【徹底比較】納棺師とエンバーマーの違いとは?仕事内容から年収・給料のリアルまで完全解説
映画『おくりびと』で広く知られるようになった「納棺師(のうかんし)」と、近年日本でも需要が高まっている「エンバーマー」。どちらも故人の旅立ちをサポートする尊い仕事ですが、その役割や技術、必要な資格には明確な違いがあります。
「仕事内容は具体的にどう違うの?」
「給料や年収はどちらが高い?」
「資格は必要なの?」
本記事では、葬儀業界への就職・転職を考えている方や、葬儀の知識を深めたい方に向けて、納棺師とエンバーマーの違いを徹底的に比較・解説します。給料のリアルな数字や将来性についても深掘りしていきましょう。
1. 納棺師とエンバーマーの決定的な違いとは?
結論から言うと、両者の最大の違いは「儀式的な美しさ(納棺師)」を重視するか、「医学・科学的な保全(エンバーマー)」を重視するかにあります。
納棺師(おくりびと)とは
納棺師は、故人の身体を清め、死装束を着せ、生前の面影を感じられるようなメイクを施して棺に納める「儀式のプロフェッショナル」です。遺族の目の前で儀式を行うことが多く、グリーフケア(遺族の悲しみのケア)の側面が非常に強いのが特徴です。
エンバーマー(遺体衛生保全士)とは
エンバーマーは、ご遺体に防腐・殺菌・修復処置を施す「遺体衛生保全の技術者」です。専用の薬剤や機器を使用して体内の血液と防腐剤を入れ替えるため、ドライアイスなしでも長期間ご遺体を常温で保存できるようにします。また、事故などで損傷が激しいご遺体の修復も行います。
【比較表】納棺師 vs エンバーマー
一目でわかる違いをまとめました。
| 項目 | 納棺師 | エンバーマー |
|---|---|---|
| 主な目的 | 儀式、清浄、化粧、納棺 | 防腐、殺菌、修復、長期保存 |
| 処置の性質 | 表層的・儀式的なケア (着付け、メイク) | 解剖学的・化学的な処置 (血液入替、縫合) |
| 必要な資格 | 必須資格なし (民間資格あり) | IFSA認定「遺体衛生保全士」 (事実上の必須資格) |
| 作業場所 | 自宅、式場、安置所 (遺族の前で行うことが多い) | エンバーミングセンター (専用施設で行う・非公開) |
| 平均年収 | 約300万〜450万円 | 約350万〜600万円 |
2. 仕事内容の詳細:1日の流れと作業の違い
それぞれの仕事内容をより具体的に見ていきましょう。同じ「遺体を扱う仕事」でも、現場の空気感は全く異なります。
納棺師の仕事内容:遺族の心に寄り添う儀式
納棺師の仕事は「湯灌(ゆかん)」と「納棺の儀」がメインです。
- 湯灌(ゆかん): 逆さ水などの作法に則り、故人の身体をシャワーや浴槽で洗い清めます。
- 着替え・メイク: 死後硬直を優しく解きながら、白装束やお気に入りの洋服に着せ替えます。顔色が良く見えるようファンデーションやチークを施し、男性であれば髭を剃ります。
- 納棺: 遺族と一緒に、あるいは遺族が見守る中で、故人を棺へと納めます。
【ポイント】
納棺師は遺族とコミュニケーションを取りながら作業を進めます。「最後にこの服を着せてあげたい」「いつもの口紅を塗ってあげたい」といった要望をその場で叶える、サービス業的なスキルが求められます。
エンバーマーの仕事内容:高度な技術による保存と修復
エンバーマーの仕事は、手術室のような専用施設(オペ室)で行われます。原則として遺族は立ち会いません。
- 洗浄・消毒: ご遺体全体を強力に消毒・洗浄します。
- 動脈防腐処置: 体の一部を数センチ切開し、動脈から防腐剤を注入、同時に静脈から血液を排出します。これにより全身の循環を促し、腐敗を止めます。
- 修復(レストレーション): 事故や病気で欠損した部分を、特殊なワックスや技術を使って生前の姿に近づけます。
- 化粧・着付け: 処置後は納棺師同様にメイクや着付けを行います。
【ポイント】
感染症予防の観点からも重要な役割を果たします。また、海外へ遺体を搬送する場合や、火葬まで数週間空く場合にはエンバーミングが必須となるケースが多いです。
3. 年収・給料のリアルを徹底比較
就職や転職を考える上で避けて通れないのが「お金」の話です。求人市場のデータや口コミを基に、リアルな年収事情を解説します。
納棺師の年収相場
平均年収:300万円〜450万円
- 初任給:月給18万〜23万円程度が一般的。
- 雇用形態:葬儀社の社員、納棺専門会社の社員、または業務委託(フリーランス)。
- 稼ぐためのポイント:
納棺師は「件数」が収入に直結するケースが多いです。特に業務委託の場合、1件あたり数千円〜1万円強の手当がつくことがあり、繁忙期に件数をこなせば月収40万円以上も可能です。ただし、身体的な負担は大きくなります。
エンバーマーの年収相場
平均年収:350万円〜600万円
- 初任給:月給20万〜25万円程度。専門職手当がつくことが多いです。
- キャリアアップ:
「遺体衛生保全士」の資格手当や、処置件数に応じたインセンティブが発生する企業もあります。センター長クラスや、高度な修復技術を持つベテランになると年収600万円〜800万円を目指すことも可能です。
給料差の要因は?
