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生活保護受給者の葬儀(葬祭扶助)ガイド|自己負担0円で行える範囲と申請手続き

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福祉葬の打ち合わせをする葬祭ディレクターの手元と書類 葬儀の基礎知識・用語集
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先月、私が担当した80代男性の福祉葬。亡くなったお父さんと連絡が途絶えて20年、突然役所から電話を受けた息子さんは、開口一番こう言いました。「葬儀代なんて出せません。どうしたらいいんですか」。震える声でした。生活保護を受けていた方のご葬儀には、葬祭扶助という制度があります。自治体が葬儀費用を負担してくれて、遺族の自己負担は0円。私はその場で申請の流れを説明し、息子さんは翌日民生委員さんと役所に行き、その3日後にお父さんを火葬場でお見送りしました。費用は1円もかかっていません。

葬祭扶助は知られていない制度です。葬儀社のホームページにも書いてあることが少なく、「お金がないから葬儀ができない」と諦めて遺体引き取りすら拒否してしまう遺族を、私は何度も見てきました。この記事では、現役の葬祭ディレクターとして年間20件以上の福祉葬を担当してきた立場から、葬祭扶助で何ができて何ができないか、申請の手順、地域ごとの支給額の差、知っておくべき落とし穴まで、すべて具体的に書きます。

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葬祭扶助とは何か|生活保護法第18条の制度

葬祭扶助は、生活保護法第18条にもとづいて、葬儀を行う経済的余裕がない人に対し、自治体が葬儀費用を現物給付に近い形で支給する制度です。生活保護受給者の方が亡くなった場合だけでなく、遺族側が生活保護を受給していて葬儀費用を出せない場合にも適用されます。

支給対象になるのは、検案・遺体の運搬・火葬または埋葬・納骨その他葬祭のために必要な費用です。条文には「最低限度の葬祭」と書かれていて、ここがポイント。お通夜や告別式といった一般的な葬儀の儀式は含まれません。火葬を中心とした、いわゆる直葬の形式で行われます。

支給される金額は自治体によって異なり、大人で20万円前後、子どもで16万円前後が目安です。東京23区は大人20万6,000円、横浜市は20万9,200円、大阪市は20万9,000円というように、ほぼ似た水準ですが、地方の小さな自治体では若干下回ることもあります。この金額のなかで火葬と最低限の安置を行うため、葬儀社は経験と工夫が必要になります。

「葬祭扶助」と「福祉葬」「民生葬」は同じもの?

呼び方が地域や業者で違うだけで、中身はほぼ同じです。葬祭扶助という制度名のほか、葬儀社の現場では福祉葬、民生葬、生活保護葬と呼ばれることがあります。役所側は「葬祭扶助」という言葉を使うので、申請のときはこの言葉を使うとスムーズです。

福祉葬は基本的に火葬のみの直葬形式で行われます。一般的な[直葬(火葬式)の流れや費用](https://sougi-shigoto.info/kasoshiki-chokuso-cost-flow-family-explanation/)を理解しておくと、当日の進行がイメージしやすくなります。福祉葬も基本構造は同じで、お通夜・告別式を行わず、安置施設または自宅で安置したあと、火葬場へ移動して火葬する流れです。

対象になる人と申請できる人の条件

葬祭扶助が使えるかどうかは、誰が葬儀を執り行うかによって決まります。ここを誤解している方が多いので、丁寧に整理します。

パターンは大きく2つ。ひとつは「故人が生活保護受給者で、葬儀を行う遺族も経済的に困窮している場合」。もうひとつは「故人が生活保護受給者ではないが、葬儀を行う遺族が生活保護受給者または同等の困窮状態の場合」。どちらも、葬儀を執り行う人(喪主や扶養義務者)に支払い能力がないことが前提です。

逆に、亡くなった方が生活保護受給者でも、遺族にお金があれば葬祭扶助は出ません。これはよく勘違いされます。たとえばお父さんが生活保護を受けていて亡くなり、息子さんが普通に働いていて収入もある場合、葬祭扶助は使えません。判断基準は「葬儀費用を負担できる人がいるか」です。

