先日、80代のお父様を亡くされた50代の喪主さんから、火葬が終わって一週間後に電話が入りました。「葬祭費って、うちも申請できるんですか?知り合いに聞いて初めて知りました」。故人は国民健康保険の加入者で、後期高齢者医療制度の対象。申請すれば5万円が支給されるケースでした。ただ、申請期限は2年。知らずに過ぎてしまう遺族が、実はかなり多いんです。
葬儀費用は、家族葬でも100万円前後、一般葬なら150万円を超えることも珍しくありません。そこに火葬料や飲食代、香典返しの費用が重なる。少しでも家計の負担を減らすために、公的な給付金は必ず受け取ってほしい。この記事では、葬祭費と埋葬料の違い、支給額、必要書類、申請の流れを、現場で何百件と手続きに立ち会ってきた葬祭ディレクターの視点でまとめます。
「葬祭費」と「埋葬料」は名前が似ていますが、加入していた健康保険によって呼び名も金額も申請先も違います。ここを混同すると、間違った窓口に行って二度手間になる。まずは基本の違いから整理していきます。
葬祭費と埋葬料の違いを一目で理解する
まず押さえてほしいのが、故人がどの健康保険に入っていたかで、受け取れる給付金の種類が変わるという点。大きく分けると2種類あります。国民健康保険・後期高齢者医療制度から支給されるのが「葬祭費」、健康保険(協会けんぽ・組合健保・共済組合など)から支給されるのが「埋葬料」または「埋葬費」です。
金額もそれぞれ違います。国保・後期高齢者は自治体によって1万円〜7万円と幅があり、東京23区は7万円、多くの市町村は3万円〜5万円が相場。一方、健康保険の埋葬料は全国一律で5万円。申請先も別で、国保系は市区町村役場、健康保険系は勤務先の健康保険組合または協会けんぽの支部になります。
ここで注意したいのが、故人が亡くなった時点の健康保険が判断基準になるということ。退職して間もない方の場合、退職後3ヶ月以内に亡くなったなら以前の健康保険から埋葬料が出るケースもあります。加入状況が曖昧なら、まず故人の保険証を確認してください。
| 項目 | 葬祭費(国保・後期高齢者) | 埋葬料(健康保険) |
|---|---|---|
| 対象者 | 国民健康保険・後期高齢者医療の加入者 | 協会けんぽ・組合健保・共済組合の加入者 |
| 支給額 | 1万〜7万円(自治体による) | 一律5万円 |
| 申請先 | 市区町村役場の国保・年金課 | 健康保険組合または協会けんぽ支部 |
| 申請期限 | 葬儀の翌日から2年 | 亡くなった日の翌日から2年 |
| 申請できる人 | 葬儀を行った喪主・施主 | 生計維持関係にあった遺族(第一順位は配偶者) |
| 振込までの日数 | 2週間〜1ヶ月 | 2週間〜1ヶ月半 |
実務でよく相談を受けるのが、「故人は年金暮らしだったけど、扶養に入っていた場合はどうなるの?」というケース。夫の健康保険に扶養家族として入っていた妻が亡くなった場合、支給されるのは「家族埋葬料」で、金額は5万円。申請するのは被保険者である夫本人です。ここは間違えやすいポイント。
国民健康保険の葬祭費|自治体別の支給額と申請方法
国民健康保険の葬祭費は、自治体ごとに条例で定められているため、金額に大きな差があります。東京23区は一律7万円で全国トップクラス。横浜市・川崎市・名古屋市などは5万円、大阪市は3万円、地方の小さな市町村では1万円〜2万円というところもあります。故人が住んでいた市区町村の役場ホームページで「葬祭費」と検索すれば、金額と申請書のダウンロードリンクがすぐに出てきます。
主要都市の支給額一覧
| 自治体 | 支給額 | 備考 |
|---|---|---|
| 東京23区 | 7万円 | 全国最高水準 |
| 横浜市・川崎市 | 5万円 | 神奈川県内は5万円が多い |
| 名古屋市 | 5万円 | 愛知県内も5万円が中心 |
| 大阪市 | 3万円 | 大阪府内は3万円が主流 |
| 京都市 | 5万円 | — |
| 福岡市 | 3万円 | — |
| 札幌市 | 3万円 | — |
| 仙台市 | 5万円 | — |
申請に必要な書類
葬祭費を申請するときに必要な書類は、自治体によって多少違いますが、共通して求められるのは次のとおり。役場に行く前に一式そろえておくと、窓口で二度手間になりません。
- 葬祭費支給申請書(役場窓口またはホームページからダウンロード)
