格安葬儀のからくりを業界20年のプロが暴露|なぜ安くできる?品質と追加料金の真実
こんにちは。葬儀業界に身を置いて20年、これまでに数千件のお見送りをお手伝いしてきました、葬祭ディレクターです。
私自身も一人の子供を育てる親として、「大切なお金は生きている人のために使いたい」と考えるご遺族の気持ち、痛いほどよくわかります。インターネットで「葬儀 8万円〜」といった広告を見ると、「本当にこの金額でできるの?」「最後のお別れなのに、粗末に扱われない?」と不安になりますよね。
今日は、業界の中にいる私だからこそ話せる「格安葬儀のからくり(仕組み)」について、良い面も悪い面も包み隠さずお話しします。「安かろう悪かろう」と決めつける前に、その理由を知って、後悔のない選択をしていただきたいのです。
1. なぜそこまで安いのか?格安葬儀の「3つのからくり」
通常、葬儀には100万円、200万円とかかるイメージがある中で、なぜ10万円台やそれ以下でサービスを提供できるのでしょうか。そこには明確な企業努力と、構造的な理由があります。
① インターネット仲介業者の台頭
皆さんがネットで見かける格安葬儀の多くは、実は「葬儀社」ではなく「IT仲介業者」が運営しています。
- 仕組み:仲介業者が集客し、提携している全国の地元の葬儀社に仕事を振る(紹介する)。
- 安さの理由:規格を統一し、徹底的にパッケージ化することでコストを削減。「薄利多売」のモデルです。
実際に施行するのは、皆さんの街にある葬儀社さんです。彼らは仲介業者から紹介を受けることで、自社の広告費をかけずに仕事を得られるため、安い単価でも引き受ける仕組みになっています。
② 固定費を持たない「無店舗型」や「空き時間活用」
格安プランを提供する葬儀社の中には、自社で大きな斎場を持たないケースも増えています。
- 斎場の維持費ゼロ:公営斎場(火葬場併設の式場)を利用することを前提とし、自社のホール維持費をカットしています。
- 稼働率の調整:地元の葬儀社が、自社のホールが空いている日や、スタッフの手が空いている時に限り、格安プランを引き受けるケースもあります。
③ サービス内容の徹底的なスリム化
ここが一番重要です。格安プランは、従来の葬儀に含まれていた「当たり前」を削ぎ落としています。
- 祭壇を飾らない(直葬・火葬式)。
- 通夜を行わない(一日葬)。
- 返礼品や料理を含まない。
- スタッフの人数を最小限(1〜2名)にする。
ここだけの話:
実は、大手互助会などの立派な葬儀社でも、裏ではネット仲介の格安プランを下請けとして引き受けていることがよくあります。つまり、「安いからスタッフの質が低い」とは一概には言えないのです。同じプロが対応するけれど、提供する「品目」が少ないから安い、というのが真実です。
2. 「8万円で済むと思ったのに…」追加料金発生の落とし穴
「定額プランだから安心」と思って申し込んだのに、請求書を見て驚愕する…。これは残念ながらよくあるトラブルです。なぜ表示価格だけで済まないのか、その「からくり」を解説します。
変動費(実費)が含まれていない
多くの格安プランは、葬儀社に入ってくる売上部分しか表記していません。しかし、葬儀には必ず外部に支払う「実費」がかかります。
| 項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 火葬料金 | 火葬場に支払う費用 | 地域によって無料〜数万円と差が大きい。プラン外のことが多い。 |
| 安置料金 | 遺体を預かる施設の費用 | プランには「2日分」しか含まれておらず、火葬場が混んでいて延泊すると追加料金が発生(1日1〜2万円程度)。 |
| ドライアイス | 遺体の保全 | これも日数分追加されます。夏場や火葬待ちが長いと高額になります。 |
搬送距離のオーバー
多くのプランには「お迎えの車(寝台車)は10kmまで」といった制限があります。病院から安置場所、安置場所から火葬場までの距離が長ければ、1kmごとに数千円の追加メーターがかかります。
「より良いもの」へのアップグレード営業
これは葬儀社の営業担当者の腕の見せ所でもあるのですが…(苦笑)。打ち合わせの席で、このような提案をされることがあります。
「プランに含まれるお棺はこちら(ベニヤ板のような簡素なもの)ですが、最後のお別れですし、お顔周りに窓がついたこちらの布張りのお棺(+3万円)にされませんか?」
ご遺族心理として、実物を見てしまうと「さすがに一番安いのは可哀想」となり、お棺、骨壺、花祭壇などをランクアップしてしまい、結果的に費用が膨らむのです。
注意!:
悪質な業者の場合、プラン内の物品をわざと極端に粗悪なものに見せたり、「これではご近所様に笑われますよ」と不安を煽ったりして、高額なオプションを追加させる手口もあります。強い意志が必要です。
3. 安さは「品質」にどう影響するのか?
