四十九日の打ち合わせで、喪主さんから一番よく聞かれるのが「お坊さんに渡すお金って、お布施だけでいいんですか?」という質問です。実はお布施のほかに「お車代」と「御膳料(おぜんりょう)」という2つの封筒を別途用意する必要があるケースが多いのですが、特に御膳料は知らない方が本当に多い。
先日も、初めて施主を務める50代の女性が「会食を辞退されたから、お礼の気持ちはどうやって伝えればいいのか分からない」と困っていました。コロナ以降、僧侶が会食を辞退するケースが本当に増えていて、御膳料を渡す機会は今や四十九日や一周忌の現場で当たり前になっています。
この記事では、葬儀業界に20年いる私が、御膳料の金額相場、封筒の選び方、表書きと裏面の書き方、お札の向き、渡すタイミングまで、現場でそのまま使える形で全部まとめます。これを読めば、当日慌てずに済みます。
御膳料とは?お斎を辞退した僧侶へのお礼の意味
御膳料とは、法要や葬儀の後に行う会食「お斎(おとき)」に僧侶が参加されない時、その食事の代わりにお渡しする現金のことです。「本来であればお食事を召し上がっていただくところを、ご都合により欠席されるので、せめてその分のお食事代として」という意味合いを込めて渡します。
もともとお斎は、僧侶への感謝とともに故人を偲ぶために設けられる会食の場です。お斎自体の意味や席順についてはお斎の席順や献杯の挨拶マナーでも詳しく書いていますが、僧侶が参加されると故人や仏教の話を聞ける貴重な機会にもなります。
ただ、地域によっては「うちの宗派では御膳料の習慣はありません」と言われることもありますし、お寺によっては「お布施に含めてあるから不要です」と辞退されるケースもある。あくまでお気持ちを形にしたもので、絶対のルールではないということを最初にお伝えしておきます。
御膳料が必要になる具体的なシーン
現場で「これは御膳料が要りますね」と判断するのは、だいたい次の3パターンです。1つ目は、僧侶が読経後すぐに退席される場合。次のお寺の予定が詰まっている方は、最初から「今日は失礼します」と席を立たれます。
2つ目は、施主側がお斎の場を設けない場合。家族葬や近年の小規模法要では、会食そのものを省略して折詰弁当でお開きにすることが増えました。その時は折詰を僧侶にもお渡ししたうえで、御膳料を添えるのが丁寧です。3つ目はコロナ以降に定着した「お寺さん側からの会食辞退」。これは本当に増えています。
逆に、僧侶が最後まで会食に参加されるなら御膳料は不要です。現場では事前にお寺へ電話で「お斎にご参加いただけますか」と確認しておくのが鉄則。これをやらずに当日「やっぱり辞退します」と言われると、施主さんが焦って封筒も用意できず、ばたばたになります。
御膳料の金額相場|法要別の目安一覧
御膳料の金額は、施主さんが実際に頼んだ会食1人分の料金を基準に考えます。私が年間100件以上担当してきた現場の感覚では、5千円から1万円の範囲に収まることがほとんど。これは料亭や仕出し屋さんの会席料理1人分の相場と一致します。
具体的な目安を表にまとめておきます。地域差はありますが、首都圏・関西圏とも大きくは変わりません。
| シーン | 御膳料の相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 通夜・告別式 | 5,000円〜1万円 | 通夜振る舞いの辞退時 |
| 初七日法要 | 5,000円〜1万円 | 葬儀当日に繰り上げで行う場合も同額 |
| 四十九日法要 | 5,000円〜1万円 | 最も御膳料が発生しやすい |
| 一周忌・三回忌 | 5,000円〜1万円 | 会食の格に合わせる |
| 七回忌以降 | 5,000円〜1万円 | 規模を小さくしても金額は据え置き |
| お盆・棚経 | 5,000円程度 | 短時間訪問の場合 |
悩むのは「実際の会食が6,500円とか、中途半端な金額の時にどうするか」。これは切り上げて1万円に揃えるのが一般的です。お札の枚数が増えると封筒も膨らんで見栄えが悪くなるので、1万円札1枚で済む金額に整えておくのが現場の知恵です。
初盆・新盆の場合の特殊事情
初盆は他の法要より少し相場が高めになる傾向があります。棚経で短時間お寺に来てもらう場合の御膳料は5千円程度で大丈夫ですが、初盆法要として正式に営む時はお布施も御膳料も四十九日に準じる金額を包みます。詳しくは初盆のお布施相場と封筒の書き方でまとめているので、お盆を控えている方は併せて確認しておくと安心です。
