事のイメージが強いので、命日や四十九日までは避ける方が多いです。お盆やお彼岸など落ち着いた時期なら、赤バラも故人を偲ぶ花として供えても問題ありません。
Q2. お墓参りに花を持って行く時、新聞紙でくるんだままでいいですか?
新聞紙のままで全く構いません。むしろ、花屋さんで包んでもらった新聞紙やラッピングは、保水の役割を果たしてくれるので、墓地に着くまでは外さないほうがいいです。墓地に到着したら、ラッピングを外し、花立てに合わせて茎を切り、水を入れた花立てに挿します。包装紙やビニールはゴミとして必ず持ち帰ること。墓地のゴミ箱に捨てない、これが基本マナーです。
Q3. お盆のお墓参りで花が高くて手が出ません。安く済ませる方法はありますか?
お盆時期の生花は本当に高くなりますよね。私のおすすめは3つ。まず、JAの直売所や産直市場。市場価格より3〜5割安いことが多いです。次に、スーパーの仏花コーナー。500〜800円で一対組まれているので、花屋さんで買うより圧倒的に安い。最後に、お盆の1週間前に買って自宅で延命剤に浸けておく方法。お盆前は値段がまだ落ち着いているので、計画的に動けば3割は節約できます。
Q4. 子どもとお墓参りに行くとき、子どもに花を選ばせてもいいですか?
ぜひ選ばせてあげてください。私自身、小学生の息子と一緒にお墓参りに行くときは、息子に花を選ばせています。「おばあちゃんはピンクが好きだったよ」と話しながら花を選ぶ時間は、子どもにとっての一番のグリーフケアになります。毒のある花(彼岸花、スイセン、アジサイなど)だけは大人が避けるよう導いて、あとは自由でOK。故人を思う気持ちを、家族で共有する大事な時間です。
Q5. 49日前のお墓参りで色のついた花を供えてしまいました。失礼にあたりますか?
気にしなくて大丈夫です。確かに四十九日までは白い花を基調にするのが伝統的なマナーですが、これは「絶対のルール」ではなく「目安」です。故人を思って供えた花であれば、色がついていても失礼にはあたりません。気になるようでしたら、次回から白基調に切り替えれば十分。マナーよりも気持ちが優先される、というのが葬祭の現場の本音です。
Q6. 枯れた花はそのまま墓地に捨てて帰ってもいいですか?
墓地に専用のゴミ捨て場があれば、そちらに捨ててください。多くの霊園・寺院墓地には「枯花入れ」が設置されています。設置されていない場合は、ビニール袋に入れて持ち帰るのが基本マナーです。墓地の隅に放置したり、隣の区画に置いたりするのは絶対NG。次にお参りする方が困りますし、墓地全体の景観も悪くなります。枯花を片付けてから新しい花を供える、この流れが正しい順序です。




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