- 故人の国民健康保険証(後期高齢者医療被保険者証)
- 喪主の身分証明書(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 喪主名義の預金通帳またはキャッシュカード(振込先確認のため)
- 葬儀を行ったことがわかる書類(葬儀社の領収書・会葬礼状・火葬許可証の写しなど)
- 喪主の印鑑(認印で可、シャチハタ不可の自治体あり)
特に注意してほしいのが、葬儀を行ったことがわかる書類。会葬礼状に喪主名が明記されているものが一番手っ取り早い証明になります。直葬・火葬式で会葬礼状を作らなかった場合は、葬儀社発行の領収書に喪主名と「葬儀費用」の記載があれば代用可能。この点は、担当した葬儀社に「葬祭費申請用の領収書がほしい」と伝えれば、対応してくれます。喪主名義で発行してもらうのがポイント。
葬儀費用の全体像を把握しておきたい方は、[家族葬の費用相場と100万円以下に抑える内訳](https://sougi-shigoto.info/family-funeral-cost-under-1million/)も参考にしてください。事前に総額を掴んでおくと、給付金でどれくらい相殺できるかが見えてきます。
申請の流れと振込までの日数
申請は、故人が住民登録していた市区町村役場の「国保年金課」または「保険年金課」の窓口で行います。書類がそろっていれば、その場で受付完了。役所によっては郵送申請にも対応しています。窓口混雑を避けたいなら、事前に電話で必要書類を確認して郵送するのがおすすめ。
振込までの日数は、早い自治体で2週間、遅い自治体でも1ヶ月ほど。指定した喪主名義の口座に、支給額がまとめて振り込まれます。振込通知書が別途郵送で届く自治体もあれば、通帳記帳して初めて振込を確認するパターンも。心配なら、申請時に「いつ頃振り込まれますか」と聞いておくと安心です。
健康保険の埋葬料|協会けんぽ・組合健保での申請
会社員だった方が亡くなった場合、加入していた健康保険から「埋葬料」が支給されます。金額は全国一律5万円。申請先は、故人が加入していた健康保険組合、または全国健康保険協会(協会けんぽ)の各都道府県支部です。故人が公務員だった場合は、共済組合から同額の給付があります。
埋葬料の申請は、原則として故人と生計維持関係にあった遺族が行います。第一順位は配偶者、次いで子・親・兄弟姉妹の順。生計を共にしていた事実が確認できれば、住民票が別でも申請可能です。
埋葬料と埋葬費の違い
紛らわしいのが「埋葬料」と「埋葬費」の区別。同じ健康保険から出るのですが、対象者が違います。
- 埋葬料:故人と生計維持関係にあった遺族が受け取る(一律5万円)
- 埋葬費:生計維持関係にある遺族がおらず、家族以外が葬儀を行った場合(実際に葬儀にかかった費用のうち5万円を上限に支給)
- 家族埋葬料:被保険者の被扶養者(家族)が亡くなった場合、被保険者本人が受け取る(一律5万円)
おひとりさまで身寄りがない方が亡くなり、友人や大家さんが葬儀を執り行ったケースでは「埋葬費」として、実費(上限5万円)が支給されます。この場合、葬儀費用の領収書が必須。単身高齢者の増加とともに、この形式での申請も現場で増えています。
埋葬料申請に必要な書類
- 健康保険埋葬料(費)支給申請書(協会けんぽまたは加入健保のHPからダウンロード)
- 事業主の証明(在職中に亡くなった場合、勤務先が記入)または死亡診断書のコピー
- 故人の健康保険証(会社経由で返却するのが原則)
- 申請者の身分証明書
- 申請者名義の預金口座情報
- 生計維持関係を証明する書類(住民票など、必要な場合)
在職中に亡くなった場合、申請書の「事業主証明欄」に会社の記入が必要になります。総務・人事担当者に「埋葬料の申請書を出したいので、事業主証明をお願いします」と伝えれば対応してもらえます。退職後や、扶養家族が亡くなった場合はこの証明は不要で、代わりに死亡診断書のコピーを添付します。
会社側の手続きと並行して、[会社への忌引連絡メールの伝え方](https://sougi-shigoto.info/bereavement-leave-email-guide/)も確認しておくと、上司や総務とのやり取りがスムーズになります。埋葬料の話は、忌引連絡と同じタイミングで切り出すのが自然です。
申請期限は2年|時効を過ぎると受け取れない
