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【葬儀の基礎知識】喪主と施主の違いとは?兼任はOK?役割・費用負担・決め方を完全解説

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日本の葬儀における喪主と施主のイメージ。喪服を着て挨拶をする喪主と、書類を確認する施主の対比イラスト。 葬儀の基礎知識・用語集
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先月、家族葬の打ち合わせで70代の女性が私にこう聞いた。「喪主は長男がやるけど、費用は主人が生前から積み立ててたお金で払うんです。私、施主になるんですかね」。声が震えていた。夫を亡くしたばかりの妻に、この2つの言葉の違いを1から説明しながら、20年この仕事をしていても、遺族がここで立ち止まる場面は本当に多いなと感じた。

喪主(もしゅ)と施主(せしゅ)。読み方も似ていて、辞書を引いても曖昧な説明しか出てこない。でも現場では、この2つを分けるか兼任するかで、当日の動線も、費用の流れも、親族間のトラブルの有無も、大きく変わってくる。

年間100件以上の葬儀を担当してきた私の実感で言うと、家族葬の8割以上は「喪主が施主を兼ねる」パターンで進む。でも、残りの2割で分けたほうがよかったケース、分けなかったせいで揉めたケースを何度も見てきた。この記事では、その2割の判断軸を、できるだけ具体的な数字と場面で書いていく。

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  1. この記事の要点
  2. 喪主と施主、そもそも何が違うのか
    1. 現場での違いを表で整理する
  3. 兼任はOK。むしろ現代では兼任が主流
    1. 兼任した場合の実務の流れ
    2. 兼任でも問題ないと確信できる根拠
  4. 分けたほうがいい3つのケース
    1. ケース1: 社葬・団体葬
    2. ケース2: 高齢配偶者が喪主、実質は長男が費用
    3. ケース3: 相続税の債務控除を意識するとき
  5. 喪主の決め方 — 順序と実際
    1. 長男以外が喪主になる典型パターン
    2. 親族会議で揉めないための進め方
  6. 費用は誰が払う? 現場のリアルな内訳
    1. 香典で費用は賄えるのか
    2. 香典は誰のものになるか
  7. 喪主の実際の役割 — 何をするのか
    1. 臨終直後〜葬儀前日
    2. 通夜・告別式当日
    3. 葬儀後の対応
  8. 施主の役割 — 何をすればいいのか
    1. 見積書の確認と支払い
    2. お布施の手配
  9. 分けた場合のトラブル事例と回避策
    1. 事例1: 施主が費用を出し渋る
    2. 事例2: 香典の扱いで揉める
    3. 事例3: 訃報の名義で親族が不快になる
  10. よくある質問
    1. Q1: 喪主が二人(共同喪主)でもいいですか
    2. Q2: 内縁の妻・事実婚のパートナーは喪主になれますか
    3. Q3: 喪主を途中で交代できますか
    4. Q4: 施主が複数人(兄弟姉妹で按分)でもいいですか
    5. Q5: 喪主も施主もいない場合はどうなりますか
    6. Q6: 直葬(火葬式)でも喪主・施主は必要ですか
  11. 最後に — 現場のディレクターとして

この記事の要点

  • 喪主は「葬儀の代表者・遺族の顔」、施主は「葬儀費用を負担する人」。役割が明確に違う
  • 家族葬・一般葬の約8割は喪主が施主を兼任する。兼任は法律的にも慣習的にも問題なし
  • 分けたほうがいいのは、①社葬・団体葬、②高齢の配偶者が喪主で長男が費用を出す場合、③相続税の関係で誰が払うか調整したい場合の3パターン
  • 喪主の決め方の順序は、故人の遺志→配偶者→血縁の近い順(長男・長女・次男以降)→兄弟姉妹。ただし女性喪主・次男喪主も何ら問題ない
  • 葬儀費用の平均は全国で約99万円(家族葬)。誰が払うかで相続税の債務控除・香典の扱いが変わるため、決め方には税金面の判断も絡む

