| 支払い者 | 割合(直近1年・家族葬210件) |
|---|
| 喪主本人(配偶者・長男・長女など) | 62.4% |
| 喪主以外の子ども(長男が支払う等) | 18.6% |
| 兄弟姉妹で按分 | 11.9% |
| 故人の預金から(仮払い制度含む) | 5.2% |
| 会社・団体(社葬) | 1.9% |
6割強は喪主本人が払う。次に多いのが、喪主以外の子どもが払うパターン。ここで施主として名義を明示することが多い。兄弟姉妹で按分するケースも12%ほどある。
香典で費用は賄えるのか
「香典で葬儀費用は賄えますか」とよく聞かれる。答えは、家族葬なら賄えないことが多い、一般葬なら賄えることもある、だ。
家族葬の平均参列者は20〜30人。香典が一人平均5,000〜10,000円としても、集まる香典は15〜30万円。家族葬の平均費用は約99万円だから、差し引き70万円前後は自己負担になる。ここを施主が引き受ける形だ。
一般葬で参列者が100人を超えると、香典が50〜100万円集まる。葬儀費用が150〜200万円だと、差額50〜100万円が自己負担。ちなみに香典の相場は関係性で1〜5万円と幅がある。相場感を知っておくと、集まる金額の予測が立てやすい。
香典は誰のものになるか
ここも意外と知られていない。香典は法的には「喪主への贈与」とみなされる。相続財産ではない。だから、香典で葬儀費用を賄って余った分は、喪主が個人で受け取っていい、というのが原則だ。
ただし、喪主と施主が別で、施主が全額を支払った場合、「香典は喪主のもの、費用は施主が全額負担」となると施主だけが損する。だから、こういうケースは事前に家族で「香典は費用の一部に充てて、余ったら◯◯に」と話し合っておくのがベスト。曖昧なまま進めると、あとで揉める。
喪主の実際の役割 — 何をするのか
喪主の仕事を時系列で書く。私が渡している「喪主のタスクシート」の要約版だ。
臨終直後〜葬儀前日
まず、死亡診断書の受け取りと死亡届の提出(7日以内)。実務は葬儀社が代行してくれることが多い。喪主は名義人になる。次に、葬儀社の選定と打ち合わせ。プランの決定、日程調整、参列者数の見込み、料理・返礼品の手配。菩提寺への連絡と読経の依頼、戒名の相談。訃報の作成と関係者への連絡。ここまでで48時間以内。かなりの情報量を捌く必要がある。
通夜・告別式当日
受付開始1時間前に会場入りするのが目安。僧侶の到着を出迎え、控え室に案内、お茶を出す。参列者が集まり始めたら、受付の様子を確認しつつ、親族の到着を出迎える。式が始まったら最前列、遺影の右前あたりに座る。焼香は喪主が最初。挨拶は通夜終了時と告別式終了時の2回。1回3〜5分程度。
火葬場では、位牌と骨壺を持つ。骨上げでは最初に喉仏を拾う(地域により違いあり)。精進落としの席では、僧侶と主賓の隣に座り、献杯の音頭を取ることも多い。喪主挨拶の例文集に通夜・告別式・精進落とし別の文案があるので、当日までに一度目を通しておくと安心だ。
葬儀後の対応
葬儀が終わっても喪主の役割は続く。会葬礼状の郵送(当日返しでない場合)、香典帳の整理、四十九日法要の手配、納骨、初盆・一周忌の準備。相続関連の手続きも喪主が中心になって進めることが多い。
ここでよく質問されるのが「いつまで喪主なんですか」。慣習的には、四十九日を過ぎるまでが「喪主として動く期間」とされる。ただ、実際は一周忌、三回忌と法要の主催は続くので、感覚的には最低3年、家系によっては十三回忌・三十三回忌まで喪主的な役割は続く。
施主の役割 — 何をすればいいのか
喪主に比べると、施主の役割は限定的だ。基本は「費用を出す」こと。ただし、それだけではない。
見積書の確認と支払い
葬儀社との契約書、見積書、最終請求書の確認は施主の仕事。特に見積書の項目チェックは重要。基本プラン外の追加料金(ドライアイス代の追加、参列者増による料理・返礼品の追加、深夜対応など)が発生していないか、しっかり見る。
支払いは、葬儀の1週間後〜1ヶ月後が一般的。現金一括か、銀行振込か、クレジットカードか、葬儀ローンか。葬儀社によって選べる。故人の口座からの仮払い制度を使いたい場合は、施主が金融機関と手続きする。
お布施の手配
施主のもう一つの重要な役割が、お布施の準備。金額は宗派・寺との関係で幅が大きいが、通夜・告別式合わせて15〜50万円が中心帯。戒名料は別途で、院号がつくと10〜100万円と幅がある。
お布施を用意して、当日は喪主が渡すのが慣習。渡すタイミングは、僧侶が控え室に入って挨拶するとき、または式の後。奉書紙に包むか、白い封筒に「御布施」と書いて渡す。お布施の書き方・渡し方の詳細で、封筒の選び方からお札の向きまで具体的に整理してある。
分けた場合のトラブル事例と回避策
喪主と施主を分けたはいいが、トラブルになるケースもある。私が現場で見た実例と、回避策を書く。