皆様が一番心配される「品質」への影響。正直にお伝えします。
物品の品質は「価格相応」
お棺、骨壺、お布団などは、当然ながら原価の安いものが使われます。しかし、今の安いお棺はプリント技術も発達しており、パッと見で「安っぽい!」と驚くようなものは少なくなっています。
ただし、お花(祭壇)に関してはボリュームの差が出やすいです。カタログの写真よりもこじんまりとしていて寂しかった、という感想はよく耳にします。
スタッフの対応品質は「運」も要素に
先ほど「地元の葬儀社が施行する」とお話ししましたが、どの葬儀社が当たるかは、その時の空き状況次第という「ガチャ」のような側面があります。
- 当たり:地域で評判の良い老舗葬儀社が、空き時間に対応してくれる場合。ベテランスタッフが高品質な対応をしてくれます。
- ハズレ:格安葬儀専門で回している、経験の浅いスタッフばかりの業者が来る場合。マニュアル通りの事務的な対応をされることも。
時間の制約が厳しい
コストを削るため、スタッフの拘束時間を短く設定しています。「お別れの時間は10分だけでお願いします」「出棺の時間は厳守です」と急かされることがあります。ゆっくりと故人様との思い出を語り合う余裕がないのが、格安葬儀の最大のデメリットかもしれません。
4. 後悔しないための「プロ直伝」防衛策
格安葬儀自体は、時代のニーズに合った素晴らしい選択肢です。大切なのは、リスクを理解して使いこなすことです。
① 生前相談(事前見積もり)を必ずとる
これが最も確実です。ネットの価格だけを見て安心せず、電話やメールで具体的な見積もりを取りましょう。
「火葬場が混んでいて3日待つ場合、総額はいくらになりますか?」と聞いてみてください。ここで明確に答えられない業者は避けるべきです。
② 「何が含まれていないか」を確認する
「何が含まれているか」よりも「何が含まれていないか」を確認することが重要です。特に「お坊さんへのお布施」「飲食費」「返礼品」は、葬儀プランには絶対に含まれていません。
③ 自分の優先順位を決めておく
「とにかく費用を抑えたい」のか、「最低限のお花だけは飾ってあげたい」のか。軸がブレていると、打ち合わせの現場で流されてしまいます。
「お金はかけられないけれど、心を込めて手紙を読みたい」「思い出の曲を流したい」といった工夫は、お金をかけずとも可能です。良い葬儀担当者なら、そういった相談には親身に乗ってくれるはずです。
5. まとめ:金額よりも「納得感」が大切です
葬儀の満足度は、かけた金額と比例するわけではありません。
数百万かけても「言われるがままにお金を使ってしまった」と後悔する方もいれば、15万円の直葬でも「家族だけで水入らず、気を使わずにゆっくりお別れができた」と満足される方もいます。
格安葬儀のからくりは、「仲介システムによる効率化」と「徹底的な物品・サービスの削減」です。そこにあるのは詐欺的な手口ではなく、ドライなビジネスモデルです。
その仕組みを理解した上で、「私たちは形式にはこだわらない。その分、浮いたお金で後日、故人が好きだった旅行に行こう」といった前向きな選択をするのであれば、格安葬儀は賢い選択肢となります。
どうか、表面的な金額の安さだけに飛びつかず、見積もりの向こう側にある「どんなお別れになるか」をイメージして選んでくださいね。
【この記事を読んだ方への次の一歩】
もし今、具体的な葬儀社選びで迷っているなら、まずは2〜3社の「資料請求」をしてみてください。届いたパンフレットの紙質や、電話対応の声のトーンだけで、その会社の「姿勢」が見えてきます。大切な方のための準備、焦らずに進めていきましょう。



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