お盆は1日で何軒も檀家を回るので、ほぼ確実に会食辞退になります。逆にいうとお盆ほど御膳料を用意する確率の高い行事はありません。封筒を多めにストックしておくといいです。
複数の僧侶が来た時の計算方法
大きな寺院や宗派によっては、住職に加えて副住職や脇導師(わきどうし)と呼ばれる僧侶が複数名で来られることがあります。この場合、御膳料は人数分用意するのが基本。3名で来られたなら、5千円×3名で1万5千円、または1万円×3名で3万円を包みます。
封筒は1枚にまとめず、人数分の封筒に分けて渡すのが丁寧です。住職用と副住職用で金額に差をつける必要はなく、全員同額で大丈夫。私が現場で見てきた限り、お寺の中で「自分だけ少なかった」みたいな話になるケースは見たことがありません。
御膳料の封筒の選び方|白封筒か奉書紙か
御膳料の封筒は、無地の白封筒で大丈夫です。コンビニや100円ショップで売っている「郵便番号の枠がない白封筒」が一番無難。中袋がついている二重封筒でも問題ありませんが、迷信的に「不幸が重なる」を連想させるため、一重の白封筒を選ぶ方も多いです。私の現場感覚では、どちらでもクレームになったことはありません。
水引については、御膳料には水引なしの無地白封筒が正式です。これはお布施と同じ考え方で、御膳料は「不祝儀」ではなく「お礼」の性質を持つため、黒白や双銀の水引はそぐわないとされます。間違って黒白の水引付き不祝儀袋を使ってしまうと、ややマナー違反です。
とはいえ、地域によっては「黄白の水引付き封筒」を使うところもあります。京都を中心とした関西の一部地域です。地域の習慣が分からない時は、お寺か葬儀社に「この地域では水引はどうしますか」と聞いてみるのが一番確実。お布施と御膳料の封筒は同じ種類で揃えるのが基本です。
奉書紙(ほうしょし)という和紙で包む正式な形もありますが、現代では一般家庭で奉書紙を用意するのはハードルが高い。白封筒で十分丁寧と判断されますので、無理に格式張る必要はないと思っています。お布施の封筒選びと書き方と全く同じ考え方で揃えれば大丈夫です。
御膳料の表書きと裏面の書き方【図解】
封筒の準備ができたら、表書きを書きます。書き慣れていないと、ここで一番悩む方が多い。順を追って説明します。
表書きは「御膳料」が基本
封筒の表面、中央上部に「御膳料」と縦書きで書きます。「お膳料」とひらがな混じりで書いてもマナー違反ではありませんが、漢字3文字で書くのが一般的です。「御斎料」と書くこともありますが、これは少数派で、御膳料が圧倒的多数。
表面の中央下部、御膳料の文字より少し小さめに、施主の姓を書きます。フルネームでも姓だけでも構いません。私の経験では「○○家」と家名で書く方も多いです。例えば「山田」または「山田家」。
使う筆記具は、薄墨ではなく濃い墨で書きます。これは葬儀の香典袋とは違うポイントで、迷う方がとても多い。香典は「悲しみの涙で墨が薄れた」という意味で薄墨を使いますが、お布施や御膳料は僧侶への感謝・お礼の意味なので濃い墨で書くのが正解です。筆ペンの普通の濃さで大丈夫です。
裏面(中袋)の書き方
中袋がある封筒の場合、中袋の表面中央に金額を縦書きで書きます。「金壱萬圓」のように旧字体(大字)で書くのが伝統的なマナー。「金一万円」と普通の漢字でも問題はありませんが、お寺の正式書類は旧字体が多いので、合わせると丁寧な印象になります。
大字の対応表を覚えておくと便利です。「一→壱」「二→弐」「三→参」「五→伍」「十→拾」「千→阡」「万→萬」「円→圓」。1万円なら「金壱萬圓」、5千円なら「金伍阡圓」となります。
中袋の裏面、左下に施主の住所と氏名を書きます。お寺側が会計処理をする時に「どなたからのお気持ちか」を整理するための情報です。中袋がない一重封筒の場合は、封筒裏面の左下に住所と金額を書き添えます。
よくある書き間違いと注意点
「御膳料」を「ご膳料」と書いてしまう方がいますが、これは間違いではないものの、漢字で統一した方が見栄えが整います。また「御食事料」「お食事代」と書くのは避けてください。お礼の性質を持つ言葉ではないので、僧侶に対して使うのは適切ではありません。
ボールペンや万年筆で書くのは絶対にダメです。必ず筆か筆ペンで書く。鉛筆も論外。文字が下手でも丁寧にゆっくり書けば気持ちは伝わります。私が新人の頃、先輩に「字の上手下手より、まっすぐ書こうとする姿勢が大事」と教わりました。
お札の向きと入れ方|新札はOK?