身寄りがない場合は誰が申請するのか

身寄りがまったくない場合、または遺族が遺体引き取りを拒否した場合は、自治体が「行旅死亡人」または「墓地埋葬法第9条」にもとづいて火葬と埋葬を行います。これは葬祭扶助とは別の枠組みですが、結果として自治体が費用を負担する点は同じです。[身寄りがない人の葬儀の扱い](https://sougi-shigoto.info/lonely-death-funeral-no-relatives-guide/)については、行旅死亡人制度や死後事務委任契約と合わせて理解しておくと安心です。

遠縁の親族がいるけれど関わりたくない、というケースも増えています。私が担当した先ほどの息子さんのように、20年連絡を取っていなかった親が亡くなった、と役所から連絡を受けるパターン。この場合、息子さんは遺体引き取りを拒否することもできますが、引き取って葬祭扶助で見送るという選択もできます。費用は0円なので、最後だけ親孝行をしておきたいという方には現実的な選択肢です。

葬祭扶助でできる範囲|支給項目を具体的に

葬祭扶助の支給対象になる費用は、生活保護法施行細則で明確に定められています。実際に現場で行う内容を、項目別にまとめます。

項目葬祭扶助で対応可備考
遺体の搬送(病院→安置所)1回分まで
ドライアイス必要日数分
棺(最低限の桐棺)布張りなど装飾なし
仏衣・経帷子白装束1着
骨壷・骨箱標準サイズ
火葬料金市民料金で精算
霊柩車(安置所→火葬場)1回分
役所への書類提出代行火葬許可申請等
お通夜・告別式×儀式は対象外
祭壇・供花・遺影×追加費用は実費
お布施・戒名料×宗教行為は対象外
会葬礼状・返礼品×参列者向けの物品は対象外
納骨費用自治体により判断

支給範囲を見ればわかる通り、葬祭扶助でできるのは「火葬を中心とした最低限の見送り」です。お別れの時間はもちろん設けられますが、祭壇に花を飾ったり、僧侶を呼んでお経を上げたりすることは制度の範囲外。やりたい場合は別途自己負担になります。

読経や戒名はどうしたらいい?

これは現場でよく相談されます。葬祭扶助では僧侶の手配や[戒名料の支払い](https://sougi-shigoto.info/kaimyo-fee-market-price-guide/)はカバーされません。でも宗教的な見送りをしたい遺族がいるのも事実。私が担当する場合は、ご縁のあるお寺さんに事情を説明したうえで、お気持ち程度のお布施(5,000円〜1万円ほど)で火葬場で短い読経をしてもらうことがあります。これは葬祭扶助の枠外なので、遺族の自己負担です。

俗名(生前のお名前)のまま火葬する選択もあります。戒名がないと成仏できない、というわけではないので、無理に戒名をつける必要はありません。あとから経済的に余裕ができたタイミングで、四十九日や一周忌のときにつけていただく方も多いです。

申請の手順|葬儀「前」に必ず申請する

葬祭扶助でいちばん大事なルールがこれ。申請は必ず葬儀を行う「前」に済ませる必要があります。火葬が終わってから「実はお金がなくて」と相談しても、原則として葬祭扶助は支給されません。例外的に事後申請が認められるケースもありますが、ハードルが高いので避けるべきです。

申請の流れを時系列でまとめます。亡くなったあとに動き出すことが多いので、時間との戦いになります。

  • 故人または遺族の住所地を管轄する福祉事務所に電話で連絡する
  • 担当ケースワーカーまたは生活保護担当部署に「葬祭扶助を申請したい」と伝える
  • 必要書類(死亡診断書のコピー、申請者の身分証、生活保護受給証など)を準備する
  • 福祉事務所が認める葬儀社を選ぶ(自治体に提携リストがあることも)
  • 葬儀社が福祉事務所に見積もりを提出し、承認を得る
  • 承認後、火葬の段取りを進める
  • 火葬後、葬儀社が福祉事務所に請求書を提出し、自治体から葬儀社に費用が直接支払われる

遺族のお財布を経由しないのがポイント。葬儀社が自治体から直接費用を受け取るので、遺族は1円も立て替える必要がありません。これが「自己負担0円」の仕組みです。

夜間や休日に亡くなった場合は?