葬祭費も埋葬料も、申請期限は「葬儀の翌日から2年」または「亡くなった日の翌日から2年」。この時効を過ぎると、たとえ受給資格があっても支給されません。実際、私が担当した中でも「知らなくて、気づいたら3年経っていた」というケースが何件かあります。金額は決して大きくないですが、5万円〜7万円を諦めるのはもったいない。
特に注意してほしいのは、四十九日や一周忌が終わって落ち着いた頃に、ふと「そういえば申請したっけ?」と思い出すパターン。葬儀直後は死亡届、年金停止、口座凍結解除など手続きが山積みで、給付金申請まで気が回らないことが多い。私は打ち合わせの段階で、必ず「役所で葬祭費の申請をお忘れなく」と一言添えるようにしています。
他にも死亡後には期限のある手続きが多くあります。全体像は[親が亡くなった後の手続きチェックリスト](https://sougi-shigoto.info/parent-death-procedures-checklist-deadline/)にまとめているので、優先順位を確認しながら進めてください。
申請忘れを防ぐタイミング
おすすめは、死亡届の提出と一緒に葬祭費の申請をしてしまうこと。死亡届は市区町村役場に7日以内に提出しますが、その際に「葬祭費の申請もしたいのですが」と窓口で伝えれば、同じフロアの国保年金課に案内してくれます。ただし葬祭費申請には葬儀の領収書が必要なので、葬儀完了後に改めて役場を訪れることになります。
死亡届の書き方や続柄の記入例については、[死亡届の書き方と提出方法完全ガイド](https://sougi-shigoto.info/shibo-todoke-kakikata-teishutsu-zokugara-7days/)で詳しく解説しているので、あわせて確認しておくと役所での手続きが一度で済みます。
葬祭費・埋葬料が受け取れないケース
すべての葬儀で葬祭費や埋葬料が支給されるわけではありません。以下のケースでは、申請しても給付が受けられません。事前に把握しておかないと、期待していた分の家計がずれてしまいます。
労災による死亡の場合
業務中・通勤中の事故で亡くなった場合は、労災保険から「葬祭料(葬祭給付)」が支給されます。この場合、健康保険からの埋葬料は重複して支給されません。労災の葬祭料は「31万5000円+給付基礎日額の30日分」または「給付基礎日額の60日分」のいずれか高い方が支給されるので、金額としては健康保険の埋葬料より大きくなるケースがほとんど。労働基準監督署が申請窓口です。
葬儀を行わなかった場合
葬祭費は「葬儀を行った人」に対して支給されるもの。火葬のみの直葬でも葬儀とみなされ支給対象になりますが、遺体を献体に提供して家族が一切の葬送儀礼を行わなかった場合など、葬儀の実施が確認できないと支給されないことがあります。自治体によって判断が分かれるので、心配な場合は事前に役場に確認してください。
直葬でも会葬礼状や領収書があれば申請できます。費用感が気になる方は[直葬(火葬式)の費用内訳](https://sougi-shigoto.info/chokuso-cost-uchiwake-10man-tsuika-ryokin/)も参考にしてください。
生活保護受給者の場合
生活保護を受けていた方が亡くなった場合、遺族も生活保護を受給しているなど葬儀費用を負担できない状況では「葬祭扶助」という別の制度が使えます。金額は大人約20万円、子ども約16万円が上限。ただし葬祭扶助と葬祭費は原則併給されません。どちらか有利な方を選ぶことになります。
支給された給付金の使い道と税金の扱い
葬祭費・埋葬料として受け取ったお金は、非課税所得。所得税も相続税もかかりません。喪主の口座に振り込まれた5万円〜7万円は、そのまま葬儀費用の一部として使えます。用途に制限もないので、葬儀の後払い分に充てるのが一般的。ただし、香典と混同して確定申告で申告してしまう方がまれにいるので注意してください。
相続税の計算では、葬儀費用は相続財産から控除できる項目のひとつ。葬祭費・埋葬料を受け取ったからといって、控除できる葬儀費用の額が減るわけではありません。この点は税理士に確認するのが確実です。
給付金申請と合わせて確認したい制度
葬祭費・埋葬料以外にも、遺族が受け取れる公的給付はいくつかあります。金額の大きさで言えば、遺族年金の方がはるかにインパクトが大きい。故人が厚生年金に加入していた場合、配偶者や子どもに遺族厚生年金が支給されます。国民年金加入者なら遺族基礎年金または寡婦年金・死亡一時金の対象となることも。