御膳料に使うお札は、新札でも旧札でも構いません。むしろ「新札を入れる方が丁寧」とされる場合もあります。これも香典との大きな違いで、香典は「不幸を予期して新札を準備していた」と思われるのを避けるために旧札を使いますが、御膳料はお礼なので新札で全く問題ありません。
もし新札がすぐ用意できない時は、できるだけ綺麗な状態のお札を選んでください。折り目が深いものや破れがあるものは避けます。シワがついたお札しかない時は、アイロンを当てるか、新しいお札に両替してから入れる方もいます。
お札を入れる向きのルール
お札の向きは、封筒の表面に対して「肖像画が上、表向き」になるように入れます。封筒を開いた時、お札の人物の顔がまず見えるのが正解。これも香典と逆です。香典は肖像画を下向き・裏向きにしますが、御膳料は肖像画を上向き・表向きにします。
複数枚のお札を入れる時は、向きを全部揃えてください。バラバラだと受け取った僧侶が会計の時に困りますし、ぱっと見の印象もよくない。1万円札と5千円札を組み合わせるよりも、できれば1万円札1枚で済むよう金額調整するのが現場の鉄則。お布施に新札を使うマナーと全く同じ考え方で問題ありません。
細かい話ですが、お札を入れる時の上下にも気をつけてください。肖像画が封筒の上側に来るようにします。逆さまに入っているのは、慶弔ともにマナー違反です。
御膳料を渡すタイミングと作法
御膳料は、お布施・お車代と一緒に「3点セット」で渡すのが基本です。タイミングは法要が始まる前か、法要が終わってお見送りする時のどちらか。私の現場経験では、終わってお見送りする時に渡すパターンが7割以上です。
始まる前に渡す場合は、控室にお茶をお出しして一息ついていただいたタイミングで「本日はどうぞよろしくお願いいたします」と一言添えて渡します。終了後に渡す場合は、僧侶がお帰りになる前に「本日はありがとうございました」とお礼を述べてから渡します。
袱紗(ふくさ)と切手盆を使う
封筒は素手で直接渡してはいけません。必ず袱紗に包んで持ち運び、お渡しする時は「切手盆(きってぼん)」という小さな黒い盆に乗せて差し出します。切手盆がない場合は、袱紗を広げて、その上に封筒を載せて差し出してもOKです。
袱紗の色は、紫・グレー・緑など落ち着いた色を選びます。紫は慶弔両用で使えるので、1枚持っておくと便利。お祝い事用の赤やピンクは絶対に使わないでください。
渡す時の向きは「僧侶から見て表書きが正しく読める向き」にして差し出します。自分が読める向きで差し出すのはNGなので、最後にくるっと回して向きを整える動作を忘れずに。
3つの封筒を渡す順番と一言の添え方
お布施・お車代・御膳料の3つを渡す場合、切手盆の上に「お布施を一番上、その下にお車代と御膳料」と重ねます。お布施が最も大切なお礼なので、見える位置に置く形です。
一言添える時の例文を覚えておくと当日落ち着きます。「本日は誠にありがとうございました。心ばかりではございますが、お布施とお車代、御膳料をご用意いたしました。どうぞお納めください。」これでまず間違いなし。緊張で言葉が出てこなくても、「本日はありがとうございました。お納めください。」だけでも十分伝わります。
御膳料に関するよくある勘違いと現場の本音
20年現場にいると、御膳料に関する勘違いが本当に多いことに気づきます。よくある間違いを正しておきます。
1つ目「御膳料は会食の実費を渡せばいい」。これは半分正解で半分違います。実費の通り3,800円とか半端な金額にせず、5千円か1万円に切り上げるのがマナー。お礼の気持ちなので、ぴったり実費だと「ケチった」印象になりかねません。