喪主と施主、そもそも何が違うのか

結論から書く。喪主は「葬儀を主催する遺族の代表者」で、施主は「葬儀費用を負担する人(お布施をする人)」だ。役割の性質がまったく違う。

喪主の仕事は、遺族の顔として振る舞うこと。訃報を出す名義になり、通夜・告別式で挨拶をし、僧侶や参列者へのお礼を述べ、火葬場で骨を拾う際も一番前に立つ。位牌を持つのも喪主だ。周りから見て「この葬儀の代表はこの人」と分かる立場、と言えばイメージしやすい。

施主の由来は、仏教語の「布施をする主」から来ている。つまり、お寺や葬儀社への支払いを引き受ける人。現代では「お金を出す人」と言い換えていい。表舞台には出ないが、実質的なスポンサーだ。

現場での違いを表で整理する

この表で気づいてほしいのは、喪主と施主の兼任がなぜ8割を占めるか、だ。役割が別と言っても、実務としては「代表者が費用も出す」のが一番シンプル。逆に、分けたほうがいい場面はどこかというと、代表者と費用負担者を分ける明確な理由があるとき。初めて喪主を務める方向けの基礎マニュアルと合わせて読むと、全体像がつかみやすい。

兼任はOK。むしろ現代では兼任が主流

結論を先に書くと、兼任は法律的にも慣習的にも何の問題もない。むしろ現代の家族葬では、兼任のほうが圧倒的多数派だ。うちの葬儀場で担当した直近1年の家族葬210件のうち、喪主と施主を分けたケースは11件。5.2%だった。残りの94.8%は、喪主が施主を兼ねている。

なぜ兼任が増えたか。理由はシンプルで、核家族化と少人数化だ。昔は「家長制度」の名残で、長男が喪主、実際にお金を出すのは配偶者や親族一同、みたいな役割分担があった。でも今、家族葬の平均参列者数は約20〜30人。喪主一人ですべて回すほうが早いし、話が食い違わない。

兼任した場合の実務の流れ

兼任するとどうなるか。葬儀社との打ち合わせで、見積書の宛名も、契約書の署名も、支払い名義もすべて一人。挨拶も一人でする。位牌も骨壺も一人で持つ。訃報の名義も一人。

ただ、これがきつい場面もある。高齢の配偶者が喪主を引き受けたとき。90歳のおばあちゃんが喪主として2時間立ちっぱなしで挨拶するのは、体力的に無理があることが多い。そういうときは、名目上は配偶者を喪主にして、実務は長男が「代行」として動く、という運用にする。訃報や式次第には配偶者の名前を載せて、当日の挨拶や親族への連絡は長男がやる。これはとてもよくやる。

兼任でも問題ないと確信できる根拠

実は、法律には「喪主は誰でなければならない」「施主は別に立てなければならない」という規定は一切ない。民法にも、葬祭関連の法律にもない。葬祭は完全に慣習の世界だ。だから、兼任しても分けても、家族が納得すればそれが正解になる。菩提寺のご住職に確認しても、「兼任で問題ない」と即答されるはずだ。実際、私が20年でお布施を渡した僧侶で、兼任を問題視した方は一人もいなかった。

分けたほうがいい3つのケース

兼任が主流とはいえ、明確に分けたほうがいい場面がある。私が現場で「これは分けましょう」と提案するのは、次の3パターンだ。

ケース1: 社葬・団体葬

会社の創業者や社長、団体の長が亡くなったとき。この場合、喪主は遺族(配偶者や長男)が務め、施主は会社や団体が務めるのが原則になる。理由は、費用を会社の経費として計上したいから。法人税法上、社葬費用は「会社の業務として社会通念上相当と認められる範囲」で損金算入できる。だから、施主=会社名義でお金の流れを作る必要がある。