福祉事務所は基本的に平日日中しか開いていません。深夜や週末に亡くなった場合、その場で申請はできませんが、葬祭扶助に対応している葬儀社に連絡すれば、安置だけ先に進めて翌営業日に申請する形を取ってもらえます。私の会社でも、夜中の3時に救急病院から連絡を受けて、まずご遺体をお迎えに行き、翌朝開庁と同時にケースワーカーに連絡、という流れを何度もやっています。

大事なのは、最初に連絡する葬儀社が葬祭扶助に対応しているかを確認すること。すべての葬儀社が対応しているわけではありません。「葬祭扶助でお願いしたい」と最初に伝えて、対応可能か聞いてください。対応していない業者にうっかり頼むと、通常料金を請求されて困ったことになります。

地域別の支給額と運用の違い

葬祭扶助の上限額は厚生労働省が定める基準にもとづいていますが、自治体ごとに若干の差があります。主要な自治体の大人ひとり分の支給上限額をまとめると以下の通り。

自治体大人の支給上限額備考
東京都23区20万6,000円級地1級地
横浜市20万9,200円級地1級地
名古屋市20万5,400円級地1級地
大阪市20万9,000円級地1級地
福岡市20万6,000円級地1級地
地方都市(3級地)17万〜19万円自治体ごとに異なる

運用面でも自治体差があります。たとえば納骨費用について、東京の一部区では公営の合葬墓への納骨費用も葬祭扶助で見てくれるところがありますが、多くの自治体は火葬までしか対象外。骨壷をどこに納めるかは、遺族側で考える必要があります。

引き取り手のない遺骨は、自治体が一定期間(多くは5年)保管したのち、無縁仏として合葬されるのが一般的です。無縁仏になるまでの流れや、合葬されるまでの期間については[無縁仏とお墓の撤去](https://sougi-shigoto.info/muenbotoke-grave-removal-gosshi-period/)で詳しく整理しています。納骨先がない場合の選択肢として、頭の片隅に置いておくと安心です。

葬祭扶助で「やってはいけない」落とし穴

制度を利用するうえで、知らないと損する、あるいは申請が却下されるケースがいくつかあります。私が現場で実際に見てきたトラブル事例から書きます。

ひとつ目は、申請前に葬儀を進めてしまうこと。さっきも書きましたが、これが最大のNG。「とりあえず火葬は済ませて、あとから申請しよう」は通用しません。死亡診断書を受け取ったら、葬儀の段取りを始める前にまずケースワーカーに電話する。これを徹底してください。

ふたつ目は、葬祭扶助の枠を超えるオプションを依頼してしまうこと。たとえば「お花を飾りたい」「献花台を作りたい」と希望して、追加で20万円を請求された遺族を見たことがあります。葬祭扶助は「最低限度の葬祭」と決まっているので、それ以上のことをすると全額自己負担になる可能性があります。やる前に必ず葬儀社とケースワーカーに確認を。

みっつ目は、遺族の資産が後から発覚するケース。申請のときに「お金がない」と申告しても、故人の銀行口座に数百万円残っていた、生命保険金が出た、という場合、葬祭扶助が取り消されて返還を求められることがあります。隠さず正直に申告するのが結果として安心です。

香典をもらうのは大丈夫?

これもよく聞かれます。福祉葬は基本的に近親者だけで行うので香典が発生するシーンは少ないですが、たまに親族の方からお気持ちを包んでもらうことがあります。香典は社会通念上の儀礼として、葬祭扶助とは別に受け取って問題ないとされています。ただし金額が大きい(数十万円単位)と、収入とみなされる可能性があるので、念のためケースワーカーに相談してください。

福祉葬当日の流れ|実例から

冒頭で紹介した80代男性のケースを例に、当日の流れを書きます。亡くなったのが月曜の夜21時、火葬が金曜の朝10時というスケジュールでした。

月曜の22時、息子さんから連絡を受けて病院へお迎え。安置施設にお連れして、ドライアイスで処置。火曜の朝、息子さんと一緒に役所へ行き、ケースワーカーに葬祭扶助の申請をしてもらいました。私は葬儀社として見積もりを提出し、当日中に承認が下りました。