2つ目「折詰を持ち帰ってもらうから御膳料は不要」。これは違います。折詰と御膳料は別物。会食を辞退された場合は、折詰を用意したうえで御膳料も添えるのが丁寧です。折詰だけだと「物だけで気持ちが伝わらない」と受け取られる場合もあります。
3つ目「家族葬や小規模法要なら御膳料は省略していい」。これも違います。規模に関わらず、僧侶が会食を辞退されたなら御膳料を用意するのが基本マナー。家族葬のマナー全般については家族葬の喪主挨拶ガイドも参考になると思います。
浄土真宗の場合の特殊事情
浄土真宗の場合、御膳料の習慣はあるものの、お寺によっては「うちはお布施だけで結構です」と辞退される所もあります。これは浄土真宗が「布施は仏様への感謝であり、僧侶個人への報酬ではない」という考え方を大切にしているため。とはいえ施主側から「お気持ちですので」と差し出す分には問題ありません。
もし「不要です」と言われたら、無理に押し付けず素直に引き下がるのが正解。「では、お言葉に甘えさせていただきます」と一言添えればOK。3回くらいやり取りして辞退されるなら、本気で不要という意味です。
神式・キリスト教式の場合
神式の葬儀や法要(霊祭)の場合、御膳料に相当するものを「直会料(なおらいりょう)」と呼ぶことがあります。神主さんが直会(神事の後の会食)を辞退された時に渡す金銭で、金額相場は5千円〜1万円と御膳料と同水準です。
キリスト教式の場合、御膳料に該当する習慣はほぼありません。教会への献金や牧師・神父さんへの謝礼は別の形でお渡しします。宗派ごとの違いに迷う方は、葬儀社か式場の担当者に確認するのが一番早いです。
よくある質問
Q1. 御膳料は絶対に必要ですか?
絶対ではありません。僧侶がお斎に参加される場合は不要ですし、お寺によっては「お布施に含まれているから不要」と辞退されることもあります。ただ、僧侶が会食を辞退された場合は用意するのが一般的なマナーで、用意しないと「気が利かない施主だ」と思われる可能性はあります。
Q2. 御膳料は当日の朝に急いで準備しても間に合いますか?
白封筒と筆ペンさえあれば朝でも準備できます。コンビニで白封筒を買い、お札を新札に両替して、表書きを書けば30分で完成。ただし慌てると字が乱れますので、できれば前日までに準備しておく方が落ち着いて当日を迎えられます。
Q3. お布施・お車代・御膳料を1つの封筒にまとめてもいいですか?
分けるのがマナーです。それぞれ意味と性質が違うので、封筒も別々に用意して、表書きもそれぞれ「御布施」「御車代」「御膳料」と書きます。お寺の側でも会計処理がしやすくなりますし、施主側の心遣いとして評価されます。
Q4. 御膳料の代わりに折詰や手土産で済ませてもいいですか?
折詰だけでは不十分なケースが多いです。折詰は「お持ち帰り用のお食事」、御膳料は「お食事代としての現金」で、別物として扱います。丁寧にしたい場合は折詰と御膳料の両方を用意するのが理想。手土産(お菓子など)は御膳料の代わりにはなりません。
Q5. 御膳料の封筒に水引が付いていてもいいですか?
基本は水引なしの白封筒です。ただし関西の一部では黄白の水引付き封筒を使う習慣もあります。地域の風習が分からない時は、葬儀社や菩提寺に確認するのが安心。黒白や双銀の水引は不祝儀用なので、御膳料には使いません。
Q6. 御膳料を差し出して「不要です」と言われたらどうすればいい?
素直に引き下がってください。「そうですか、それではお言葉に甘えます。本日は本当にありがとうございました」と一言添えて封筒を引き上げます。無理に押し付けると、かえって相手を困らせる場合があります。引き下げた封筒のお金は、お布施に上乗せして次回お渡しするか、お寺の本堂修繕など別の機会のお供えに回すといいです。




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