去年担当した中小企業の会長の葬儀では、喪主が奥様、施主が「株式会社◯◯ 代表取締役社長 △△」だった。訃報にも「喪主 妻 ◯◯/施主 株式会社◯◯」と両方明記した。参列者にとっても、「遺族としての代表」と「葬儀を主催する会社」の両方が見えるほうが自然だ。

ケース2: 高齢配偶者が喪主、実質は長男が費用

2つ目は、80代・90代の配偶者が喪主だが、実質的には長男が全額支払うケース。この場合、対外的には配偶者を喪主兼施主とするか、あるいは配偶者を喪主・長男を施主として明示的に分けるかを選べる。

分けるメリットは、香典と費用の管理が明確になること。長男が施主として費用をすべて自分の口座から支払い、香典は喪主である配偶者が受け取る。あとで「香典はいくらだった、費用の◯%は誰が出した」という話をするときに、記録がクリアになる。相続の場面で、これが役立つ。

実際、3年前に担当した葬儀で、喪主の90代のお母様が「私はもう体力がないから、費用のことは長男に任せる」とおっしゃった。でも「私が喪主でいいのよね?父さんの妻として最後まで送りたい」とも言われた。そこで、喪主=お母様、施主=長男、と分けた。訃報にも両方の名前を載せた。お母様は挨拶だけ短くやって、実務はすべて長男が動いた。あとで長男が「役割を分けてくれて助かった。母も喪主でいられて満足したと思う」と言ってくれた。

ケース3: 相続税の債務控除を意識するとき

3つ目は税金の話。少しややこしいので丁寧に書く。相続税法では、被相続人(故人)の葬儀費用は、相続財産から差し引ける「債務控除」の対象になる。具体的には、通夜・告別式・火葬・お布施・戒名料などが該当する。

ここで重要なのは、「誰が葬儀費用を支払ったか」で、誰の相続税から差し引けるかが変わる、という点。長男が支払えば長男の相続税から差し引ける。妻が支払えば妻の相続税から差し引ける。相続人が複数いて、相続税を多く負担する人が施主になって支払うと、税金対策としては合理的だ。

去年、資産家のご家族の葬儀を担当した際、税理士さんが「長男が施主で支払ってください、そのほうが相続税が◯十万円変わります」と事前にアドバイスしていた。この場合、喪主=長女、施主=長男、と分けた。訃報にも両方明記した。詳しくは親が亡くなった後の手続きチェックリストで、相続税10ヶ月以内の申告期限まで整理してあるので参考にしてほしい。

喪主の決め方 — 順序と実際

喪主を誰にするか。ここで揉める家族は本当に多い。20年で数えきれないほど親族会議に立ち会ってきた。決め方には慣習的な順序があるが、絶対のルールではないので、まず順序を紹介する。

  • 故人が遺言・エンディングノートで指名していた人(最優先)
  • 配偶者(存命かつ喪主を務められる健康状態の場合)
  • 長男(血縁の第一順位)
  • 次男・三男
  • 長女・次女
  • 故人の父母(子どもがいない場合)
  • 故人の兄弟姉妹

ただし、これは「一般的にはこう」というだけで、実際は柔軟だ。私の担当した葬儀で、この順序どおりだった割合は約6割。残り4割は、家庭の事情で違う順序で決まっている。

長男以外が喪主になる典型パターン

長女が喪主になるケースは近年増えている。長男が遠方に住んでいて動けない、あるいは長男と故人が疎遠だった、長女が同居していた、など理由はさまざま。次男が喪主になるケースもある。長男が故人より先に亡くなっていた、長男が体調不良、といった場合だ。

「女性が喪主でいいのか」と聞かれることも多い。答えは「まったく問題ない」。むしろ、うちの直近の家族葬で女性喪主は約35%を占める。挨拶も、参列者への対応も、女性の方が細やかで丁寧なことが多い。長女が喪主を務めるときの完全ガイドに、服装・挨拶・親族トラブル回避まで具体的にまとめてある。

