「病院で家族が息を引き取ったとき、まず何をすればいいの?」
「自分たちの車で連れて帰ることはできないのかしら?」
こんにちは。葬儀業界で長くお仕事をさせていただいている私のもとには、日々こうした切実なご相談が寄せられます。40代になり、私自身も一人の子の母として、そして親を見送る世代として、皆様が抱える不安は決して他人事ではありません。
私たちがご案内しているのは、単なる「遺体の移動」というサービスではありません。大切な方を、敬意を持って、そしてご遺族が納得できる形で次の場所へとお送りする「解決策」そのものです。
この記事では、病院からご遺体を搬送する際の手順や、多くの方が疑問に思う「自家用車での搬送」の是非、そして後悔しないための選択基準について、プロの視点から詳しくお伝えします。
1. 病院で亡くなった直後、何が起きるのか?
病院で医師から臨終の告げを受けた後、ご遺族には悲しむ間もなく、いくつかの現実的な判断が求められます。
エンゼルケア(死後処置)の時間
病院では、看護師さんによって「エンゼルケア」が行われます。お体を清め、傷跡を処置し、安らかな表情に整える大切な時間です。この処置には通常1時間〜1時間半ほどかかります。
「早急な搬送」を求められる現実
以前と異なり、現在の病院にはご遺体を長く安置しておくスペースがありません。ケアが終わると、看護師さんや連携している葬儀社から「搬送先(安置場所)は決まっていますか?」と尋ねられることになります。
このとき、焦って言われるがままに決めてしまう必要はありません。まずは深呼吸をして、これからお伝えする手順を確認してください。
2. 遺体搬送を自家用車で行うことは「NG」なのか?
結論から申し上げますと、法律上、自家用車でご遺体を搬送すること自体は「禁止」されていません。
貨物自動車運送事業法では、営業ナンバー(緑ナンバー)を持たない車が「報酬を得て」遺体を運ぶことは禁じられていますが、ご遺族が無償で運ぶ分には法的な罰則はありません。
しかし、プロの立場から申し上げると、自家用車での搬送はおすすめしておりません。そこには3つの大きな理由があります。
理由①:物理的な難しさと損傷のリスク
ご遺体は「生きた人間」とは状態が異なります。死後硬直が始まると体が曲がらなくなり、一般的なセダンやSUVでは、寝かせた状態で乗せることが非常に困難です。無理に乗せようとすると、お体を傷つけてしまう恐れがあります。
理由②:衛生面とドライアイスの処置
亡くなった直後から、お体の変化(腐敗)は始まります。特に夏場などは、適切な温度管理(ドライアイスの処置)なしでは、移動中に体液が漏れ出したり、臭いが発生したりすることがあります。これらは一度車内に付着すると、完全に取り除くのが非常に困難です。
理由③:精神的な負担
何よりお伝えしたいのが、運転するご遺族の心理状態です。大切な方を亡くされた直後の動揺した状態で、細心の注意を払いながら運転するのは極めて危険です。もし事故を起こしてしまったら……その心の傷は計り知れません。
3. プロが教える「正しい搬送」の手順
混乱の中でスムーズに事を進めるために、以下のステップを覚えておいてください。
STEP1:死亡診断書の受け取り
搬送には必ず「死亡診断書」が必要です。医師から発行されたら、内容に間違いがないか(特に氏名や生年月日)を確認してください。この書類は、後の死亡届提出にも必要になるため、必ずコピーを複数枚取っておくか、スマホで写真を撮っておきましょう。
STEP2:搬送先(安置場所)を決める
「自宅に連れて帰りたい」のか、「直接、葬儀社の安置施設へ預けたい」のかを家族で話し合います。マンションの場合はエレベーターに棺が入るか、近隣の目が気にならないかといった点も考慮が必要です。
STEP3:搬送業者(葬儀社)への連絡
搬送のみを依頼することも可能ですが、多くの場合は葬儀を依頼する葬儀社に搬送からお願いすることになります。 病院が紹介してくれる葬儀社は、あくまで「搬送をスムーズにするための協力会社」であり、必ずしもその葬儀社で葬儀を行う必要はありません。
4. 搬送費用の相場と内訳
搬送にかかる費用は、基本料金として「15,000円〜30,000円程度(10km圏内)」が一般的です。ただし、以下の要素で加算されることがあります。
- 走行距離:10kmごとに数千円の加算
- 深夜・早朝料金:2割〜3割程度の増額
- 資材代:防水シーツや吸水シーツなどの消耗品
- 待機料金:病院での待ち時間が長くなった場合
私たちがお見積りを提示する際は、これらの内訳を明確にし、クライアント様が納得感を持てるよう努めています。
5. 私たちが提供するのは「安心という時間」
私たちが寝台車でお迎えに上がる際、大切にしているのは「スピード」ではなく「丁寧さ」です。
ストレッチャーへお乗せする際の手つき、車内での温度調整、そして運転の静かさ。これらすべては、故人様への敬意であり、残されたご遺族の心を癒やすプロセスの一部だと考えています。
「葬儀社を呼ぶと、そのまま契約を迫られそうで怖い」というお声も耳にします。しかし、誠実なプロであれば、まずは「安置して、落ち着く時間を確保すること」を最優先に考えます。
私たちは、あなたが大切な方と静かにお別れをするための「土台」を作るパートナーなのです。
まとめ:焦らず、プロの力を借りてください
病院から「早く搬送してください」と言われると、どうしても心が焦ってしまいます。しかし、そこで慌てて自家用車を使ったり、不慣れな対応をしたりすることは、後々の後悔に繋がりかねません。
まずは私たちのような専門家に相談してください。私たちは、あなたの大切なご家族を、安全に、そして最高に敬意を込めた形でお運びすることを約束します。
もし今、何から手をつけていいか分からず立ち止まっているのなら、まずは電話一本で構いません。私たちがあなたの心に寄り添い、最善の「解決策」を一緒に見つけ出します。
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もしもの時に備え、まずは自宅の近く、あるいは希望のエリアで「24時間搬送対応」をしてくれる葬儀社を2〜3社ピックアップしておきましょう。電話帳に登録しておくだけで、いざという時の心の余裕が全く違います。


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