事例1: 施主が費用を出し渋る
「長男が施主で全額出すって言ったのに、見積もりが150万円と聞いて『高すぎる、家族葬なら80万円で済ませて』と後から言い出した」というトラブル。喪主のお母様は困惑し、親族会議が紛糾した。
回避策は、施主に決めた時点で「概算いくらまで出してくれるか」を確認しておくこと。「100万円までなら出す、それ以上は要相談」と明示的に線を引く。金額に上限があるなら、葬儀プランもそこに合わせて設計する。
事例2: 香典の扱いで揉める
「喪主の妻が香典をすべて受け取り、施主として全額を負担した長男が『香典から少しは費用に充ててくれてもいいのでは』と言い出したが、妻は『香典は喪主のもの』と譲らない」。これは3年前の実例。
回避策は、事前に「香典は葬儀費用に充てる、余った分は誰々に」と決めておくこと。曖昧にすると必ず揉める。書面にしなくても、家族LINEで文言を残しておくだけでも違う。
事例3: 訃報の名義で親族が不快になる
「喪主が配偶者なのに、訃報に施主として長男の名前を大きく載せた結果、他の兄弟姉妹が『なぜ長男だけ』と不快感を示した」ケース。訃報の書き方一つで感情が動く。
回避策は、訃報の文面を作る前に、他の兄弟姉妹にも「施主として長男の名前を載せる、その理由は◯◯」と一言連絡しておくこと。事後承諾より、事前の一言のほうが摩擦は少ない。
よくある質問
Q1: 喪主が二人(共同喪主)でもいいですか
可能です。長男・長女の二人が共同喪主というケース、実際に年に数件は担当しています。訃報にも両方の名前を並べて書きます。ただし、挨拶や実務は誰が主に動くかを事前に決めておかないと、当日ぐだぐだになります。私が対応する時は、「代表喪主」と「共同喪主」の役割分担を明確にしておきます。
Q2: 内縁の妻・事実婚のパートナーは喪主になれますか
なれます。喪主は法的な資格や届出が必要な立場ではないので、家族が了承すれば内縁のパートナーが喪主を務めても問題ありません。ただし、故人の実家の親族と関係が悪い場合、揉め事の火種になることもあります。事前に親族の意向を確認しておくのが安全です。同性パートナーも同様です。
Q3: 喪主を途中で交代できますか
できます。ただし、通夜と告別式の間に喪主が体調を崩したり、精神的にきつくなったりして交代するケースが年に数件あります。訃報を出してしまった後の交代は参列者に混乱を招くので、当日の挨拶だけ別の人が代読する、実務は別の親族が引き継ぐ、という形が現実的です。名目上の喪主はそのまま、というのが多い運用です。
Q4: 施主が複数人(兄弟姉妹で按分)でもいいですか
問題ありません。3人兄弟で費用を3等分するケース、よくあります。この場合、契約書の支払い名義は代表者一人にして、代表者が全額を葬儀社に支払い、後から兄弟から集金する、というやり方が一般的です。相続税の債務控除を意識するなら、実際に支払った金額を按分して各自の相続税から差し引く形になります。税理士に相談すると確実です。
Q5: 喪主も施主もいない場合はどうなりますか
身寄りがない方、または全ての親族が引き受けを拒否した場合、行政による火葬(墓地埋葬法9条)や、生活保護受給者なら葬祭扶助制度が使えます。この場合、喪主の代わりに自治体のケースワーカーや民生委員が申請者になることもあります。詳しくは身寄りがない人の葬儀費用は誰が払うかで解説していますので、該当する方は参考にしてください。
Q6: 直葬(火葬式)でも喪主・施主は必要ですか
必要です。通夜も告別式もない直葬でも、火葬手続きの申請者、葬儀社との契約者、費用の支払い者は誰か決めなければいけません。それが実質的な喪主・施主です。ただし、挨拶や参列者対応がない分、役割はぐっと軽くなります。直葬なら喪主と施主を分ける意味はほぼないので、兼任が現実的です。
最後に — 現場のディレクターとして
喪主と施主の違いを知る、というのは、単なる用語の理解ではないと私は思ってます。誰が代表になり、誰がお金を出し、誰が実務を動かすか。これを家族で話し合うプロセス自体が、故人を送る準備になっている。
先日、80代のお父様を送ったご家族が、打ち合わせの席で「父の葬儀を通じて、うちの兄弟が久しぶりに真剣に話し合えた気がします」とおっしゃいました。喪主を誰にするか、費用をどう分けるか、決めながら泣いたり笑ったり、20年前の家族旅行の話が出たり。故人を中心に、家族がもう一度集まる時間になっていた。
だから、この記事を読んで「面倒だな」ではなく「大切な話し合いなんだな」と感じてくれたら、書いた甲斐があります。ご不明な点があれば、遠慮なくお近くの葬儀社に事前相談してみてください。ほとんどの葬儀社は無料で応じてくれます。失敗しない葬儀社の選び方も、判断の参考になれば嬉しいです。
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