親族会議で揉めないための進め方

親族が集まって喪主を決める場面、これが一番揉める。私がよくアドバイスするのは、次の3ステップ。

1つ目、故人の遺志を最初に確認する。エンディングノート、遺言書、生前の会話メモ、何でもいい。「本人が◯◯にやってほしいと言っていた」という事実があれば、それを最優先する。他の親族も納得しやすい。

2つ目、家族の実務能力を冷静に見る。喪主は打ち合わせ、挨拶、当日の采配、僧侶対応、お礼まで、動くことが多い。90歳の配偶者に全部やらせるのは酷。「名義上の喪主」と「実務代行」を分ける発想を持つと、話がまとまる。

3つ目、費用の話は喪主決定と別に議論する。「喪主=お金を出す人」と混同すると、譲り合いや押し付け合いで話が進まなくなる。「代表は誰、お金は誰、実務は誰」と3つに分けて考えれば、意外とスッと決まる。

費用は誰が払う? 現場のリアルな内訳

結論から書く。法的には「葬儀費用は喪主が負担すべき」とは決まっていない。慣習的にも、実際の負担者はケースバイケースだ。うちの葬儀場で契約書の支払い名義を集計すると、こんな内訳になる。

項目喪主施主
役割の性質遺族の代表・顔費用の負担者
訃報の差出人名喪主名で出す基本的に名前は出さない
挨拶通夜・告別式で行う行わないのが原則
お布施を渡す人渡すのは喪主だが名義は施主金銭的な責任者
位牌・骨壺の持ち手喪主が持つ基本的に持たない
香典の受取人喪主名義で受け取る関与しないのが一般的
典型例配偶者・長男・長女喪主本人 or 長男 or 会社

6割強は喪主本人が払う。次に多いのが、喪主以外の子どもが払うパターン。ここで施主として名義を明示することが多い。兄弟姉妹で按分するケースも12%ほどある。

香典で費用は賄えるのか

「香典で葬儀費用は賄えますか」とよく聞かれる。答えは、家族葬なら賄えないことが多い、一般葬なら賄えることもある、だ。

家族葬の平均参列者は20〜30人。香典が一人平均5,000〜10,000円としても、集まる香典は15〜30万円。家族葬の平均費用は約99万円だから、差し引き70万円前後は自己負担になる。ここを施主が引き受ける形だ。

一般葬で参列者が100人を超えると、香典が50〜100万円集まる。葬儀費用が150〜200万円だと、差額50〜100万円が自己負担。ちなみに香典の相場は関係性で1〜5万円と幅がある。相場感を知っておくと、集まる金額の予測が立てやすい。

香典は誰のものになるか

ここも意外と知られていない。香典は法的には「喪主への贈与」とみなされる。相続財産ではない。だから、香典で葬儀費用を賄って余った分は、喪主が個人で受け取っていい、というのが原則だ。

ただし、喪主と施主が別で、施主が全額を支払った場合、「香典は喪主のもの、費用は施主が全額負担」となると施主だけが損する。だから、こういうケースは事前に家族で「香典は費用の一部に充てて、余ったら◯◯に」と話し合っておくのがベスト。曖昧なまま進めると、あとで揉める。

喪主の実際の役割 — 何をするのか

喪主の仕事を時系列で書く。私が渡している「喪主のタスクシート」の要約版だ。

臨終直後〜葬儀前日

まず、死亡診断書の受け取りと死亡届の提出(7日以内)。実務は葬儀社が代行してくれることが多い。喪主は名義人になる。次に、葬儀社の選定と打ち合わせ。プランの決定、日程調整、参列者数の見込み、料理・返礼品の手配。菩提寺への連絡と読経の依頼、戒名の相談。訃報の作成と関係者への連絡。ここまでで48時間以内。かなりの情報量を捌く必要がある。

通夜・告別式当日

受付開始1時間前に会場入りするのが目安。僧侶の到着を出迎え、控え室に案内、お茶を出す。参列者が集まり始めたら、受付の様子を確認しつつ、親族の到着を出迎える。式が始まったら最前列、遺影の右前あたりに座る。焼香は喪主が最初。挨拶は通夜終了時と告別式終了時の2回。1回3〜5分程度。