火葬場の予約が金曜しか空いていなかったので、その間ご遺体は安置施設でお預かり。水曜と木曜は、息子さんとお嫁さんが面会に来てくれて、20年ぶりにお父さんのお顔を見て泣いておられました。「最後に会えてよかった」と息子さんがおっしゃったとき、私もこの仕事をやっていてよかったと思いました。

金曜の朝、霊柩車で火葬場へ移動。火葬場では息子さん夫婦と私とで、短いお別れの時間を取り、火葬。約1時間半後にお骨上げ。骨壷をお渡しして、終わりです。儀式らしい儀式はありませんが、それでも家族にとっては大切なお別れの時間になります。費用は最終的にすべて自治体から葬儀社へ直接振り込まれ、息子さんの負担は0円でした。

よくある質問

Q1. 故人が生活保護受給者でなくても葬祭扶助は使えますか?

使えます。葬祭扶助は故人ではなく、葬儀を行う遺族側の経済状況で判断されます。喪主や扶養義務者が生活保護受給者であったり、それに準ずる困窮状態であれば、故人が一般人でも対象になります。逆に故人が生活保護でも、遺族に支払い能力があれば対象外です。

Q2. 通夜や告別式をやりたい場合、どうすればいい?

葬祭扶助の範囲ではできません。通夜・告別式を行いたい場合は、自己負担で別途葬儀プランを組む必要があります。ただ、福祉葬であっても安置施設でお別れの時間を持つことはできますし、火葬場で短くお焼香する時間を設けることも可能です。遺族の方には「儀式はできないけれど、お見送りの時間はちゃんと取れます」とお伝えしています。

Q3. 申請してから承認までどれくらいかかりますか?

多くの自治体で、申請当日または翌日には口頭で承認が下ります。書類上の正式承認はそのあと数日かかりますが、葬儀の段取りは口頭承認の段階で進められます。福祉事務所のケースワーカーは葬祭扶助に慣れているので、対応は比較的スムーズです。

Q4. 葬儀社は自由に選べますか?

原則は自由に選べます。ただし葬祭扶助に対応していない業者だと話が進まないので、事前に「葬祭扶助でお願いしたい」と伝えて確認してください。自治体によっては提携葬儀社のリストを持っていることもあり、ケースワーカーに紹介してもらうのが手っ取り早い場合もあります。

Q5. 遺骨を引き取りたくない場合はどうすればいい?

火葬場や自治体に相談してください。自治体によっては、引き取り手のない遺骨を一定期間(多くは5年)保管したのち、合葬墓に納める運用をしています。費用は自治体負担。ただし「あとからやっぱり返してほしい」と言っても合葬後は分骨できないので、最終判断は慎重に。引き取って手元供養や[散骨](https://sougi-shigoto.info/sankotsu-rule-permit-cost-illegal/)という選択肢も検討してみてください。

Q6. 遠方の親族が亡くなった場合、住んでいる自治体の福祉事務所に申請するの?

原則として「故人が亡くなった場所、または住民票のあった自治体」の福祉事務所に申請します。故人の住所と申請者の住所が違う場合、自治体間で調整が必要になることもあるので、まずは故人の住所地のケースワーカーに連絡してください。

最後に|お金がないことを恥じないでほしい

福祉葬の現場で何度も感じることがあります。それは、遺族の方が「お金がなくてすみません」と謝ってくることの多さ。先日の息子さんも、何度も「申し訳ない」と頭を下げていました。でもこれは謝ることじゃない、と私は思ってます。葬祭扶助は税金で運営されている、誰もが利用していい制度です。生活が苦しいときに使うために存在しているもの。

大切な人を見送るのに、お金の有無で選択肢が狭まることはあっても、見送る気持ちの重さに差はありません。福祉葬であっても、ご遺体をきれいに整え、安置のときにお顔を見てもらい、火葬場で最後のお見送りをする。この一連の流れは、どんな葬儀でも変わらない大切な時間です。

もし今、ご家族が亡くなって葬儀費用に悩んでいる方がこの記事を読んでいるなら、まず役所の福祉課か、葬祭扶助に対応している葬儀社に電話してください。誰かが必ず助けてくれます。ひとりで抱え込まなくて大丈夫。20年葬祭ディレクターをやってきて、私はそう信じてます。

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