エンバーマーの方がやや年収が高い傾向にあるのは、「資格取得のハードル」と「専門技術の希少性」によるものです。また、エンバーミング料金自体が15万〜25万円前後と高額なサービスであるため、利益率が確保しやすいという業界構造も影響しています。
4. なり方と資格:未経験からなれるのはどっち?
納棺師になるには
必須資格はありません。未経験から挑戦しやすい職種です。
- ルート:葬儀社や納棺専門会社に求人応募し、就職後にOJT(現場研修)で技術を学びます。
- 学校:必須ではありませんが、葬祭系の専門学校や「おくりびとアカデミー」のような民間スクールに通うことで、就職が有利になることがあります。
- 向いている人:接客が好き、所作が美しい、体力に自信がある人。
エンバーマーになるには
専門的な資格取得が事実上必須です。
- 資格:日本で働く場合、IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)が認定する「遺体衛生保全士」の資格が必要です。
- ルート:IFSA認定の養成校(専門学校など)で2年間学び、認定試験に合格する必要があります。その後、IFSA加盟のエンバーミング施設を持つ企業に就職するのが一般的です。
- 向いている人:医学・解剖学に興味がある、手先が器用、黙々と作業に集中できる人。
5. 納棺師とエンバーマー、それぞれの「きつさ」と「やりがい」
どちらもご遺体を扱う仕事ならではの厳しさがありますが、それ以上のやりがいがあります。
納棺師の「きつさ」
- 腰痛リスク:ご遺体は想像以上に重く、脱力しているため、抱え上げる作業で腰を痛める人が多いです。
- 感情のコントロール:幼い子供の死や、悲惨な別れの現場でも、プロとして涙を堪え、冷静に振る舞う精神力が求められます。
納棺師の「やりがい」
遺族から直接「魔法みたいに綺麗になった」「おかげで良いお別れができた」と感謝の言葉をもらえることが最大の喜びです。自分の仕事に対する反応がダイレクトに返ってきます。
エンバーマーの「きつさ」
- 感染症リスク:血液や体液を直接扱うため、肝炎や結核などの感染症リスクと常に隣り合わせです。徹底した防護が必要です。
- 化学薬品の扱い:ホルムアルデヒドなどの強力な薬品を使用するため、換気設備が整っているとはいえ、アレルギー体質の人には厳しい環境の場合があります。
エンバーマーの「やりがい」
損傷が激しく「このままでは家族に会わせられない」と言われたご遺体を生前の姿に戻せた時、プロフェッショナルとしての誇りを感じられます。「最期に顔を見て触れることができた」という遺族の安堵を作ることができるのは、エンバーマーだけの特権です。
6. まとめ:あなたに向いているのはどっち?
最後に、それぞれの職業に向いている人の特徴を整理します。
納棺師がおすすめな人
- 人と接することが好きで、コミュニケーション能力に自信がある
- 日本の伝統的な儀式や作法に興味がある
- すぐに現場に出て働きながら技術を身につけたい
- 「ありがとう」と直接言われる仕事がしたい
エンバーマーがおすすめな人
- 医療や科学、解剖学的な分野に関心がある
- 専門学校でじっくり学び、確かな資格を手にしたい
- 一つの作業に集中して取り組む職人気質がある
- 裏方として、高度な技術で遺族を支えたい
納棺師とエンバーマー、アプローチは違いますが、どちらも「故人の尊厳を守り、遺族の明日への一歩を支える」というゴールは同じです。この記事が、あなたの進路選びの参考になれば幸いです。



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