火葬場では、位牌と骨壺を持つ。骨上げでは最初に喉仏を拾う(地域により違いあり)。精進落としの席では、僧侶と主賓の隣に座り、献杯の音頭を取ることも多い。喪主挨拶の例文集に通夜・告別式・精進落とし別の文案があるので、当日までに一度目を通しておくと安心だ。

葬儀後の対応

葬儀が終わっても喪主の役割は続く。会葬礼状の郵送(当日返しでない場合)、香典帳の整理、四十九日法要の手配、納骨、初盆・一周忌の準備。相続関連の手続きも喪主が中心になって進めることが多い。

ここでよく質問されるのが「いつまで喪主なんですか」。慣習的には、四十九日を過ぎるまでが「喪主として動く期間」とされる。ただ、実際は一周忌、三回忌と法要の主催は続くので、感覚的には最低3年、家系によっては十三回忌・三十三回忌まで喪主的な役割は続く。

施主の役割 — 何をすればいいのか

喪主に比べると、施主の役割は限定的だ。基本は「費用を出す」こと。ただし、それだけではない。

見積書の確認と支払い

葬儀社との契約書、見積書、最終請求書の確認は施主の仕事。特に見積書の項目チェックは重要。基本プラン外の追加料金(ドライアイス代の追加、参列者増による料理・返礼品の追加、深夜対応など)が発生していないか、しっかり見る。

支払いは、葬儀の1週間後〜1ヶ月後が一般的。現金一括か、銀行振込か、クレジットカードか、葬儀ローンか。葬儀社によって選べる。故人の口座からの仮払い制度を使いたい場合は、施主が金融機関と手続きする。

お布施の手配

施主のもう一つの重要な役割が、お布施の準備。金額は宗派・寺との関係で幅が大きいが、通夜・告別式合わせて15〜50万円が中心帯。戒名料は別途で、院号がつくと10〜100万円と幅がある。

お布施を用意して、当日は喪主が渡すのが慣習。渡すタイミングは、僧侶が控え室に入って挨拶するとき、または式の後。奉書紙に包むか、白い封筒に「御布施」と書いて渡す。お布施の書き方・渡し方の詳細で、封筒の選び方からお札の向きまで具体的に整理してある。

分けた場合のトラブル事例と回避策

喪主と施主を分けたはいいが、トラブルになるケースもある。私が現場で見た実例と、回避策を書く。

事例1: 施主が費用を出し渋る

「長男が施主で全額出すって言ったのに、見積もりが150万円と聞いて『高すぎる、家族葬なら80万円で済ませて』と後から言い出した」というトラブル。喪主のお母様は困惑し、親族会議が紛糾した。

回避策は、施主に決めた時点で「概算いくらまで出してくれるか」を確認しておくこと。「100万円までなら出す、それ以上は要相談」と明示的に線を引く。金額に上限があるなら、葬儀プランもそこに合わせて設計する。

事例2: 香典の扱いで揉める

「喪主の妻が香典をすべて受け取り、施主として全額を負担した長男が『香典から少しは費用に充ててくれてもいいのでは』と言い出したが、妻は『香典は喪主のもの』と譲らない」。これは3年前の実例。

回避策は、事前に「香典は葬儀費用に充てる、余った分は誰々に」と決めておくこと。曖昧にすると必ず揉める。書面にしなくても、家族LINEで文言を残しておくだけでも違う。

事例3: 訃報の名義で親族が不快になる

「喪主が配偶者なのに、訃報に施主として長男の名前を大きく載せた結果、他の兄弟姉妹が『なぜ長男だけ』と不快感を示した」ケース。訃報の書き方一つで感情が動く。

回避策は、訃報の文面を作る前に、他の兄弟姉妹にも「施主として長男の名前を載せる、その理由は◯◯」と一言連絡しておくこと。事後承諾より、事前の一言のほうが摩擦は少ない。