| 制度名 | 対象 | 金額目安 | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 葬祭費 | 国保・後期高齢者加入者 | 1万〜7万円 | 市区町村役場 |
| 埋葬料 | 健康保険加入者 | 5万円 | 健康保険組合・協会けんぽ |
| 労災葬祭料 | 業務中・通勤中の死亡 | 約35万円〜 | 労働基準監督署 |
| 遺族基礎年金 | 18歳未満の子がいる配偶者 | 年約81万円+子加算 | 年金事務所 |
| 遺族厚生年金 | 厚生年金加入者の遺族 | 報酬比例(数万円〜) | 年金事務所 |
| 死亡一時金 | 国民年金3年以上納付 | 12万〜32万円 | 市区町村役場 |
| 高額療養費 | 医療費が自己負担限度超 | 差額分 | 健保・国保 |
特に亡くなる前の入院医療費が高額だった場合、[緩和ケア病棟の費用と高額療養費制度](https://sougi-shigoto.info/palliative-care-ward-cost-koukaku-ryoyohi-simulation/)で解説しているように、高額療養費の還付を受けられることがあります。医療費と葬儀費用は別々に考えがちですが、両方の申請を漏らさずに進めることが、遺族の経済的負担を軽くする鍵になります。
よくある質問
Q1. 葬祭費と埋葬料は両方もらえますか?
原則としてどちらか一方のみです。故人が加入していた健康保険によって、受け取れる給付が決まります。国民健康保険・後期高齢者医療の加入者なら葬祭費、健康保険・共済組合の加入者なら埋葬料。両方の保険に同時加入することは制度上できないので、二重取りにはなりません。ただし、労災による死亡の場合は労災葬祭料が優先されます。
Q2. 直葬・火葬式でも葬祭費は申請できますか?
できます。葬祭費は葬儀の形式を問わず、葬儀を行った事実があれば支給対象になります。直葬でも火葬料の領収書や、葬儀社発行の請求書・領収書に喪主名が記載されていれば申請可能。ただし、遺体を献体に提供して家族が一切の葬送儀礼を行わなかった場合は、自治体によって支給されないことがあります。事前に役場に確認してください。
Q3. 喪主ではないのですが、葬儀費用を負担した場合は申請できますか?
葬祭費の申請者は「葬儀を実際に行った人」=喪主または施主が基本です。喪主と葬儀費用の支払者が別々の場合は、自治体によって判断が分かれます。多くの自治体では喪主優先ですが、施主(費用負担者)が申請可能なケースも。役場で「喪主は兄で、費用は私(弟)が全額出したのですが」と正直に伝えて、指示に従ってください。喪主から委任状をもらう方法もあります。
Q4. 申請書はどこで手に入りますか?郵送で申請できますか?
申請書は、市区町村役場の窓口で受け取れるほか、ほとんどの自治体でホームページからPDFをダウンロードできます。「〇〇市 葬祭費 申請書」で検索すると、たいてい最初にヒットします。健康保険の埋葬料申請書も、協会けんぽや各健保組合のサイトからダウンロード可能。郵送申請にも対応している自治体・健保が多いので、窓口に行けない方は事前に電話で必要書類を確認してから郵送しましょう。
Q5. 故人が退職直後に亡くなった場合、どちらに申請すればいいですか?
退職後、健康保険の任意継続に加入していた、または退職後3ヶ月以内に亡くなった場合は、以前加入していた健康保険から埋葬料が支給される可能性があります。それ以降は国民健康保険に切り替わっているので、国保の葬祭費が対象。判断が難しい場合は、以前の勤務先の健保組合と、住所地の市区町村役場の両方に問い合わせて、どちらの給付対象になるかを確認してください。
Q6. 申請してから振込までどれくらいかかりますか?
自治体・健保によって差がありますが、目安は2週間〜1ヶ月半。書類に不備がなければ、比較的スムーズに処理されます。書類の不備で差し戻されると、そこからさらに2〜3週間追加になることも。申請時に窓口担当者に「振込予定はいつ頃ですか」と確認しておくと、家計の見通しが立てやすくなります。葬儀費用の後払い分に充てる予定なら、支払い期限との兼ね合いも意識しておきましょう。
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