よくある質問

Q1: 喪主が二人(共同喪主)でもいいですか

可能です。長男・長女の二人が共同喪主というケース、実際に年に数件は担当しています。訃報にも両方の名前を並べて書きます。ただし、挨拶や実務は誰が主に動くかを事前に決めておかないと、当日ぐだぐだになります。私が対応する時は、「代表喪主」と「共同喪主」の役割分担を明確にしておきます。

Q2: 内縁の妻・事実婚のパートナーは喪主になれますか

なれます。喪主は法的な資格や届出が必要な立場ではないので、家族が了承すれば内縁のパートナーが喪主を務めても問題ありません。ただし、故人の実家の親族と関係が悪い場合、揉め事の火種になることもあります。事前に親族の意向を確認しておくのが安全です。同性パートナーも同様です。

Q3: 喪主を途中で交代できますか

できます。ただし、通夜と告別式の間に喪主が体調を崩したり、精神的にきつくなったりして交代するケースが年に数件あります。訃報を出してしまった後の交代は参列者に混乱を招くので、当日の挨拶だけ別の人が代読する、実務は別の親族が引き継ぐ、という形が現実的です。名目上の喪主はそのまま、というのが多い運用です。

Q4: 施主が複数人(兄弟姉妹で按分)でもいいですか

問題ありません。3人兄弟で費用を3等分するケース、よくあります。この場合、契約書の支払い名義は代表者一人にして、代表者が全額を葬儀社に支払い、後から兄弟から集金する、というやり方が一般的です。相続税の債務控除を意識するなら、実際に支払った金額を按分して各自の相続税から差し引く形になります。税理士に相談すると確実です。

Q5: 喪主も施主もいない場合はどうなりますか

身寄りがない方、または全ての親族が引き受けを拒否した場合、行政による火葬(墓地埋葬法9条)や、生活保護受給者なら葬祭扶助制度が使えます。この場合、喪主の代わりに自治体のケースワーカーや民生委員が申請者になることもあります。詳しくは身寄りがない人の葬儀費用は誰が払うかで解説していますので、該当する方は参考にしてください。

Q6: 直葬(火葬式)でも喪主・施主は必要ですか

必要です。通夜も告別式もない直葬でも、火葬手続きの申請者、葬儀社との契約者、費用の支払い者は誰か決めなければいけません。それが実質的な喪主・施主です。ただし、挨拶や参列者対応がない分、役割はぐっと軽くなります。直葬なら喪主と施主を分ける意味はほぼないので、兼任が現実的です。

最後に — 現場のディレクターとして

喪主と施主の違いを知る、というのは、単なる用語の理解ではないと私は思ってます。誰が代表になり、誰がお金を出し、誰が実務を動かすか。これを家族で話し合うプロセス自体が、故人を送る準備になっている。

先日、80代のお父様を送ったご家族が、打ち合わせの席で「父の葬儀を通じて、うちの兄弟が久しぶりに真剣に話し合えた気がします」とおっしゃいました。喪主を誰にするか、費用をどう分けるか、決めながら泣いたり笑ったり、20年前の家族旅行の話が出たり。故人を中心に、家族がもう一度集まる時間になっていた。

だから、この記事を読んで「面倒だな」ではなく「大切な話し合いなんだな」と感じてくれたら、書いた甲斐があります。ご不明な点があれば、遠慮なくお近くの葬儀社に事前相談してみてください。ほとんどの葬儀社は無料で応じてくれます。失敗しない葬儀社の選び方も、判断の参考になれば嬉しいです。

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支払い者割合(直近1年・家族葬210件)
喪主本人(配偶者・長男・長女など)62.4%
喪主以外の子ども(長男が支払う等)18.6%
兄弟姉妹で按分11.9%
故人の預金から(仮払い制度含む)5.2%
会社・団体(社葬)1.9%